研究課題/領域番号 |
21K15244
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分47020:薬系分析および物理化学関連
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研究機関 | 湘南医療大学 |
研究代表者 |
加藤 紘一 湘南医療大学, 薬学部医療薬学科, 講師 (80814821)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 脱アミド化 / クリスタリン / 白内障 / アスパラギン残基 / 量子化学計算 / 非酵素的翻訳後修飾 / 分子動力学シミュレーション / 加齢性疾患 |
研究開始時の研究の概要 |
タンパク質中におけるアスパラギン残基の非酵素的な脱アミド化は、白内障などの加齢性疾患を引き起こす原因であると考えられている。本研究では実験的手法および計算化学的手法を用いて、アスパラギン残基の脱アミド化とタンパク質の立体構造との関係を解明する。隣接残基が脱アミド化の反応機構や反応速度に及ぼす影響については量子化学計算を用いて解析する。また、タンパク質工学的手法と分子動力学シミュレーションを組み合わせることにより、脱アミド化がタンパク質の立体構造や凝集能に及ぼす影響を調べる。さらに、タンパク質構造中における脱アミド化の反応速度を解析し、立体構造と反応速度の関係を解明する。
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研究実績の概要 |
アスパラギン残基の脱アミド化の反応速度は、C末端側の隣接残基側鎖が嵩高いほど遅くなると言われている。しかし、γSクリスタリンにおいて脱アミド化頻度が高いアスパラギン残基のうち2つの隣接残基はフェニルアラニン残基であり、1つの隣接残基はチロシン残基である。そこで、この芳香族アミノ酸残基が脱アミド化速度に影響を及ぼす影響を量子化学計算により調べた。その結果、芳香環との相互作用がスクシンイミド形成の活性化障壁を低下させることが示唆された。このことから、C末端側の芳香族アミノ酸残基はアスパラギン残基の脱アミド化を促進すると考えられた。一方で、主鎖構造によっては芳香環が反応に関る構造部位に接近することができないことが示された。したがって、芳香族アミノ酸残基による脱アミド化の促進は、特定のタンパク質構造中においてのみ作用すると考えられた。また、γSクリスタリンのアスパラギン残基を全てアスパラギン酸残基に置換した変異体 (5D) を作成し、凝集に及ぼす影響を解析した。一残基変異では、N37D変異体が最も凝集が促進されるが、5D変異体ではそれよりもさらに速く凝集体が形成された。この凝集体はチオフラビンTによる485nm付近の蛍光強度を増強させなかったが、1,8-ANSの蛍光強度は増大させた。したがって、γSクリスタリンの脱アミド化模倣変異体における凝集は、アミロイド性の凝集体形成ではなく、アモルファスな凝集体を形成していることが明らかとなった。さらに、陰イオン交換クロマトグラフィーを用いて、脱アミド化による電荷の変化を検出できることを示した。これを用いて、脱アミド化速度の解析を進行させる基盤を整えることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験室の建設遅れや、試薬の器具類の納入が遅く、実験をスムーズに実施できていない中ではあるが、結果は着実に得られている。結果として、当初計画通りにおおよそ進行しているため、おおむね順調に進展しているとした。特に、計算系および脱アミド化模倣変異体における凝集特性の解析は問題なく進行したと考えている。一方で、当初計画以上に進行していることや予想を上回る結果は得られていないため、計画以上に進展しているではないと判断した。
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今後の研究の推進方策 |
当初計画通りの進行度になってきたため、今後も計画通り進行させていく予定である。陰イオン交換クロマトグラフィーを用いて脱アミド化が起きたことを検出可能であることまでは示すことができたため、これを用いてタンパク質中における脱アミド化速度の解析を目指す。現状、37℃ではほとんど進行しないことが示唆されているため、様々な実験条件を試す予定である。まずは、緩衝液の濃度、塩濃度を変化させる予定であり、温度を上昇させて生理的条件から外すのは、最終手段と考えている。最終的には、活性化エネルギーを求めることができると理想的であるため、その段階で温度を変化させる必要があり、条件検討の段階では温度を変化させずに反応を解析させられる実験条件を検討する。その後、脱アミド化速度について解析を進めていく。
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