研究課題/領域番号 |
21K15245
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分47020:薬系分析および物理化学関連
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研究機関 | 京都薬科大学 |
研究代表者 |
扇田 隆司 京都薬科大学, 薬学部, 助教 (80737263)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | αシヌクレイン / パーキンソン病 / 神経変性疾患 / アミロイド / アミロイド線維 / 二次核形成 / 凝集核 |
研究開始時の研究の概要 |
αシヌクレインが異常構造をとって会合したアミロイド凝集核は、強い神経毒性と構造伝播性をもち、パーキンソン病などの神経変性疾患を引き起こす。しかし、疾患の治療標的となる凝集核は、過渡的かつ不安定な構造体であるために構造情報がほとんど得られていない。 本研究では、アミロイド凝集に伴ったαシヌクレインの構造変化を、部位特異的蛍光ラベル化等の物理化学的手法を用いて追跡・評価することで、異常型αシヌクレインの構造特性を明らかにする。これにより、αシヌクレイン関連神経変性疾患に対する診断・治療薬の設計基盤の確立に貢献する。
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研究実績の概要 |
本研究課題では、アミロイド凝集過程で形成される異常型αシヌクレインの構造特性の解明を目的として、神経毒性の主体となるアミロイド凝集核の形成が病態環境下で促進される分子機構の解明と凝集核の構造特性の同定を行う。これにより、異常型αシヌクレインを標的とした神経変性疾患の診断・治療分子の設計基盤となる知見を取得する。 2022年度は、配列が95%同一であるが線維化速度が著しく異なるヒトとマウスのαシヌクレインについて、物理化学的手法を用いた線維化メカニズムと分子内相互作用の比較解析を実施した。各タンパク質は大腸菌発現系を用いて作製し、線維化は線維特異的蛍光色素であるチオフラビンTを用いて追跡した。分子内相互作用は、αシヌクレインの任意の領域に導入したトリプトファン残基とC末領域に標識したアクリロダンとの蛍光共鳴エネルギー移動 (FRET)を測定することで評価した。 解析の結果、ヒト-マウスαシヌクレインはともに凝集核依存性線維形成モデルに従って凝集すること、ヒト-マウス間でのαシヌクレイン線維化速度の違いは主に87番目残基のミスマッチに起因すること、さらにマウス型のN87残基は疎水性の高いNon-amyloid β component (NAC)領域やpre-NAC領域とC末領域の分子内相互作用を阻害することを明らかにした。これらの結果から、αシヌクレインC末領域の分子内相互作用が線維化の制御に重要な役割を担うことが示唆され、αシヌクレインの構造制御法の開発につながる知見が取得できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題は、神経変性疾患の発症に関わるαシヌクレインのアミロイド凝集核形成機構の解明と構造特性の同定を目的とする。これまでの成果として、パーキンソン病に関連したαシヌクレインのC末領域欠損が既存線維の表面で自己触媒的に凝集核形成を加速する二次核形成の促進に寄与することを見出した。また、アミロイドコア構造を構成するNAC領域におけるヒト-マウス間での87番目ミスマッチ残基がC末領域とNACおよびpre-NAC領域との分子内相互作用を変化させることで、線維化挙動を著しく変化させることを明らかにした。これらの成果からαシヌクレインのC末領域が凝集核形成制御に中心的な役割を果たすことが示唆されており、凝集核形成の制御戦略のひとつとしてC末領域を介した分子内および分子間相互作用の制御が有望と期待される。このように、これまでの研究でαシヌクレインの凝集核形成機構に関する有益な知見が得られていることから、研究進捗状況としては、おおむね順調に進行しているといえる。今後、脂質膜などの外的要因の共存によるC末領域の相互作用変化が凝集核形成に与える影響を分子レベルで詳細に解析していくことでαシヌクレイン分子の相互作用制御法に関する知見の取得を試みる。また、これまでに見出した凝集核形成を促進するC末領域欠損型および87番目残基置換型αシヌクレインについて細胞毒性評価と構造解析を行い、毒性発現に関わる構造特性の同定を行う。これらの研究により、αシヌクレインを標的とした神経変性疾患治療分子の開発に有益な知見が得られると期待される。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、生体内でαシヌクレインと共存する脂質膜などの外部因子がC末領域の相互作用ならびに凝集核形成に与える影響を分子レベルで詳細に解析していく。これにより、αシヌクレイン分子の相互作用制御を介した凝集核形成抑制法の開発につながる知見を取得する。これまでの研究で、線維化の追跡手法と物理化学的なデータ解析法は既に確立している。また、生体内に存在するシナプス小胞モデルとして人工脂質膜リポソームを用いるが、その調製方法やαシヌクレインとの相互作用解析系も確立できている。 マウスαシヌクレインは線維化しやすいが神経毒性は示さないことから、ヒト-マウス間で異なるαシヌクレイン凝集核の物性が毒性発現の有無に寄与すると考えられる。一方、二次核形成を促進するC末領域欠損型αシヌクレインフラグメントはプリオン様の細胞間伝播を示す。そこで、ヒト-マウスαシヌクレインとその87番目残基置換体ならびにC末領域欠損型フラグメントを用いて細胞毒性評価と構造解析を行って相関を解析することで、毒性発現に関わる構造特性の同定を試みる。培養細胞を用いた細胞毒性評価系、赤外分光法や円偏光二色性測定を用いた二次構造評価法、原子間力顕微鏡観察や電子顕微鏡観察による線維構造評価系などは現時点で構築済みである。 以上の計画に則って今後の研究を推進することで、αシヌクレインを標的とした神経変性疾患治療分子の開発に有益な知見の取得を目指す。
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