研究課題/領域番号 |
21K15124
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分44030:植物分子および生理科学関連
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
後藤 千恵子 神戸大学, 理学研究科, 学術研究員 (00792269)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2023年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 側根 / 側根形成 / 側根創始 / オーキシン / fwr / fsp1 / SUR2 / CYP83B1 / シロイヌナズナ |
研究開始時の研究の概要 |
維管束植物における側根の発生は、根の内鞘細胞の一部(側根創始細胞)がオーキシンを受容し分裂することから始まる。シロイヌナズナにおいてオーキシン受容を示すDR5:LUCIFERASEレポーター遺伝子による発光部位は主根上に点在し、その部位から側根が出現する。先行研究により、特定のオーキシンの生合成酵素遺伝子が側根創始細胞や根冠細胞で発現することが示唆されてきた。しかし、観察技術上の制約により、それらの酵素によって合成されたオーキシンが側根創始細胞に受容されるかの検証が不十分であった。本研究では新たに高分解能観察の系を確立し、側根創始細胞が受容するオーキシンの生合成と蓄積を制御する機構を解明する。
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研究実績の概要 |
側根の発生は、根の内鞘細胞のうち一部が「側根創始細胞」としてオーキシンを受容し非対称分裂することで開始され、その後細胞分裂が繰り返されて側根原基が形成される。本研究では、オーキシンが生合成される部位とオーキシンが将来の側根創始細胞に隔離・蓄積される仕組みを明らかにすることで、側根創始の初期段階について理解を深めることを目的とした。
オーキシンが側根創始細胞に隔離・蓄積されにくくなった変異体にfewer roots(fwr)がある。このfwr の表現型を抑圧する変異体のスクリーニングによりfewer roots suppressor 1 (fsp1)fwrが単離されており、fsp1の原因遺伝子はSUR2/CYP83B1である。SUR2/CYP83B1はインドールグルコシノレート生合成に関わる酵素であるが、その生合成経路は一部がオーキシン生合成経路と重なっており、SUR2/CYP83B1が欠損すると内生オーキシン量が増加する。
オーキシン応答レポーターDR5:LUCを導入すると、主根上にオーキシン応答を示す点状部位が観察される。その点状部位は、そのまま安定して形成され続けてそこから側根が生じる場合と、消失する(側根は形成されない)場合に分かれる。fsp1では、オーキシン応答を示す点状部位が生じる頻度は野生型と同程度であり、かつ、その点状部位の消失頻度は野生型より低いことがわかった。また、根においてはSUR2は静止中心と内鞘細胞で発現していることが示唆された。これらのことから、fsp1においては内鞘細胞で本来よりも余分にオーキシンが生合成され、そのオーキシンが内鞘細胞(の一部)で始まる側根発生に寄与している可能性が考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、申請時点で「1.側根創始に必要なオーキシンの生合成が行われる細胞の特定」および「2.側根創始細胞にオーキシンが蓄積される仕組みの解明」を計画した。また、初年度に得られた結果から、側根創始に影響を与えるSUR2の解析を新たに計画に加えた。2年目である本年度の進捗は以下の通りである。
fsp1 はsur2のアリルであり、野生型よりも側根数が多い。初年度はfsp1 にDR5:LUCレポーターを導入してオーキシン応答パターンを解析した。そして、fsp1 では野生型に比べてDR5:LUCサイト(輝度の高い点で、輝度が安定した場合は将来側根出現部位となる)の消失頻度が低いことを報告した。本年度は、側根創始の側方抑制を担うTOLS2ペプチドを処理した条件下で同様の実験を行った。その結果、fsp1 は野生型に比べてTOLS2によるDR5:LUCサイト消失の程度が低かった。これらのことから、fsp1変異(SUR2の機能低下)は側根の創始を安定化させることで側根形成の増加に寄与することが示唆された。SUR2/CYP83B1はインドールグルコシノレート生合成に関わる酵素をコードし、欠損すると内生オーキシン量が増加する。本年度において、SUR2プロモーター下でGFPが発現している系統を、Zスタック画像を取得しながら観察した。その結果、SUR2の発現部位は内鞘細胞全体であり、木部極内鞘細胞や篩部極内鞘細胞に限定されているわけではないことがわかった。内鞘細胞でSUR2が発現していること、その欠損によりオーキシンが安定して蓄積されることから、側根創始に必要なオーキシンの生合成が行われる細胞の一つが内鞘細胞である可能性が浮上した。
以上の結果を得つつ、本年度は論文の執筆・投稿に至ったため、側根創始におけるオーキシン分布の制御機構について解明を目指す本研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
初年度の報告書の「研究実績の概要」に記載の理由により、「根冠剥離時に側部根冠細胞からオーキシンが供給されるという仮説の検証」を除き、当初の計画を推し進める(以下1、2)。さらに、本報告書の「現在までの進捗状況」に記載のSUR2の解析を進める(以下3)。
1.側根創始に必要なオーキシンの生合成が行われる細胞の特定:既知のオーキシン生合成遺伝子の発現を詳細に調べ、側根創始細胞での発現が見られたものに関しては変異体解析により側根創始・側根発生への関与を検証する。 2.側根創始細胞にオーキシンが蓄積される仕組みの解明:オーキシン排出輸送体PINsの細胞膜への偏在について、特に内鞘細胞に注目しながら観察し、特定のPINが側根創始に関与する可能性を探る。 3.側根創始に影響を与えるSUR2の解析: SUR2の機能が異常な変異体fsp1/sur2において、オーキシン応答蓄積の過程を時間および空間分解能を上げて詳細に解析する。また、fsp1/sur2におけるPINsの局在を観察し、SUR2のオーキシン蓄積への関与を検証する。
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