研究課題/領域番号 |
21K15339
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分48020:生理学関連
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
北園 智弘 筑波大学, 国際統合睡眠医科学研究機構, 研究員 (40826517)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 睡眠 / 覚醒 / シグナル伝達 / キナーゼ / プロテオーム / シグナル伝達経路 |
研究開始時の研究の概要 |
「睡眠」はその普遍性に反して、生理的な意義や制御機構の大部分は未だ明らかになっていない。その中で、所属研究室での近年の研究から、新規睡眠制御分子SIK3をキーとする睡眠・覚醒を制御する細胞内シグナル伝達経路が存在することが示唆された。本研究では、SIK3を起点として、この経路の全容を明らかにすることで、睡眠・覚醒を制御する分子機構を明らかにする。SIK3の上流の解析では、SIK3の機能を制御しているキナーゼを特定し、これらのキナーゼの機能を補助するタンパク質の探索を行う。一方、SIK3の下流の解析では、先行研究において見出したSIK3下流因子の候補が、睡眠・覚醒制御に関与しているかを検証する。
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研究実績の概要 |
本研究では申請者が所属する研究室において近年発見された新規睡眠制御分子SIK3の上流、および、下流のシグナル伝達経路の全容を明らかにすることを目的としている。 昨年度までに、SIK3の上流制御因子セリンスレオニンキナーゼLKB1のノックアウトマウスがノンレム睡眠時間と睡眠要求の指標であるノンレム睡眠時デルタ波密度が減少することを明らかにした。さらに、この表現型は、LKB1ノックアウトマウスにおけるSIK3上のLKB1リン酸化部位に疑似リン酸化変異(グルタミン酸置換)を導入したマウスでは部分的に回復することも見出した。このことから、睡眠覚醒制御機構において、LKB1はSIK3の上流で機能していることが確かめられた。 SIK3はAMPKファミリーに所属するキナーゼであるが、このファミリーのキナーゼであるAMPKαは、LKB1以外にTAK1とCaMKKβという2種類のキナーゼに制御されていることが知られている。このことから、申請者はこれらのキナーゼもSIK3の上流因子として機能しているのかの検証を開始した。現在、解析中であるが、TAK1を全脳でノックアウトしたマウスについて、覚醒時間の延長が見られている。このことから、TAK1も睡眠・覚醒制御機構に関与している可能性がある。 さらに、昨年度までに基質スクリーニングとパスウェイ解析から、SIK3の下流で低分子量Gタンパク質RhoAが機能している可能性を見出していたが、当該年度はRhoAの恒常的活性型変異型を全脳で発現させたマウスにおいて、ノンレム時間とノンレム睡眠時デルタ波密度の減少することを見出した。このことから、RhoAがSIK3の下流で睡眠・覚醒を制御している可能性が高いことが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概ね計画通りに進展している。 前項に記載したように、睡眠覚醒制御機構において、LKB1がSIK3の上流で機能していることを、マウスの脳波・筋電図測定による睡眠測定によって示し、これをNature誌にて発表した(Staci, Kitazono, et al, Nature, 2022)。また、現在解析中であるものの、TAK1がSIK3の新規上流因子である可能性を見出し、さらに、RhoAがSIK3の下流で機能している可能性が高いことも明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
CaMKK2βとTAK1について、ノックアウトマウスの睡眠測定を行い、睡眠異常が見られた際には、これらのノックアウトマウスのSIK3について、リン酸化標的部位に疑似リン酸化変異を導入し、表現型が回復するかを検証する。SIK3が所属するAMPKファミリーのキナーゼであるAMPKαもSIK3と同様に睡眠・覚醒制御に関与していることが過去の先行研究から示されていることから、これらのキナーゼがSIK3でなく、AMPKαを介して、睡眠・覚醒を制御している可能性も考えられる。このことから、疑似リン酸化変異導入AMPKαを用いて、同様の解析を行う。また、ウイルスを用いた細胞種特異的、もしくは、脳領域特異的なノックアウトを行うことで、SIK3に端を発する睡眠覚醒制御機構を神経レベルでも解析する。 また、疑似リン酸化変異導入SIK3によるLKB1の表現型回復実験では、部分的な表現型の回復が見られた一方で、完全には表現型が回復しなかった。このことは、LKB1の下流ではSIK3以外にも他の因子が睡眠・覚醒を制御している可能性を示唆している。LKB1はAMPKファミリーのマスターキナーゼであることから、申請者はAMPKファミリーのキナーゼのいずれかがこの因子の実体ではないかと考えている。そこで、AMPKファミリーキナーゼのそれぞれについて、LKB1リン酸化部位に疑似リン酸化変異を導入した変異型タンパク質を、LKB1ノックアウトマウスの全脳で発現させ、睡眠測定によって、睡眠異常が回復するかを検証することによって、LKB1下流の新規睡眠制御分子を探索する。 また、昨年度までに実施したin vitro基質スクリーニングによって同定したRhoA関連因子について、キナーゼアッセイや生化学的手法、マウスの睡眠測定を行い、睡眠・覚醒制御機構において、SIK3とRhoAをつなぐ因子を探索する。
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