研究課題/領域番号 |
21K15272
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分47040:薬理学関連
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
笠原 由佳 九州大学, 医学研究院, 特任助教 (50838208)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | 発達期 / 神経細胞 / ミクログリア / 熱性けいれん |
研究開始時の研究の概要 |
乳幼児期の熱性けいれんは、神経回路変性を伴い、将来の脳機能障害やてんかんの発病に寄与すると示唆されている。しかし、神経回路変性に至る機序の詳細は不明であり、これをターゲットとした治療法は確立されていない。本研究ではミクログリア連関に着目し、組織化学的、遺伝学的、薬理学的手法を用いることで、熱性けいれんに伴う神経回路変性における分子細胞生物学的メカニズムの解明を目指す。
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研究実績の概要 |
小児期のけいれん性疾患の発症は、将来の脳機能障害やてんかんの発病に寄与することが示唆されている。こうした長期に及ぶ影響は、けいれん性疾患の発症に伴って生じる神経回路変性に起因すると考えられている。しかし、変性に至る機序の詳細は不明であり、これをターゲットとした治療法の確立は成されていない。 そこで、申請者は小児期のけいれん性疾患に伴う神経回路変性における分子細胞生物学的メカニズムを解明することを目的とし、研究を行ってきた。特に、けいれん性疾患において認められる、神経細胞の過剰興奮とミクログリアの活性化に着目し、これらの細胞連関の関与について検討する。In vitro及びin vivoモデルを相補的に使用し、組織化学的、遺伝学的、薬理学的手法を用いることで、「小児期のけいれん性疾患において過剰に興奮した神経細胞がミクログリアの活性化を誘起し、神経回路変性が生じる」という仮説を検証する。 申請者は、乳幼児期において特に発症率が高く、将来の脳機能への影響が懸念されている、小児てんかんに着眼した。乳幼児期のマウスにカイニン酸を投与し、てんかん重積状態を誘発し、小児てんかんを模倣した。このモデルマウスで成体期におけるけいれん感受性が増大すること、及び、不安様行動が増加することを発見し、乳幼児期の発作が将来の神経回路機能に影響を与える可能性を見出した。今後は不安様行動の制御に関与する扁桃体の神経回路の機能的もしくは構造的変化について検討し、その分子細胞生物学的メカニズムを追究する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請者は、乳幼児期のマウスにけいれん誘発剤であるカイニン酸を投与し、小児てんかんを模倣した。その後、成体期におけいて再度カイニン酸を投与したところ、より重篤な発作が生じること、すなわち、けいれん感受性が増大することを発見した。さらに、小児てんかんが脳機能に与える影響について詳細に調べるため、成体期において行動テストバッテリーを実施した。オープンフィールド試験、高架式十字迷路試験、物体位置認識試験、恐怖条件付け試験を行った。この結果、小児てんかんモデルマウスでは、高架式十字迷路試験においてオープンアームに対してクローズドアームでの滞在時間が延長することが明らかになった。このことから、小児てんかんにより、将来の不安様行動が増加すると示唆される。 扁桃体は、不安様行動の制御に深く関与する脳領域である。また、高頻度でてんかんの発生源(焦点)となることが報告されているため、申請者は、小児てんかんにより扁桃体の神経回が機能的もしくは構造的に変化するのではないかと考えた。免疫染色法により、扁桃体の基底外側核付近で神経細胞の過剰な活動が生じ、ミクログリアの活性化が生じる様子が認められた。 以上の結果が得られたことから、本研究計画は概ね順調に進行していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
小児てんかんモデルマウスでみられる情動行動について、より正確に評価するため、高架式十字迷路試験と同様に不安様行動について評価できる、明暗選択箱試験を追加で実施する。また、扁桃体の基底外側核付近で認められる神経細胞の過剰な活動、及び、ミクログリアの活性化に関して定量的に評価するため、現在入手している画像データを順次解析する。これらの結果から、小児てんかんにより扁桃体の神経回路が機能的もしくは構造的に変化すると考えられる場合、その根底にある分子細胞生物学的メカニズムを解明を目指す。具体的には、コントロールマウス及び小児てんかんモデルマウスから扁桃体を単離し、トランスクリプトーム解析を行う。
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