研究課題/領域番号 |
21K15145
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分45020:進化生物学関連
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
松原 遼 鳥取大学, 医学部, 助教 (90868514)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 実験進化発生学 / 有尾両生類 / 四肢形態形成 / CRISPR-Cas9 / Tbx3 / Shh / 形態的多様性 / CRISPR -Cas9 / Gli3 / 進化発生学 / 四肢 / 指 / イベリアトゲイモリ / ゲノム編集 |
研究開始時の研究の概要 |
動物は多様な指形態を持っているが、多様性を生み出す統一原理は明らかにされていない。進化的には四肢発生における後方関連遺伝子が指形成領域で前方へと迫り上がることで指が獲得されたと考えられているが、それを示す証拠はない。本研究ではまずイモリの前肢(4本指)と後肢(5本指)の違いをもたらすメカニズムとして、後方関連遺伝子の一つであるhoxd13遺伝子に着目し、指形態との関係性を明らかにする。さらにCRISPR-Cas9による遺伝子ノックアウトとトランスジェニック技術を併用することで、イモリに実験的に多様な指形態を創り出し、指形態と遺伝子、進化との関係性を明らかにするという実験進化発生学を展開する。
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研究実績の概要 |
本研究では両生類のイモリを用いて実験発生学によって指形態の多様性がどのように生じるのかを明らかにすることを目的としている。まずイモリは前肢で4本、後肢で5本と異なる本数の指数を持っており、前肢と後肢を比較することで異なる指の本数が生じるメカニズムを明らかにできると考えた。昨年度までの研究により候補遺伝子のひとつであるHoxd13の機能解析実験で指の本数の変化は起こらなかったため、Hoxd13の上流にあたるShhの解析を進めた。前肢と後肢のShh発現時間を比較すると前肢では短く、後肢では長いことが明らかとなった。さらにShhの機能阻害実験及び再生時における発現誘導実験からShhがイモリの指本数を制御することを明らかにした。今後はShh発現が時空間的にどのように変化することで実際に指の本数が変化しているのかを明らかにするため、より詳細な解析を行う。指形態変化に対する別方向からのアプローチとしてイモリの遺伝学的解析も行った。昨年度までにGli3、Tbx3の遺伝子機能欠損イモリ(crispant)をCRISPR-Cas9によって作製し、他の四肢動物同様の遺伝子機能がイモリでも保存されていることを明らかにした。本年度はさらなる解析をTbx3 crispantに対して進めた。Tbx3 crispantの前肢は野生型で4本の指が2-3本に減少し、後肢は野生型で5本の指が6本に増加する。詳細な解析の結果、Tbx3 crispant前肢ではShh発現の低下(もしくは早期発現消失)、後肢ではShh発現の延長によって指本数が変化していることを明らかにした。しかしTbx3 crispantの前肢・後肢間で表現型が異なる要因が依然不明なため、今後それを明らかにするための解析を行っていく。これらの成果について2つの学会及び、1つのシンポジウムで口頭発表を行い、2報の論文を発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前年度において、計画通りHoxd13の発現誘導(過剰発現)実験を行ったが四肢形態に変化は見られなかった。そのため他の候補遺伝子であるShhとGli1、さらにHoxa13+Hoxd13の発現誘導実験への切り替えを行っている。これらを発現誘導できるトランスジェニック(Tg)個体の系統化を進めている。導入遺伝子を安定的に発現できる次世代(F1)の個体を得るためには、作製したTgイモリ(F0)の性成熟を待つ必要があり、およそ1年を要したため遅れが生じている。現在F1を育成中であり、遺伝子導入の有無を確認している。
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今後の研究の推進方策 |
指形態に変化をもたらすと考えられる候補遺伝子(Shh、Gli1、Hoxa13+Hoxd13)の発現誘導実験を行うために次世代のTg個体を現在育成中である。発現誘導を時空間的に制御し、その際に生じる指形態との関係性を明らかにすることで、遺伝子発現のどのような変化がどのような形態的変化をもたらすのかを明らかにできる。技術的な問題点として、遺伝子の機能が強力な場合(Shhなど)、全身での発現誘導は致死となる可能性が高い。これを回避するためには発生四肢のごく一部のみで発現誘導を行う必要がある。そのための技術として赤外線レーザーによる遺伝子発現誘導法(IR-REGO法)が確立されている。しかし機器が高額かつ技術習得が必須なため、ノウハウがあり設備を保有している基礎生物学研究所(もしくは弘前大学)との共同研究を行う。それまでに次世代Tg個体の作出を安定化しつつ、共同研究の準備を進める。さらにイモリで明らかになった指本数制御メカニズムが他の四肢動物にも適用可能であるかを検証するため、新たにネッタイツメガエルを実験動物に加えて比較解析を行う。具体的にはイモリと同様に遺伝子の機能欠損個体をCRISPR-Cas9によって作製し、指形態の変化、遺伝子発現の変化を解析する。
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