研究課題/領域番号 |
21K15262
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分47030:薬系衛生および生物化学関連
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研究機関 | 京都大学 (2022) 京都薬科大学 (2021) |
研究代表者 |
西藤 有希奈 京都大学, 生命科学研究科, 特定助教 (20867709)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2022年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 亜鉛 / 亜鉛輸送体 / 金属動態 / シャペロン / 老化 / 加齢性疾患 / 輸送体 |
研究開始時の研究の概要 |
亜鉛は生体に不可欠な必須微量金属元素であり、その欠乏は様々な疾患を引き起こす。特に、高齢者では血清亜鉛値が低下傾向にあり、これに伴い、認知機能の低下、大腸炎、肝疾患など全身性の症状が誘発される。一方で、加齢に伴う低亜鉛血症および関連疾患の発症に関与する分子や機序は不明あり、この問題に対して適切な対策はなされていない。本研究では、亜鉛の吸収や排出に過程に関与する亜鉛輸送体の発現と体内亜鉛動態の相関性に焦点を当て、加齢による亜鉛吸収・動態の破綻機構を解明することを目的とする。更に、この機序を標的とした亜鉛錯体を同定し、加齢に伴う低亜鉛血症および亜鉛欠乏に付随する加齢性疾患の予防・改善法を確立する。
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研究実績の概要 |
本年度は、消化管を介した亜鉛の吸収・動態制御機構の全容解明を目的とし以下の解析を行なった。 1)亜鉛吸収に関わる輸送体の発現と細胞内亜鉛動態の解析 亜鉛吸収に関与する輸送体ZIP4と亜鉛の排出に関わる輸送体ZNT1の発現の相関性および亜鉛動態との関連性をウエスタンブロット法および誘導結合プラズマ質量分析法 (ICP-MS)を用いて解析した。その結果、ZIP4の発現を誘導すると細胞内の亜鉛量が増加し、これに伴いZNT1の発現が上昇することを明らかとした。これらの発現制御によって、細胞内の亜鉛吸収がより効率的に行われることを示唆する新たな知見を得た。 2)細胞内亜鉛送達因子の探索 亜鉛の消化管吸収をより効率的に行うためは、吸収された亜鉛を効率的に細胞内送達するための亜鉛送達因子(亜鉛シャペロン)が存在すると考えられる。そこで本年度は、亜鉛シャペロン因子の候補となるタンパク質の探索を試みた。細胞内での亜鉛送達因子は、ZIP4により取り込まれた亜鉛の周辺に存在する可能性が高いと考えられる。そこで、遊離亜鉛イオンに応答し、周辺に存在するタンパク質をフルオレセイン(蛍光)標識することのできる、亜鉛コンディショナルプロテオミクス試薬(zinc-pro capture)を用い、ZIP4の発現誘導に応じて特異的に蛍光標識されるタンパク質の候補を探索した。具体的には、ZIP4を薬剤依存的に誘導させた株においてzinc-pro captureを処理し、周辺に存在するタンパク質を蛍光ラベル化し、細胞抽出液から、ZIP4誘導時にのみ蛍光標識化されるタンパク質を、抗フルオレセイン抗体を用いた免疫沈降により精製し、質量分析装置を用いて「亜鉛シャペロン因子」の候補の探索を試みた。その結果、ZIP4の発現誘導株のみで検出される幾つかの亜鉛シャペロンの候補となるタンパク質を見出した。この候補因子の機能について、今後より詳細な機能解析を行うことを計画している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度の解析では、亜鉛の吸収に寄与する亜鉛輸送体の発現と細胞内亜鉛動態の相関性について解析し、消化管における亜鉛の取り込み、排出、動態制御の分子メカニズムを統合的に理解するための基礎的知見を得ることができた。また、亜鉛の吸収に関与するシャペロン因子の候補も明らかにすることができた。一方で、候補因子が実際に亜鉛シャペロンとして機能するかについては、今後より詳細な機能解析が必要である。また、本研究で見出した亜鉛吸収制御機構がどの様にして破綻するかについても、今後の解析課題となるため、全体としてはやや遅れている状況にあると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
本年度見出した「亜鉛シャペロン」の候補因子が、実際に亜鉛の送達に関与するか詳細な解析を行う。具体的には、亜鉛の吸収に関与するZIP4との相互作用や、候補因子の欠損・過剰発現株による細胞内亜鉛動態の変化について解析することを計画している。これらの解析を通じて、亜鉛吸収過程のより詳細な機序を明らかとすることを目標とする。更に、見出した亜鉛吸収制御機構を標的とした亜鉛吸収促進因子をスクリーニングし、加齢性疾患に対する予防・改善効果をもたらすことのできる因子を見出すことを最終目標とする。
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