研究課題
若手研究
本研究では深層学習を利用し、高い活性化合物を予測する創薬方法論の開発と、これまで“化学者の常識”では見出すことができなかった新規骨格を持つ生理活性物質を発見することである。機械学習は様々な分野で功績をあげているが、創薬においては汎用的な方法論は確立されていない。そこで、化学構造自体を[入力]しAIに化合物を学習させる深層学習を利用し、HDAC阻害薬をモデルとして本手法の有用性を明らかにする。
計算機による薬物スクリーニングはコスト・時間を削減できる有効な創薬手法になる。既知の活性化合物を元にその類似化合物を予測するLigand-Based Drug Discovery (LBDD) 型の計算法は、標的タンパク質の構造を必要としない。本研究では、機械学習を活用し、汎用的に高い精度が得られる新規LBDD型の計算法の開発を目指した。今回、モデル標的として、がんの創薬標的として興味深い、エピジェネティクス関連酵素である、ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)を用い、機械学習モデルの性能を評価した。まず、記述子による分子表現を基にした活性予測モデルを作成し、HDAC8の新規阻害薬を探索した。その結果、ランダムフォレストアルゴリズムを用いた場合、高い精度(AUC > 0.9)でHDAC8に対して活性予測できることが分かった。また、学習済みの予測モデルを用いて、大阪大学化合物ライブラリーから、候補化合物をスクリーニングした結果、新しい骨格を有する新規HDAC8阻害薬の同定に成功した。さらに、研究代表者は、深層学習を用いた活性予測モデルの開発も行った。深層学習では、化合物情報そのものを入力でき、AI自体が化合物の特徴を自動的に学ぶことができるため、汎用的なモデルが作成できるのではないかと考えた。開発した活性予測モデルは、報告例のある既存のモデルよりも高い精度で化合物を予測できることがわかった。さらに、学習したAIを用い、大規模な化合物ライブラリー(約100万化合物)に対するスクリーニングを行った。その結果、化合物濃度10 microMで、HDACの活性を50%程度阻害する化合物を同定した。さらに、同定した化合物と、既知の阻害薬との類似度評価を行った結果、谷本係数が0.3以下と低く、本手法により新しいタイプのHDAC阻害薬リードを発見することができた。
2: おおむね順調に進展している
記述子を基にした活性予測モデルを作成し、新規HDAC8阻害薬の同定し、学術論文として発表できたため。さらに、深層学習を用いた新規活性予測モデルの開発も行い、新規HDAC1阻害薬リードを発見できたため。
作成した、深層学習による新規活性予測モデルが、他のHDACアイソフォームにも適応可能か検証する。
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すべて 雑誌論文 (9件) (うち国際共著 2件、 査読あり 9件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (33件) (うち国際学会 7件、 招待講演 1件)
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