研究課題/領域番号 |
21K15223
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分47010:薬系化学および創薬科学関連
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研究機関 | 京都大学 (2022) 金沢大学 (2021) |
研究代表者 |
長尾 一哲 京都大学, 化学研究所, 助教 (50825164)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 有機光酸化還元触媒 / ラジカルー極性交差反応 / カルボカチオン / 強酸フリー / 脱炭酸カップリング / 触媒化学 / コバルト / 長寿命ラジカル / 有機硫黄光触媒 / アルキル化 / 不斉反応 |
研究開始時の研究の概要 |
申請者は有機硫黄光触媒とアルキル求電子剤から一電子移動を利用することで酸を用いることなく、カルボカチオン等価体となるアルキルスルホニウム種を発生させることに成功した。しかし、利用できる求核剤が限定的であり、その反応性や立体選択性はほとんど未解明であった。本研究では、「有機硫黄光触媒による酸を用いないカルボカチオン発生法」を触媒の再設計により、高選択的な結合形成反応の開発に繋げる。
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研究実績の概要 |
本年度は以下のような成果が得られた。 1)可視光と有機硫黄光酸化還元触媒を用いて脂肪族カルボン酸誘導体から発生させたアルキルスルホニウム種(カルボカチオン等価体)が種々の求核剤と反応することを見出した。光励起した有機硫黄光酸化還元触媒から脂肪族カルボン酸誘導体への一電子移動により生じた触媒由来のラジカルカチオン種(長寿命ラジカル)とアルキルラジカル種(短寿命ラジカル)が再結合することでアルキルスルホニウム種が生成する。このアルキルスルホニウム種がフッ素求核剤、有機シラン化合物、リン化合物と反応することを見出した。 2)昨年度に引き続き、上記のアルキルスルホニウム種を脱炭酸型セミピナコール転位に活用した。 3)光酸化還元触媒/コバルト触媒/ブレンステッド酸触媒のハイブリッド触媒システムを用いてアルケンから発生させたアルキルコバルト(IV)種が窒素、ハロゲン求核剤と反応することを見出した。本手法ではCo(II)種が光酸化還元触媒によって一電子還元されてCo(I)種を生成する。Co(I)種はブレンステッド酸触媒によってプロトン化を受けてCo(III)-H種へと変換される。続いてCo(III)-H種はアルケンへ金属ヒドリド水素原子移動を起こしてアルキルラジカル等価体であるアルキルコバルト(III)種を生成する。アルキルコバルト(III)種は光酸化還元触媒のラジカルカチオン種による一電子酸化を受けて、カルボカチオン等価体であるアルキルコバルト(IV)種となる。光酸化還元触媒とコバルトの配位子が反応性に大きく影響を与えることを実験的に見出し、量子化学計算を用いて解析中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
理由は以下の2点である。 ①研究実績の概要1)と2)の可視光と有機硫黄光酸化還元触媒を用いて脂肪族カルボン酸誘導体から発生させたアルキルスルホニウム種は想定以上に幅広い求核剤と反応することがわかった。フッ素求核剤、有機シラン化合物のアルキル化反応とセミピナコール転位反応は論文発表することができた。リン求核剤との反応も論文準備中である。 ②研究実績の概要3)において幅広い求核剤への適用が可能であることから、汎用性の高いアルケンのヒドロ官能基化になることが見込める。
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今後の研究の推進方策 |
研究実績の概要1)のリン求核剤との反応については論文化を進める。研究実績の概要3)については、アルキルラジカルの介在が見られているため、ラジカル付加やラジカル移動プロセスを組み合わせることで、多様な分子変換に展開していく。昨年度に引き続き、アルキルスルホニウム種とアルキルコバルト(IV)種の不斉化に取り組む。キラルアニオンもしくはキラル配位子を組み合わせて不斉化に挑む。
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