研究課題/領域番号 |
21K15165
|
研究種目 |
若手研究
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分45040:生態学および環境学関連
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
小川 浩太 九州大学, 比較社会文化研究院, 助教 (40733960)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
|
キーワード | 表現型可塑性 / ライフサイクル / 休眠 / 日周応答 / 越冬戦略 / 台風攪乱 / ビックデータ解析 / 統計的因果推論 |
研究開始時の研究の概要 |
地球上の生物の多くは周期的に変化する気候条件に対応するため、環境依存的に表現型を変化させる表現型可塑性を利用した適応戦略を進化させている。適応的な表現型可塑性において、発生パターンをスイッチさせるキューとしてどの環境シグナルを利用するかということは極めて重要である。本研究では、日長条件および食物条件依存的な2タイプの蛹休眠を示すツマベニチョウを材料に、発生制御機構と環境シグナルのクロストークの形成/改変プロセスについて、生態学、生理学および遺伝学的レベルで解析し、環境シグナルを取捨選択/統合し表現型を変化させている機構を明らかにする。
|
研究実績の概要 |
越冬休眠戦略は高緯度地域への進出・適応において極めて重要である。本研究では東洋区を中心に分布するツマベニチョウを対象に休眠機構とその進化プロセスの解明を目的に研究を進めている。昨年度までの研究によりツマベニチョウの休眠性が地域によって異なっており、南琉球(八重山諸島)では休眠性を示さないが、中琉球(沖縄島・奄美諸島)では休眠性を示す個体と示さない個体が混生、九州ではすべての個体が休眠性を示すことが判明した。香港の個体群は休眠性を示すことが知られている為、八重山諸島では休眠性が喪失したと考えられる。また、野外調査の結果から八重山諸島の非休眠性ライフサイクルの維持には台風が影響していることが示唆されたので、ツマベニチョウの過去10年分の採集記録と気象データを利用し、個体群動態に台風等がどのように影響をあたえるか統計的因果推論により評価した。数理モデルを適応する上で論理的な改善点はまだあるものの、台風がツマベニチョウの発生パターンに大きく影響すること、そしてその影響の仕方は八重山諸島と沖縄島では異なること、八重山諸島では強風が個体数に影響を与えることなどが示された。 研究開始時点では、シンプルな休眠性の進化メカニズムを想定していたが、予測不能な環境攪 が植物の季節性をマスクすることで、休眠性獲得にネガティブに作用していることを明確に示すことができた。研究開始時点の予想とは異なる結果であるが、進化生物学的に非常に示唆に富む結果が得られた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究開始時には琉球列島を北上するにつれてツマベニチョウは段階的に休眠性を獲得したというシナリオに基づいて研究計画を立案したが、実際には八重山諸島では休眠性の喪失が生じており当初の予測よりも複雑かつ興味深い進化プロセスが存在することが判明した。プレプリントサーバーにて解析結果を公開したが、使用した数理モデルに論理的な改善点が見つかったため更なる解析を進めている。
|
今後の研究の推進方策 |
最終年度となる本年度は研究をまとめ発表することに尽力する。これまでに一定の研究成果が得られており、今年度はこれを論文化して発表することを目標とする。特に数理解析の精度を向上すべく様々な手法で解析する。
|