研究課題/領域番号 |
21K15249
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分47020:薬系分析および物理化学関連
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研究機関 | 崇城大学 |
研究代表者 |
中村 仁美 崇城大学, 薬学部, 講師 (60510691)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2022年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2021年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
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キーワード | 抗体 / 結合親和性 / フレームワーク領域 / 荷電アミノ酸 / 親和性 / Fab |
研究開始時の研究の概要 |
迅速かつ適切な血清療法が可能となった現在ではハブに咬まれて死亡する例は稀になっているものの、治療に用いる抗血清は筋壊死抑制効果が低いために、運動障害などの後遺症が問題となっている。ハブ毒に含まれるBPIIという蛋白質が筋壊死因子であることは知られているが、筋壊死を誘導するメカニズムは未だ明らかになっておらず、このことが有効な筋壊死阻害薬開発の妨げとなっている。我々は、この問題を解決するための新たなアプローチとして、BPIIを標的とする抗体フラグメント(Fab)の作製を行っており、本研究ではこのFabの有用性を高めるために、BPIIに対する結合親和性を向上させることを目指している。
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研究実績の概要 |
毒蛇ハブ咬傷治療に用いられる抗毒素は出血などの症状に効果を発揮し、迅速かつ適切な投与により、ハブ咬傷被害で死亡する例は稀になっている。しかし、筋壊死の症状を抑える効果が低いために運動障害などの後遺症が残り、咬傷患者のQOL低下につながるケースもある。そのため、筋壊死抑制効果がより高い抗毒素に加え、ハブ毒の筋壊死誘導メカニズムの解明が求められている。当研究室ではこのような状況を踏まえ、ハブ毒筋壊死因子BPIIを標的としたモノクローナル抗体を取得し、これを咬傷治療およびBPIIの筋壊死誘導メカニズム解明のツールとして用いることを目指して物性解析と改変を行っている。本研究課題は抗BPII抗体の高機能化の一環として、BPIIに対する結合親和性を高めることを目的としている。 軽鎖フレームワーク領域(FR)への塩基性アミノ酸導入により酸性蛋白質に対する結合親和性が改善したという報告を参考に変異体デザインを行うこととした。すなわち、本研究課題の抗原BPIIは塩基性蛋白質であることから、抗体フラグメントFabのFRへの酸性アミノ酸(アスパラギン酸、グルタミン酸)導入による親和性改善を試みることとした。今年度は、軽鎖FRのセリン(中性アミノ酸)をアスパラギン酸とグルタミン酸に置換した抗BPII Fab変異体の調製とBPIIとの相互作用解析を行った結果、当初の予想に反し、アスパラギン酸導入により結合親和性が低下し、グルタミン酸導入ではほとんど変化が見られなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度の研究成果を踏まえて、抗BPII Fabの安定化のために重鎖FRに疎水性アミノ酸を導入し、かつ軽鎖FRに結合親和性の改善を期待してアスパラギン酸またはグルタミン酸を導入した変異体を調製した。バイオレイヤー干渉法での相互作用解析の結果から、どちらの酸性アミノ酸を導入した場合も親和性の改善にはつながらず、当初の予想とは異なる結果となった。そこで抗BPII Fabの分子モデリングを行い、BPIIと結合する領域の電荷分布を調べたところ、今回変異を導入した部位から離れたところに正電荷のクラスターがみられ、この部分が酸性アミノ酸の導入効果を打ち消している可能性が示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
抗BPII Fabの分子モデリングの結果からBPIIとの結合面に正電荷のクラスターが存在することがわかったため、それを減弱することが期待される部位に酸性アミノ酸を導入する予定である。また、今年度作製した変異体は3つのセリンをアスパラギン酸またはグルタミン酸に置換したものだが、導入する酸性アミノ酸の数をさらに増やした変異体の作製も予定している。
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