研究課題/領域番号 |
21K15201
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分46030:神経機能学関連
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
杉山 元康 山形大学, 医学部, 客員研究員 (60637255)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
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キーワード | 顔面神経麻痺 / ROCK阻害薬 / 側頭骨内顔面神経障害動物モデル / 再生医療 / 新規治療法開発 / 動物モデル |
研究開始時の研究の概要 |
当科では、顔面神経麻痺の新たな治療法の開発に臨んでおり、オリジナルの側頭骨内顔面神経障害動物モデルを開発済みである。この動物モデルに、障害された神経線維の伸長やシナプス形成を促進すると報告されているROCK (Rho associated coiled-coil forming kinase) 阻害薬を導入することで、世界で初めてその有効性を検証し、新規救済再生治療法を開発することを目標とする。
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研究実績の概要 |
顔面神経麻痺の重症例においては、既存のいずれの治療法でも治癒率が低く、新たな救済治療法の開発が望まれている。そのため、当科では新たな治療法の開発に臨んでおり、オリジナルのモルモット側頭骨内顔面神経障害動物モデルを作製した。この動物モデルを用いて、ROCK (Rho associated coiled-coil forming kinase) 阻害薬の顔面神経麻痺治療効果を検討した。 4週齢のモルモットに全身麻酔をかけ、左耳後部から側頭骨内顔面神経を露出し、鉗子で10分間障害した。その後、徐放用基材にROCK阻害薬と生理食塩水を添加し、障害部位に留置して傷を閉じた(各群n=6)。術後8週目をエンドポイントとし、当科において確立済みの、運動評価、誘発筋電図を用いた電気生理学的評価、免疫染色による組織学的評価の三項目で評価を行った。ビデオカメラを用いて毎週閉眼の程度を評価し、8週目に閉眼の程度と完治率、鼻毛筋の筋電図測定、顔面神経採取・免疫組織化学による組織評価を行った。 その結果、最終閉眼率と閉眼の完治率はROCK阻害薬群で有意に高い結果となった。また誘発筋電図を用いた鼻毛筋の評価では、AmplitudeとLatencyはROCK阻害薬群で有意に改善した。更に免疫組織化学による組織評価では、ROCK阻害薬群では軸索数が有意に多かった。Sudan Black染色での、髄鞘再生の病理学的評価も施行した。定量評価は困難であったが、Ripasudil群もコントロール群も髄鞘の再生を認めた。 分子生物学的検討では、ELISAでROCK活性は障害後10分で上昇を認めた。また、リアルタイムPCRで、障害後にRhoA, ROCK1, ROCK2のmRNAの発現量が増加した個体が見られた。 今後は、障害後の採取時間のバリエーションを増やし、ELISAでROCK活性を確認するなど、更なる検討を行っていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ROCK阻害薬の顔面神経回復効果があることは、概ね確認できる結果が出せていると考えている。 Rho/ROCK経路の分子生物学的検討をさらに行っていくと共に、今後は、実臨床での応用に向け、ROCK阻害薬の至適濃度や副作用の有無の検討を行いたいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
実臨床での応用に向けて、ROCK阻害薬の投与濃度を変更し、ROCK阻害薬の至適濃度や副作用の有無の検討を行うとともに、シグナル経路の検討も行う。シグナル経路の検討に関しては、RT-qPCRやELISAを用いて、顔面神経におけるRho/ROCK経路の分子生物学的検討を加える予定である。 さらに、余力があればドラックデリバリーシステムについて、ROCK阻害薬を徐放用基材 (ゼラチンスポンジ)を用いて投与した場合と、鼓室内チューブによる連日投与を行った場合での有効性の違いを比較検討する。動物モデルでの、鼓室内チューブによる連続投与に成功すれば、これも世界で初めての報告となる。 学会発表や論文作成も積極的に行っていきたい。
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