研究課題/領域番号 |
21K15265
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分47030:薬系衛生および生物化学関連
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
野依 修 立命館大学, 薬学部, 助教 (30737151)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2022年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2021年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | インフルエンザウイルス / ナノチューブ / 黄色ブドウ球菌 / 細胞間伝播 / 共感染 / 感染伝播 |
研究開始時の研究の概要 |
インフルエンザウイルス関連細菌性肺炎は、気道や肺へ細菌が共感染することに起因して高い致死率を示す。この原因を解明する目的の一環として、申請者は、ヒト肺胞上皮系細胞株A549 細胞にインフルエンザウイルスと黄色ブドウ球菌を共感染させ、その細胞形態を観察した結果、著しく多数の長いナノチューブが形成される事を見出した。このナノチューブ形成により、これら病原微生物が中和抗体や抗生物質を回避して感染拡大する可能性が考えられた。本課題では、インフルエンザウイルスと黄色ブドウ球菌の共感染によって形成誘導されたナノチューブの生物学的意義とその形成メカニズムを明らかにする。
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研究実績の概要 |
インフルエンザ患者が細菌に共感染した場合、肺炎の重症化が見られ、高い致死性を示す。その原因の一つとして、治療薬の効果減弱が挙げられるが、そのメカニズムについては不明な点が多い。インフルエンザウイルスに感染した肺胞基底上皮腺癌細胞A549では、オセルタミビル(ウイルス細胞外放出阻害薬)やインフルエンザウイルス中和抗体が存在する状況下においても、ナノチューブと呼ばれる細胞膜突起構造が形成され、その内部をウイルスが通過することで近接細胞へ感染が広がることが分かっている。そこで本課題では、インフルエンザウイルスと黄色ブドウ球菌の共感染時に、新たに形成されるナノチューブが、治療薬の存在下において、ウイルス粒子の細胞間移動にどの様に関わっているのか、さらにその制御策について検討した。 これまでにインフルエンザウイルス(PR8株)と黄色ブドウ球菌(RN4221株)に共感染したA549細胞では、PR8単独感染細胞と比較して、より多くのナノチューブが形成されることが分かった。ウイルスゲノムにegfp遺伝子を導入した遺伝子組換えインフルエンザウイルスと黄色ブドウ球菌に共感染した細胞と、非感染細胞の共培養実験から、共感染細胞で形成されたナノチューブはウイルス粒子を非感染細胞へ伝播している事が分かった。また、ナノチューブの主要な構成要素であるアクチンの重合を阻害するサイトカラシンD存在下においては、ナノチューブの形成が阻害され、ウイルス粒子あるいはウイルス蛋白質のナノチューブを介する非感染細胞への移動も有意に抑制されることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
インフルエンザウイルスと黄色ブドウ球菌の共感染細胞においてナノチューブが多数形成されることに加え、その内部をウイルス粒子あるいはウイルス蛋白質が通過している様子を観察することが出来た。さらにナノチューブの形成を阻害することで、ウイルス粒子の細胞間伝播効率が抑制される事までを見出すことが出来たため。
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今後の研究の推進方策 |
これまで、インフルエンザウイルスと黄色ブドウ球菌の共感染に注目して解析を行ってきた。インフルエンザ感者の肺炎重症例では、黄色ブドウ球菌以外に肺炎球菌やインフルエンザ菌等、他の菌種も多く検出されている。従って今後は、インフルエンザウイルスと黄色ブドウ球菌以外の菌種との共感染が、ナノチューブの形成とウイルスの細胞間伝播にどの様な影響を与えるのかを解析していきたい。
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