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植物-昆虫間相互作用により形成される「虫こぶ」 誘導因子の同定

研究課題

研究課題/領域番号 21K15115
研究種目

若手研究

配分区分基金
審査区分 小区分44030:植物分子および生理科学関連
研究機関東北大学

研究代表者

別所 奏子 (別所・上原奏子)  東北大学, 生命科学研究科, 助教 (90876624)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2025-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
キーワード虫こぶ / 寄生植物 / 生物間相互作用 / 形態可塑性
研究開始時の研究の概要

「虫こぶ」とは、昆虫による摂食や産卵の影響で宿主植物の細胞や組織が過増殖や過成長し て生じる、病理学的に異常な組織である。寄生昆虫が異なれば同一宿主植物上でも異なった形態の虫こぶが形成されることから、昆虫種により異なる虫こぶ誘導因子が存在し、また宿主植物側の応答も誘導因子によって異なると考えられる。通常の生育条件ではみられない 異形な植物組織「虫こぶ」が誘導される分子機構を明らかにすることは、植物が潜在的にもつ形態形成の分子機構の理解を促し、将来的には人工的な植物形態の操作につながる。本研究では虫こぶ誘導因子を同定し、 宿主植物の受容体を同定することを目的とする。

研究実績の概要

虫こぶ形成昆虫とその宿主植物の飼育は困難であったが、富山大学の土田博士らによりマダラケシツブゾウムシとアメリカネナシカズラの飼育系が確立された。本研究ではこのマダラケシツブゾウムシーアメリカネナシカズラの飼育系を用いて虫こぶ形成の分子機構を明らかにすることを目指す。昨年度までに、発達段階ごとのアメリカネナシカズラ側でのRNA-seq解析を行い、花成関連遺伝子群の発現上昇ならびにいくつかの特定の植物ホルモンに対するシグナル伝達系の発現上昇を捉えることができた。本年度はそれらのうちのいくつかの遺伝子の発現パターンを明らかにするためin situ hybridizationを行った。また、昨年度までにシロイヌナズナ過剰発現体を宿主としたアメリカネナシカズラ虫こぶの誘導に成功していたため、本年度はその個体を使ってアメリカネナシカズラ虫こぶにおけるシロイヌナズナ形質転換体由来の蛍光タンパク質融合候補遺伝子の検出を行った。形質転換体を宿主植物とし、それに寄生させたアメリカネナシカズラにおいて、形質転換したmRNAもしくはタンパク質のどちらが検出されるか、qRT-PCRおよびWestern blottingにより検証した。その結果、形質転換した遺伝子はmRNAでは移動しておらずタンパク質で移動していることが明らかとなった。また、シロイヌナズナ形質転換体に寄生させたアメリカネナシカズラにおける虫こぶ発達の様子を詳細に観察することで、形質転換した遺伝子と虫こぶ発達の関係について議論することを試みた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

虫こぶ発達に関わる遺伝子発現ネットワークの一部を明らかにしつつある。本年度はin situ hybridization法によりいくつかの花成に関わる候補遺伝子の虫こぶ内での発現パターンを明らかにすることができ、そのパターンが通常の植物発達とは異なることが明らかとなった。既存の遺伝子群が新規の発現パターンを獲得することによって、虫こぶという新たな器官の作出に貢献していると考えられる。また、形質転換したシロイヌナズナ由来の蛍光タンパク質融合候補遺伝子を検出することに成功し、宿主植物を介して目的遺伝子がcuscuta内に導入できていることを確認した。さらに候補遺伝子によって虫こぶ形成の頻度に差があることも明らかとなった。現在は、候補遺伝子の導入量と虫こぶ形成頻度との相関を詳細に調べている。
また、派生的な結果として野生イネ花成時に形成される芒の伸長を制御する遺伝子を突き止め、国際論文として発表した。

今後の研究の推進方策

次年度は宿主植物を介した候補遺伝子のRNAiに注力し、過剰発現体を用いた結果と合わせて、虫こぶ形成に対する候補遺伝子の作用機序を明らかにする。また計画最終年度であるため、これまでの結果を論文にまとめ、国際誌に発表する。

報告書

(3件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 2022 実施状況報告書
  • 2021 実施状況報告書
  • 研究成果

    (17件)

すべて 2024 2023 2022 2021

すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (14件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)

  • [雑誌論文] Regulator of Awn Elongation 3, an E3 ubiquitin ligase, is responsible for loss of awns during African rice domestication2023

    • 著者名/発表者名
      Bessho-Uehara Kanako、Masuda Kengo、Wang Diane R.、Angeles-Shim Rosalyn B.、Obara Keisuke、Nagai Keisuke、Murase Riri、Aoki Shin-ichiro、Furuta Tomoyuki、Miura Kotaro、Wu Jianzhong、Yamagata Yoshiyuki、Yasui Hideshi、Kantar Michael B.、Yoshimura Atsushi、Kamura Takumi、McCouch Susan R.、Ashikari Motoyuki
    • 雑誌名

      Proceedings of the National Academy of Sciences

      巻: 120 号: 4

    • DOI

      10.1073/pnas.2207105120

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] 地下茎による栄養繁殖を支えるメカニズム2023

    • 著者名/発表者名
      別所-上原 奏子
    • 雑誌名

      植物科学の最前線

      巻: 14 号: B ページ: 50-64

    • DOI

      10.24480/bsj-review.14b2.00243

    • ISSN
      2432-9819
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [雑誌論文] 虫こぶ - 明らかになりつつある分子機構2023

    • 著者名/発表者名
      別所-上原奏子、土`田努
    • 雑誌名

      昆虫と自然

      巻: 58 ページ: 36-38

    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [学会発表] Identification of plant-derived constraints for determining gall morphology driven by citizen science2024

    • 著者名/発表者名
      Kanako Bessho-Uehara
    • 学会等名
      令和5年度TI-FRIS/TI-FRISシンポジウム
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] Decision factors of morphological diversity in insect galls2023

    • 著者名/発表者名
      Kanako Bessho-Uehara
    • 学会等名
      International Conference on Arabidopsis Research
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 国際学会
  • [学会発表] Evolutionary relationship between gall inducing insect and host plant2023

    • 著者名/発表者名
      Kanako Bessho-Uehara
    • 学会等名
      OIST-Tohoku U joint symposium
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 国際学会
  • [学会発表] Evolutionary genomics and molecular biology to understand gall development2023

    • 著者名/発表者名
      Kanako Bessho-Uehara
    • 学会等名
      Japan Eco-Evo English Seminar
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] 虫こぶ形成の分子機構から考える植物の表現型可塑性2023

    • 著者名/発表者名
      別所-上原 奏子
    • 学会等名
      帝京大学特別講義
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] アメリカネナシカズラ虫こぶにおける経時的な発現変動解析および組織学的解析2023

    • 著者名/発表者名
      別所-上原奏子, Jyothi Udandarao, 土`田 努
    • 学会等名
      第25回日本進化学会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] 画像解析を用いた虫こぶ形態多様性を規定する植物側・昆虫側要因の探索2023

    • 著者名/発表者名
      高良 力樹, 田村光平, 別所-上原奏子
    • 学会等名
      第68回応用動物昆虫学会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] 昆虫による植物表現型操作、虫こぶの謎に迫る2023

    • 著者名/発表者名
      別所-上原 奏子
    • 学会等名
      第165回 名古屋市立大学 学部・研究科セミナー
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] 新規のモデル昆虫、マダラケシツブゾウムシを用いた虫瘤形成機構解明の試み2023

    • 著者名/発表者名
      土`田 努・杉本 凌真・鵜嶋 涼・ 村上 涼生・鈴木 義人・別所 -上原 奏子
    • 学会等名
      第67回日本応用動物昆虫学会大会
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [学会発表] 昆虫による植物操作:虫こぶの研究から紐解く植物の形態形成機構2023

    • 著者名/発表者名
      別所 -上原 奏子
    • 学会等名
      静岡ライフサイエンスシンポジウム
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
    • 招待講演
  • [学会発表] オジロアシナガゾウムシ由来の虫こぶ誘導因子の探索2023

    • 著者名/発表者名
      山下裕生、別所-上原奏子
    • 学会等名
      第64回植物生理学会
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [学会発表] ミヤコグサへの維管束細胞培養系 VISUAL の応用2023

    • 著者名/発表者名
      山下裕生、別所-上原奏子
    • 学会等名
      静岡ライフサイエンスシンポジウム
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [学会発表] ミヤコグサを用いた維管束細胞培養系 VISUALの確立2022

    • 著者名/発表者名
      山下裕生、別所-上原奏子
    • 学会等名
      第12回東北植物学会
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [学会発表] 新規モデル昆虫マダラケシツブゾウムシSmicronyx madaranusを用いた虫瘤 形成機構解析の試み2021

    • 著者名/発表者名
      杉本 凌真 , 村上 涼生 , 鵜嶋 涼 , 別所-上原 奏子 , 若杉 達也 , 鈴木義人 , 土`田 努
    • 学会等名
      日本動物学会中部支部大会
    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書

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公開日: 2021-04-28   更新日: 2024-12-25  

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