研究課題/領域番号 |
21K15325
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分47060:医療薬学関連
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
小川 慶子 立命館大学, 薬学部, 助教 (20844278)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2021年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 漢方薬 / 補気剤 / データマイニング / 生薬 / 人参 / データ分析 |
研究開始時の研究の概要 |
昨今、漢方薬は頻繁に使用され、治療選択の幅を広げている。一方で、現代医学において漢方医学概念の理解は難しく、科学に基づく説明が求められる状況にある。人参等で構成される補気剤は漢方薬に特有の薬効であるが補気作用の実体は未解明である。本研究は、機器分析により補気剤の含有成分プロファイルを作成し、データマイニング手法を用いて漢方薬の作用(生物活性・証) との関連を検討することで、補気作用の実態を解明し、漢方医学的指標と西洋医学的指標の連結を行うことを目的とする。本研究により成分分析によるデータマイニングの観点から漢方薬の科学的エビデンス構築に貢献する。
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研究実績の概要 |
昨年度に引き続き、医薬品副作用データベース(JADER)を用いた補気剤の有効性の指標の作成を行った。これまでの研究で、補気剤を投与されたがん患者群と補気剤を投与されていないがん患者群ではがん種や既往歴などの患者背景に偏りがあるため、指標を作成する際には患者背景の偏りを最小化する必要があることが示唆されていた。本年度は、種々の条件にて傾向マッチング法、および完全マッチング法を適用することにより、患者背景の偏りを標準化したうえで補気剤の有効性評価を実施し、最適な条件を決定した。これにより、補気剤併用群では抗がん剤による食欲減退の発現割合が低下していることなどが明らかとなった。 上記に加え、レセプトデータベースを用いた補気剤の有効性評価にも着手した。これまで利用してきた副作用データベースは、薬剤を服用した全症例のうち副作用を発現した症例のみに限局されるためバイアスが見込まれる。そこで、薬剤を投与された人数の情報が得られるレセプトデータベースを用いて、抗がん剤による各副作用の発現率を検討することで、新たな有効性指標を作成できるのではないかと考えた。現段階で補中益気湯併用群では非併用群に対して赤血球減少症の発現割合が低いことなどを見出しており、この結果はこれまでの副作用データベースによる指標の正確性を裏付けるものである。 また、前年度までに作成した補気剤の成分プロファイルを用い、補気剤の有効性の指標との関連を解析することで、補気作用への各成分の寄与の検討を開始した。現段階においては、補気剤に含有される成分ピークと補気作用の有効性指標との間に有意かつ頑健性に優れた相関が得られておらず、引き続きさらなる検討を実施する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では、補気剤の有効性指標の確立、補気剤に含まれる成分プロファイルの作成、さらに作成した成分プロファイルと有効性指標の結び付けという大きく3種類の過程を遂行する必要がある。 補気剤の有効性の指標作成については、副作用データベースを利用したものがすでに完成しており順調に進んでいると考える。また、補気剤の含有成分プロファイルについても既に作成が完了している。しかし、補気剤の含有成分プロファイルと有効性指標の結び付けを行う段階において、現状では一貫性のある結果が得られていない。このことから、今後は含有成分プロファイルの表現方法の見直しや、相関を検討する際の手法の改変等を検討する必要があると考えている。以上のような理由により、研究の進捗状況はやや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
ここまでの進捗をふまえ、本年度は、①成分プロファイルの表現方法の見直し②レセプトデータベースを用いた補気剤の有効性指標の確立について進行したうえで、再度③成分プロファイルと有効性指標の相関を検討する。 成分プロファイルと有効性指標の相関の検討が困難になっているひとつの要因として、成分分析段階で検出された微量成分をどこまで加味するかにより結果が大きく影響を受ける問題がある。そこで本年度は、各補気剤に含まれる主要成分(ピーク)に的を絞り、まず主要成分の組み合わせと補気剤の有効性の関連を検討する。そのうえで、強い関連が見られた主要成分を対象に類似する成分ピークを特定、解析に加えることで、微量成分の情報も加味した解析を行う。 また、2023年度より着手したレセプトデータベースを用いた補気剤の有効性評価についても、本年度中に評価段階を終わらせ指標化を目指す。補気剤の併用有無による特定の症状の発現率の差を求めることで、補気剤の有効性を評価する。この際、各群で補気剤の併用有無以外の患者背景が類似となるよう、層別化もしくは傾向スコアによるマッチングを行う。得られた有効性の指標は、既に確立された指標と同様に成分プロファイルとの相関を解析する。 以上をもって補気剤の有効性を示す指標の作成および、有効性に寄与する成分の組み合わせを明らかにすることで、補気剤の作用の化学的解明を目指す。
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