研究課題/領域番号 |
21K15166
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分45040:生態学および環境学関連
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研究機関 | 東京大学 (2022-2023) 東京理科大学 (2021) |
研究代表者 |
赤司 寛志 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 特任助教 (00808644)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 温度応答 / 遺伝子発現 / ニホンヤモリ / ミナミヤモリ / RNA-seq / 温度感受性TRP / TRPA1 / 忌避体温 / 臨界最高体温(CTmax) / 臨界最低体温(CTmin) / 熱ストレス応答行動 / 高温適応 / 忌避行動 |
研究開始時の研究の概要 |
生体の温度センサーを担うTransient Receptor Potential Ankyrin 1チャネル(TRPA1)は、侵害温度刺激を受容する重要なセンサーである。しかし、TRPA1の活性化と侵害温度に対する忌避行動との関連は、限られた生物種の検証に留まっている。本研究は、採取が容易なニホンヤモリをモデルとして扱い、TRPA1の遺伝子破壊を実施することで、TRPA1と熱刺激に対する応答行動や限界温度との関連を明らかにする。これにより、今後の温暖化に対する動物の脆弱性を温度センサーの機能から推定することが可能になるかもしれない。
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研究実績の概要 |
外温性動物の体温は温度環境に依存して変化するが、生命活動を維持する上で低体温や高体温を常に許容できるわけではなく、体温の過度な上昇を防ぐには自身にとって危険な温度を感知して避けることが重要になる。本研究の目的は、熱刺激に対する動物の応答行動にTRPA1がどのように関連しているかを明らかにすることであり、これにより生体熱センサーの進化的変化が行動の変化を制御している可能性を検討する。前年度までの研究において、ニホンヤモリと近年なミナミヤモリは温度刺激に対して異なる行動的な応答を示すことが明らかになった。そこで、ミナミヤモリのTRPA1配列決定を見据えてRNA-seqを実施した。これまでの研究で、ニホンヤモリにおいて26度、29度、33度の温度一定条件に晒した際のRNA-seqを実施している。ミナミヤモリのTRPA1参照配列の取得と並行して、遺伝子発現応答の種間差を検出する目的で、ミナミヤモリにおいても同様に26度、29度、33度の温度一定条件に晒した際のRNA-seqを実施した。遺伝子発現の全体的なパターンを比較したところ、ミナミヤモリにおいては3つの温度条件において遺伝子発現パターンに明確な差が確認できたものの、ニホンヤモリにおいてはミナミヤモリのパターンに比べると不明瞭であることが明らかになった。爬虫類の過去のRNAseqにおいても、温度刺激に対して明確な発現パターンの変化が確認できたことから、ニホンヤモリの比較的不明瞭な発現パターンは、ニホンヤモリ特有の応答というよりも、実験操作に問題があった可能性が浮上した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ミナミヤモリでRNAseqを実施し、論文化に向けた解析は概ね完了した。3つの温度条件における温度応答性の遺伝子を多数検出し、ニホンヤモリとの発現パターンの比較から、行動解析で得られた温度応答の種間差を説明する候補遺伝子の検出に努めた。しかし、種間比較を実施したことで、ニホンヤモリの温度刺激に対する遺伝子発現パターンの変化が比較的不明瞭であることが明らかになった。先行研究において、別種のトカゲを用いた温度刺激に対するRNAseqでは、明確な遺伝子発現の温度応答が観察され、ミナミヤモリの発現パターンは先行研究に近いものであったことから、この不明瞭な遺伝子発現応答は、種特異的な応答というよりも、むしろ実験操作の問題の可能性が考えられる。こうした理由から、評価としてやや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
ニホンヤモリを用いたRNAseqの追試を行なう。遺伝子発現パターンの種間比較は、温度応答の生理的機構の理解において基礎情報として今後も利用されることになるため、より正確な遺伝子発現を捉えていることを明確にするために必要な追試である。
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