研究課題/領域番号 |
21K15125
|
研究種目 |
若手研究
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分44030:植物分子および生理科学関連
|
研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
加藤 大貴 愛媛大学, 理工学研究科(理学系), 助教 (30846994)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
|
キーワード | ゼニゴケ / ホルモン / シグナル伝達 / 進化 |
研究開始時の研究の概要 |
オーキシンは陸上植物の生活環全体で発生と成長を制御する主要なホルモンである。近年、オーキシンが転写因子WIPの発現を促進するという経路が陸上植物に共通することを見出し、WIPの分子機能の解明が陸上植物における多様なオーキシン機能の基本形と進化を理解する鍵だと考えた。本研究では遺伝的冗長性の低いゼニゴケを研究モデルに、WIPの遺伝的・物理的な相互作用因子に着目し、オーキシン-WIP経路が多面的な機能を果たす分子メカニズムの解明に取り組む。
|
研究実績の概要 |
本研究ではゼニゴケをモデルに(1)WIPの標的遺伝子の網羅的探索と結合配列の推定、(2)生化学的・遺伝学的アプローチによるWIPと相互作用するタンパク質の探索、(3)組織特異的な複合体形成による下流応答制御の検証を計画しており、本年度は(1)、(2)について以下のような成果を得た。 (1)クロマチン免疫沈降シーケンス解析(ChIP-seq)を行うために、昨年度はエストロゲン依存的にGFPタグを融合したWIPタンパク質を発現する株の作成を試みた。しかしエストロゲン処理により表現型を示す株が得られず、GFPタグがWIPの機能を阻害している可能性が考えられた。そこで本年度はタグをGFPよりも分子量が小さく機能阻害を起こしにくいと予想される3xFLAGに変更し、ゼニゴケへの形質転換を行った。その結果、エストロゲンによりWIP遺伝子の転写誘導と発生異常を示す株を得ることができた。また昨年度までに行ったWIPの過剰発現株と機能欠損変異体を用いたRNA-seq解析のデータを用いて、WIPによって発現が変動する遺伝子のプロモーター解析をおこなった。結果の一部についてはシロイヌナズナでの先行研究(Roldan et al., 2020)と一貫しており、WIPの機能に進化的な保存性があることが示唆された。 (2)WIPが相互作用因子と協同して機能する場合、両者は同じ細胞で発現している必要がある。そこで既存のRNA-seqデータを集めたゼニゴケの遺伝子発現データベース(MarpolBaseExpression)を用い、WIP遺伝子と発現パターンが類似した遺伝子の探索を行った。その結果、WIPの上流で働くと考えられるARF1の他に7種類の転写因子が同定された。 上記に加え、WIPの上流で働くオーキシン受容体の機能解析について京都大学の河内孝之教授、東京理科大学の西浜竜一教授のグループと共同研究を行い、その成果についてPlant Cell誌において論文発表を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究代表者は2022年3月に愛媛大学理工学研究科に移動し、独自の研究グループを立ち上げることになった。ゼニゴケを培養するための設備など、研究環境を新たに整備しなければならなかったこと、また教育・運営業務が増加したことにより、研究計画の実行以外にかかる時間と経費が増加したことが進捗の遅れを生じさせた。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究の計画は大きく(1)WIPの標的遺伝子の網羅的探索、(2)WIPの相互作用因子の探索、(3)組織特異的な複合体形成の検証に分けられる。(3)は(1)、(2)の成果を前提としており、次年度は主に(1)、(2)について以下のような方策で研究を遂行する。 (1)WIPの標的遺伝子・結合配列を同定するため、本年度に作成したエストロゲン依存的に3xFALGタグ融合WIPを発現する株(XVE>>WIP-FLAG)を用いてChIP-seq解析を行う。その際、過去に行った機能欠損変異体および過剰発現株を用いたRNA-seq解析と発現変動遺伝子のプロモーター解析のデータを参考にする。 (2)XVE>>WIP-FLAG株を用いて免疫沈降-質量分析法方による相互作用同定を試みる。本年度の成果により同定されたWIPと共発現する転写因子や、(1)で同定したWIP結合配列の情報を合わせて相互作用因子候補を同定する。得られた候補因子については、Y2H法やBimolecular Fluorescence Complementation (BiFC)法によりWIPとのタンパク質相互作用の検証を行う。 (3)上記の計画によりWIPの標的遺伝子、結合配列、相互作用因子が同定されていれば、相互作用因子の発現組織解析や機能欠損変異体の作成を行う。
|