研究課題/領域番号 |
21K15160
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分45040:生態学および環境学関連
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
山口 諒 北海道大学, 先端生命科学研究院, 助教 (80812982)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2023年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
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キーワード | 種分化 / 生物系統地理 / 数理モデル |
研究開始時の研究の概要 |
近縁種が互いに接する地域では交雑が観察されることが多く、そのような地域を交雑帯と呼ぶ。交雑帯は、個体群動態・環境適応・同類交配といった多くの要素から構成されるため、古くから“自然の実験室”として着目されてきた。近縁種は互いに不利益な交雑を避けるよう同類交配が進化するが、一方の種のメスが他種のオスを強く避けるのに対し、他方の種のメスは両種のオスを交配相手として問題なく受け入れてしまうことは自然界でよく観察される。この同類交配の種間非対称性の起源は未解明なことが多く、本研究では野外生物実験と数理モデルを用いてその要因を検証する。
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研究実績の概要 |
種間の非対称な交配選好性の進化生態学的起源として、これまで本研究の実施を通して個体群動態を考慮することの重要性が明らかとなった。特に進化的な長期のタイムスケールにおいて、古典的には集団サイズが一定と仮定される一方、絶滅リスクを明示的に考慮することによって全く異なる進化パターンが出現することを理論的に解析した。例として、新たな環境への局所適応では、その初期(適応度地形の麓に位置する時点)では適応度が低い個体が大半を占め、集団サイズは小さく、適応するにつれて個体数が回復する。この絶滅リスクを回避するためには、適応度を大幅に回復させるような、表現型上も大きな効果を持つ突然変異の発生と蓄積を待たなければならない。絶滅を回避して長期にわたって生存した親集団同士を交雑させ、その交雑個体の適応度計算を行った結果、絶滅リスクの高かった集団間で種分化可能性も高いことが明らかとなった。これは、絶滅を回避するために各親集団で必要であった表現型上効果の大きな変異が、交雑個体の中で不和合を起こし、結果として適応度の頂点から離れてしまうことに起因する。急速な適応とそれに伴う絶滅リスクと引き換えに生殖隔離の進化速度が加速するという理論を‘種分化の不死鳥仮説’と命名した。また、近縁種の二次的接触の際に、同類交配の強度が両種の安定共存にもたらす条件を理論的に明らかにした。オオヨモギハムシの北海道野外集団を用いたゲノム解析では、交配前隔離に非対称性のある3集団の各組み合わせについて、感覚器である触角を含む頭部および前脚の発現変動遺伝子解析を行った結果、各集団間で複数遺伝子について有意な差を検出している。今後さらに生物学的な解釈を可能とする解析を行い、交配前隔離の非対称性に貢献する遺伝的メカニズムとその進化的背景に関する議論を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
個体ベースシミュレーションおよび理論解析による数理モデル研究については、論文出版も含めて所期の目的に沿った成果が得られた。シーケンスデータを用いたバイオインフォマティクス解析については、オオヨモギハムシ野外集団の一部についてリファレンスゲノムが利用可能であることが判明したため、従来の解析方針を僅かに修正しつつ実施している。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は次世代シーケンスデータを用いたバイオインフォマティクス解析に注力する。交配前隔離の進化生態学的起源を考察するにあたり、これまで予定した交配実験データに加え、交配相手の選好性に関わる体表炭化水素組成を形質データとして取得し、解析を実施する予定である。
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