研究課題/領域番号 |
21K15297
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分47060:医療薬学関連
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研究機関 | 東京薬科大学 (2022) 熊本大学 (2021) |
研究代表者 |
白井 玲美奈 東京薬科大学, 生命科学部, 嘱託助教 (40870754)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | 血液脳関門 / ゴーシェ病 / 中枢神経機能 / iPS細胞 / 病態解析 / 神経機能 / 病態解明 |
研究開始時の研究の概要 |
ゴーシェ病は中枢神経症状を主とするが、酵素がBBBを通過できないため効果が乏しい。既存の動物BBBモデルではヒトBBBを反映しないため、有用な治療薬開発の足枷になっている。 本研究では、ヒト由来BBBモデルを構築し、ゴーシェ病における中枢神経機能の改善にアプローチする。 健常者由来iPS細胞をBBB構成細胞へ分化誘導し、健常BBBモデルと神経の機能評価系の構築を試みる。ゴーシェ病由来の疾患iPS細胞からBBBモデルを確立し、健常BBBと比較する。次に、健常細胞とゴーシェ病細胞でBBBにおける構成細胞の組み合わせ変更し、薬剤透過性の変化を解析する。さらに、ゴーシェ病由来の神経細胞とミクログリアを樹立し、中枢神経機能を解明する。
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研究実績の概要 |
ゴーシェ病は、β-グルコシダーゼ変異によりライソゾーム内のグリコセレブロシダーゼ活性が低下あるいは欠損することが病因である。その基質である糖脂質のグルコセレブロシドが、全身の組織に蓄積すると中枢神経障害を起こす難病であるが、根治療法はなく、主に酵素補充療法が用いられている。しかし、血液脳関門により酵素の通過が困難であるため、神経症状に対する効果は期待できない。 これまで開発された動物細胞によるin vitroの血液脳関門モデルは、血液脳関門トランスポータータンパク質発現量がヒトと動物で異なる、という難点がある。そこで本研究では、ヒト細胞から血液脳関門モデルを構築し、健常由来とゴーシェ病由来の比較による機能障害の解明を試みた。初年度では、まず、血液脳関門モデルを構築するため、ゴーシェ病由来iPS細胞から血管内皮細胞の誘導を行い、内皮細胞マーカーの発現を確認し、ライソゾームマーカーの発現を検討した。また、ゴーシェ病の中枢神経機能を解析するために、iPS細胞から神経細胞とミクログリアを誘導し、神経幹細胞マーカー、神経細胞マーカーの発現を検討した。さらに、生細胞測定試薬によって、細胞のviabilityについて検討した。 本年度では、ヒト初代培養神経細胞やペリサイトにおいて、CRISPER-CasRxを用いたβ-グルコシダーゼのノックダウンを行った。そのため、ヒトβ-グルコシダーゼのmRNA情報をNCBIからダウンロードし、CRISPER mRNAを設計した。mRNAの設計にはApEを用い、ガイドRNAを付加した2種類のCRISPER mRNAを作製した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
初年度では、健常者またはゴーシェ病由来iPS細胞から血管内皮細胞をそれぞれ1クローンずつ誘導した。iPS細胞を内皮細胞の4種類の誘導因子存在下で6日間培養し、内皮細胞マーカーポジティブな分画をソートした。蛍光免疫染色においても、内皮細胞マーカーの発現を確認したところ、その発現には差は見られなかった。次に、ライソゾームマーカーであるLysotrackerで蛍光染色し、その蛍光強度を測定したところ、ゴーシェ病由来血管内皮細胞は、健常者由来と比較して有意に減少していた。このとから、疾患細胞内におけるライソゾームの減少が示唆された。次に、iPS細胞から神経幹細胞を誘導し、神経細胞とミクログリアへの分化誘導を行った。ミクログリアはiPS細胞から胚様体の形成後、マクロファージ前駆細胞を経て、IL-4、GM-CSF存在下で誘導した。より成熟したミクログリアを維持するため、健常者由来神経細胞との共培養を試みた。得られたミクログリアにおける神経幹細胞マーカーや神経細胞マーカーの発現をqRT-PCRで検討したところ、健常者由来と比較してゴーシェ病由来ミクログリアではMAP2とTUJ1のmRNA発現が有意に増加していた。次に、WST-8アッセイによって細胞のviabilityを検討した。健常者由来と比較してゴーシェ病由来ミクログリアとの共存により、神経幹細胞の生存数が有意に減少していた。 本年度では、ヒト初代培養神経細胞またはペリサイトにおけるβ-グルコシダーゼのノックダウンを行った。まず、ヒトβ-グルコシダーゼのmRNA情報をNCBIからダウンロードし、CRISPER mRNAを設計した。mRNAの設計にはApEを用い、ガイドRNAを付加した2種類のCRISPER mRNAを作製した。
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今後の研究の推進方策 |
初年度は、3種類の血液脳関門構成細胞のうち、iPS細胞から血管内皮細胞の誘導に成功した。今年度は、ヒト初代培養神経細胞またはペリサイトのβ-グルコシダーゼをノックダウンするため、CRISPER mRNAを設計し、作製した。計画当初は、iPS細胞から血液脳関門構成細胞を誘導し、その機能解析を行う予定だったが、研究代表者の異動によりiPS細胞の使用が困難になったため急遽、ヒト初代培養細胞の使用に変更した。現在はヒト初代培養神経細胞、アストロサイト、ペリサイトそれぞれにCRISPER mRNAを導入し、β-グルコシダーゼの発現を確認している。最終年度の令和5年度は、β-グルコシダーゼ CRISPER mRNAを導入した血液脳関門構成細胞において、細胞マーカーの発現を確認する予定である。また、トランスウェルを用いた3種類の細胞の共培養により、ヒト血液脳関門モデルの構築を目指す。
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