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ウミホタルから光を「盗む」魚:タンパク質取込みの分子機構とその進化起源の解明

研究課題

研究課題/領域番号 21K15144
研究種目

若手研究

配分区分基金
審査区分 小区分45020:進化生物学関連
研究機関名古屋大学

研究代表者

別所 学 (別所ー上原学)  名古屋大学, 学際科学フロンティア研究所, 助教 (80880434)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2025-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
キーワード盗タンパク質 / 生物発光 / キンメモドキ / ルシフェラーゼ / トランスクリプトーム解析 / ウミホタル
研究開始時の研究の概要

ユニークな形質を持つ生物は、それらが独自の遺伝子をゲノム中に獲得することで進化したと考えられてきた。ところが、発光魚キンメモドキは、発光に必要な酵素遺伝子をゲノム中に持たず、餌であるウミホタルから発光酵素(ルシフェラーゼ)を獲得していることが、 申請者の研究により明らかとなった。「餌由来のタンパク質が消化されずに特定の器官の細胞に取り込まれ、さらに、本来の酵素機能が保持される」現象(盗タンパク質現象)の取込みの分子・細胞生物学的メカニズムおよび進化的起源は未知である。本研究では、キンメモドキにおいて餌由来タンパク質を細胞内に取込む仕組みの解明 と本現象がみられる新たな生物種の発見を目指す。

研究実績の概要

発光魚キンメモドキParapriacanthus ransonneti(ハタンポ科)は、発光性甲殻類トガリウミホタルCypridina noctilucaのルシフェラーゼタンパク質を発光器に取り込むが、その動態は不明である。また、免疫組織化学による染色像より発光細胞の細胞質にルシフェラーゼが存在することから、細胞膜介在性の取り込み機構などによりルシフェラーゼが取り込まれていると予想される。すなわち、細胞膜に局在するトガリウミホタルルシフェラーゼ受容体の存在を想定して、これを同定することを目指す。
ルシフェラーゼ抗体を用意し、これを用いてキンメモドキの発光器由来のタンパク質粗抽出物に対して免疫共沈降法による受容体の同定を試みた。しかしながら、夾雑タンパク質が多く、有力な候補を得ることができなかった。
本年度は、ゲノム・トランスクリプトーム解析を行い、発光器特異的な遺伝子の探索を行った。PacBioシーケンサーによるロングリードを用いたゲノム解読を行なった。その結果、高品質なドラフトゲノム(N50=13M b)を得ることができた。作成したゲノム情報とすでにえら得ていたトランスクリプトーム情報を統合して解析することで、De novoトランスクリプトーム解析では解釈が困難なパラログの解析や、大きな遺伝子の解析を、ゲノム情報を整備することで解決した。今後は、発光器特異的遺伝子の機能解析を培養細胞系で発現させて行う。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本年度は、前年度までの進捗をうけて、比較トランスクリプトーム解析を進め、ルシフェラーゼの取り込みに関与すると考えられる遺伝子の候補を得た。すなわち、発光器における発光細胞の細胞膜上でルシフェラーゼと結合する受容体の候補遺伝子をバイオインフォマティクス解析から見出した。しかし、当該遺伝子は非常に長く、ショートーリードを用いた遺伝子予測では全長を復元推定することができなかった。そこで本年度は、PacBioシーケンサーによるロングリードを用いたゲノム解読を行なった。その結果、高品質なドラフトゲノム(N50=13M b)を得ることができた。これを用いて遺伝子カタログを作成した。作成した遺伝子カタログに対して、トランスクリプトーム解析を行なったところ、上記と同じ候補遺伝子を得ることができ、再現性が担保された。
また、ハタンポ科に属する1種とハタンポ科に近縁なアオバダイ科の1種のトランスクリプトームデータを得ることができた。これらを用いて、キンメモドキのゲノム・トランスクリプトームデータと比較し、発光形質や盗タンパク質に関わる遺伝子群を網羅的に解析することができる。

今後の研究の推進方策

ルシフェラーゼの受容体候補遺伝子の全長クローニングを行い、培養細胞系で発現させ機能解析を行う。機能解析のためにトガリウミホタルルシフェラーゼを受容体の相互作用相手として調製する必要があるが、当該タンパク質はシステインを多数含み一般的な大腸菌E. coli (DE) BL21などでの発現が困難である。そこで、メタノール資化酵母Pichia pastorisを用いてこれを発現する。作成したルシフェラーゼを細胞培養液に添加し、結合能をルシフェラーゼ活性(発光強度)を用いて評価する。
また、ハタンポ科に属する1種とハタンポ科に近縁なアオバダイ科の1種のトランスクリプトームデータを、キンメモドキのゲノム・トランスクリプトームデータと比較し、発光形質や盗タンパク質に関わる遺伝子群を網羅的に解析する。

報告書

(3件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 2022 実施状況報告書
  • 2021 実施状況報告書
  • 研究成果

    (20件)

すべて 2023 2022 2021

すべて 学会発表 (20件) (うち国際学会 3件、 招待講演 14件)

  • [学会発表] 深海に棲む光る生物のいろいろ2023

    • 著者名/発表者名
      別所上原学
    • 学会等名
      動物学会関東大会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 招待講演
  • [学会発表] 盗タンパク質をもつ発光生物の探索2023

    • 著者名/発表者名
      別所上原学
    • 学会等名
      日本進化学会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 招待講演
  • [学会発表] キンメモドキの盗タンパク質現象とタンパク質取込メカニズム解明に向けて2023

    • 著者名/発表者名
      別所上原学
    • 学会等名
      動物学会中部支部
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] ‘盗タンパク質による生物発光’2022

    • 著者名/発表者名
      別所上原学
    • 学会等名
      ERATO共生進化機構先端セミナー
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
    • 招待講演
  • [学会発表] ‘キンメモドキの盗タンパク質による生物発光’2022

    • 著者名/発表者名
      別所上原学
    • 学会等名
      基礎生物学研究所 トランススケールバイオロジーワークショップ
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
    • 招待講演
  • [学会発表] 盗タンパク質による生物発光~ウミホタルを食べて光るキンメモドキ~2021

    • 著者名/発表者名
      別所上原学
    • 学会等名
      盗機能生物研究会
    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
    • 招待講演
  • [学会発表] ‘ウミホタルから発光分子を盗むキンメモドキ’2021

    • 著者名/発表者名
      別所上原学
    • 学会等名
      アドバンス生命理学特論
    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
    • 招待講演
  • [学会発表] 盗タンパク質による生物発光~ウミホタルを食べて光るキンメモドキ~2021

    • 著者名/発表者名
      別所上原学
    • 学会等名
      ScienceOme
    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Kleptoprotein Bioluminescence: Protein uptake in a fish from luminous crustacean2021

    • 著者名/発表者名
      別所上原学
    • 学会等名
      2nd Asia Evo Conference
    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
    • 国際学会
  • [学会発表] ‘深海サンゴ(花虫綱)の生物発光メカニズムの比較と進化’2021

    • 著者名/発表者名
      別所上原学
    • 学会等名
      第23回進化学会(東京オンライン大会・ハイブリッド形式)
    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
  • [学会発表] ‘盗タンパク質による生物発光:トガリウミホタルから光を盗むキンメモドキ’2021

    • 著者名/発表者名
      別所上原学
    • 学会等名
      第92回動物学会(米子オンライン大会・ハイブリッド形式)
    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
  • [学会発表] ‘キンメモドキのユニークな発光器官’2021

    • 著者名/発表者名
      別所上原学
    • 学会等名
      第6回ユニーク会(ハイブリッド形式・東京・名古屋・オンライン)
    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
  • [学会発表] Kleptoprotein Bioluminescence: A fish obtains luciferase from a luminous ostracod prey2021

    • 著者名/発表者名
      別所上原学
    • 学会等名
      Living Light
    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
    • 国際学会
  • [学会発表] ‘盗タンパク質による生物発光:ウミホタルを食べて光るキンメモドキ’2021

    • 著者名/発表者名
      別所上原学
    • 学会等名
      基礎生物学研究所部門公開セミナー
    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
    • 招待講演
  • [学会発表] ‘太古の海の光る森’2021

    • 著者名/発表者名
      別所上原学
    • 学会等名
      名古屋大学出前授業
    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
    • 招待講演
  • [学会発表] ‘餌生物の能力をコピー!?キンメモドキの盗タンパク質`2021

    • 著者名/発表者名
      別所上原学
    • 学会等名
      第22回静岡ライフサイエンスシンポジウム
    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
    • 招待講演
  • [学会発表] ‘生物発光の進化と盗タンパク質`2021

    • 著者名/発表者名
      別所上原学
    • 学会等名
      第2回ERATO共生進化機構先端セミナーオンライン
    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
    • 招待講演
  • [学会発表] ‘キンメモドキの盗タンパク質による生物発光’2021

    • 著者名/発表者名
      別所上原学
    • 学会等名
      盗機能生物研究集会
    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
    • 招待講演
  • [学会発表] ‘第2のKleptoproteinの発見’2021

    • 著者名/発表者名
      別所上原学
    • 学会等名
      ACT-X「生命と化学」第3回領域会議(東京オンライン大会・ハイブリッド形式)
    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
    • 招待講演
  • [学会発表] ‘盗タンパク質をもつ発光生物の発見’2021

    • 著者名/発表者名
      別所上原学
    • 学会等名
      JST創発の場
    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
    • 招待講演

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公開日: 2021-04-28   更新日: 2024-12-25  

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