研究課題/領域番号 |
21K15321
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分47060:医療薬学関連
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
黒澤 俊樹 帝京大学, 薬学部, 助教 (90839466)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 血液脳関門 / トランスポーター / ヒトiPS細胞 / 3次元培養 / MPS / Organ-on-a-chip / 有機カチオントランスポーター |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目的は、ヒト脳の微小環境を再現した三次元流体モデル(BBBマイクロチップ)を開発することである。この目的の達成に向け、①ヒトiPS細胞由来脳毛細血管内皮細胞(hiPS-BMECs)およびアストロサイト、ペリサイトを搭載した共培養BBBマイクロチップを構築し、②トランスポーターおよび受容体などの機能性膜タンパク質の発現解析および輸送機能の解析を実施する。さらに、③本BBBマイクロチップを用いた脳内薬物動態/薬力学(PK/PD)の解析と評価系の構築に取り組む。本研究は、新規中枢疾患治療薬の開発に有用な研究になることが期待される。
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研究実績の概要 |
本研究の目的はヒト脳の微小環境を模倣する3次元流体血液脳関門モデルを構築することである。血液脳関門(BBB)の機能解析は動物実験によって発展してきた一方で、ヒトBBBの機能は不明な点が多く存在する。そこで、新たなin vitro human BBBモデルであるヒトiPS細胞由来脳毛細血管内皮細胞(hiPS-BMECs)を用いた3次元流体BBBモデルの構築を目指した。 hiPS-BMECsは多様な輸送体が機能する一方で、薬物の脳内への侵入を防ぐP糖タンパク質(P-gp/MDR1)の機能が低いことが報告されている。この欠点はMIMETAS社OrganoPlate 3-lane Plateを用いた3次元流体培養においても改善されることはなかった。そこで、2022年度はMDR1遺伝子を導入したヒトiPS細胞を作製し、従来の分化誘導方法によりMDR1発現hiPS-BMECs(MDR1-BMECs)の開発を行った。MDR1-BMECsにおけるMDR1発現量は対照細胞であるcontrol-BMECsと比較しておよそ1000倍増加し、既知のMDR1基質薬物を用いた透過実験の結果、基質薬物の脳側からの排出方向の透過は逆方向を有意に上回っていたことから、MDR1による排出機能を獲得したことが示された。このMDR1の機能はOrganoPlate 3-lane Plateを用いた3次元流体モデルにおいても維持されることが明らかとなっている。今後、ヒト個体における脳内移行性との相関解析を行い、MDR1-BMECsの有用性について追究していきたい。 また、BBBにおいて塩基性薬物を脳内へ輸送するプロトン/有機カチオン(H+/OC)交換輸送体の関連分子としてTM7SF3およびLHFPL6の存在を報告した。次年度以降、これらタンパク質の機能について、hiPS-BMECsを用いた解析を進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度および2022年度の実験計画における進捗状況は、およそ70%まで達している。2022年度に計画されていた「アストロサイト・ペリサイト等のBBB周辺細胞を搭載した共培養3次元流体モデルの構築」も完了しており、諸学会にて報告した。2023年度に計画した「3次元流体モデルおよびヒトBBBにおける薬物透過性の相関解析」を実施する上でMDR1の機能を備えたhiPS-BMECsの開発は欠かせないことから、来年度の研究に向け順調に進んでいると考える。MDR1-BMECsを用いた研究成果については、国際誌への報告および国内外の学会発表にて発信する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は、「3次元流体モデルおよびヒトBBBにおける薬物透過性の相関解析」を主テーマとして研究を進める。「薬物透過性の相関解析」は、今年度開発したMDR1-BMECsを搭載した3次元流体モデルにおける薬物透過性とヒトCSFおよび血中濃度から算出した透過性を比較する。ヒト個体におけるPET試験の実施は困難であり、過去の報告も限られていることから、ヒトCSFを脳実質内の代替サンプルとして用いる。ヒトCSFおよび血液を用いた研究を実施する上で、帝京大学研究倫理委員会への申請・承認を受けて進めていく予定である。ヒト脳移行性との相関関係を明らかにし、中枢疾患治療薬の創薬に貢献できる実験モデルの証明に繋げていきたい。 また、2022年度に明らかにしたH+/OC交換輸送体の関連分子の機能および発現について、hiPS-BMECsを用いた解析を進める。これまでヒトBBBにおけるH+/OC交換輸送体の機能評価は細胞内への取り込みが主であった一方で、強力な密着結合能を特徴とするhiPS-BMECsを用いることで血液側と脳側を隔てた経細胞輸送評価に発展させることが可能である。さらに、関連分子のTM7SF3およびLHFPL6について、特異的抗体を用いた免疫染色法およびwestern blot法によりタンパク質発現の局在を明らかにし、2022年度に研究予定であった「輸送体タンパク質の発現局在解析」のテーマについても追究していく予定である。
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