研究課題/領域番号 |
21K15343
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分48020:生理学関連
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
大屋 愛実 名古屋大学, 医学系研究科, 助教 (90777997)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | メラノコルチン / 肥満 / 加齢 / 摂食制御 / 代謝調節 / 生理学 |
研究開始時の研究の概要 |
人間を含む恒温動物は成長に伴い代謝型熱産生量を調節することで適切な体温調節が可能になるが、発達や加齢に応じた代謝調節のメカニズムは不明である。代謝調節の中枢神経システムにおいてはメラノコルチン系が重要な役割を担っており、4型メラノコルチン受容体 (MC4R)の異常は代謝量を減少させ、肥満につながる。本研究では、発達に応じて変化する代謝調節における、視床下部神経細胞のMC4Rの機能を生理学・組織学・遺伝学的手法によって調べる。
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研究実績の概要 |
恒温動物の代謝熱産生量は発達や加齢に伴い変化するが、その調節メカニズムについては未だに不明な点が多く残されている。これまでの研究で、エネルギー代謝機構の一つである褐色脂肪組織における熱産生が視床下部背内側部を介して調節されること、また視床下部背内側部に摂食や代謝の調節に関与する4型メラノコルチン受容体(MC4R)のmRNAが発現することが分かっている。そこで我々は、独自に作製した抗MC4R抗体を用いて、視床下部背内側部に発現するMC4Rの局在が発達や加齢に伴いどのように変化するかを調べることにした。 昨年度行った抗MC4R抗体による免疫組織染色の結果、MC4Rが視床下部背内側部の神経細胞の特定の細胞内構造に強く局在することを見出した。そして、MC4R局在細胞内構造が発達や加齢と共に変容することを明らかにした。 そこで今年度は、様々な栄養条件下で飼育したラットのサンプルを用いてMC4Rが局在する細胞内構造の発達や加齢に伴う変容を解析した。さらに、昨年度に行った実験ではMC4R遺伝子プロモーター下でCreを発現する遺伝子改変動物とアデノ随伴ウイルスを用いて、視床下部背内側部のMC4R発現神経細胞選択的にMC4Rが局在する細胞内構造を減少させた。その結果、MC4R局在細胞内構造を減少させた群ではコントロール群と比較して代謝量が減少することが分かった。また、体重と体脂肪率が増加して肥満傾向となることが分かった。また、今年度はMC4R発現神経細胞選択的にMC4R局在細胞内構造を減少させた際の褐色脂肪熱産生に及ぼす影響を調べるためin vivo生理実験を行い、褐色脂肪組織の交感神経活動、心拍数、血圧および呼気中二酸化炭素濃度の変化を解析した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度までの実験により、MC4Rが視床下部背内側部の神経細胞の特定の細胞内構造に強く局在することを見出した。さらに、MC4R局在細胞内構造が発達や加齢と共に変容することを明らかにした。今年度は様々な栄養条件下で長期飼育したサンプルについてさらに詳しい解析を行った。具体的には、摂餌制限機能付き摂餌量測定ケージを用いて、1) 通常餌・自由摂餌群、2) 高脂肪餌・自由摂餌群、3) 通常餌・摂餌制限群(自由摂餌群の60%に制限)に分けてラットを長期飼育し、視床下部背内側部のMC4R局在細胞内構造の週齢依存的な変容の違いを調べた。その結果、高脂肪食で飼育したサンプルは通常飼育したものよりも変容の速度が速いことが分かった。その反対に摂餌制限を行った群では加齢に伴う変容が抑制されることが分かった。 昨年度に行った実験において、MC4R遺伝子プロモーター下でCreを発現する遺伝子改変動物とアデノ随伴ウイルスを用いて、視床下部背内側部のMC4R発現神経細胞選択的にMC4Rが局在する細胞内構造を減少させたところ、代謝量が減少し肥満傾向を示すことを見出した。そこで今年度は細胞内構造を減少させることが褐色脂肪における熱産生にどのような影響を及ぼすかを直接調べるために、視床下部背内側部のMC4R発現神経細胞選択的にMC4Rが局在する細胞内構造を減少させた動物を作製してin vivo生理実験を行い、褐色脂肪における交感神経活動、心拍数、血圧および呼気中二酸化炭素濃度の変化を調べた。その結果、対照群においては視床下部背内側部へのMC4Rアゴニスト(メラノタン2)投与によって褐色脂肪熱産生が起こったのに対し、MC4R局在細胞内構造を減少させた群においてはメラノタン2投与による褐色脂肪熱産生が減弱した。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、発達・加齢に応じたMC4R局在細胞内構造の変容のメカニズムを解明するため、メラノコルチンシグナル伝達系を活性化あるいは抑制した際のMC4R局在細胞内構造の変容の観察を計画している。脂肪が蓄積すると脂肪細胞からレプチンが分泌される。レプチンは視床下部弓状核のPOMCニューロンに働きかけ、MC4Rの内因性アゴニストであるalpha-MSHを分泌させることでMC4Rを活性化する。そこで、レプチン受容体欠損ラットを用いることでレプチンーメラノコルチンシグナル伝達系を遮断した際にMC4Rが局在する細胞内構造がどのような変容を示すかを観察する。また、MC4RはGs共役型受容体なのでシグナルの下流にあるアデニル酸シクラーゼを恒常的に活性化した際のMC4R局在細胞内構造の変容も観察する。さらに、GsDREADDsを発現させて、MC4R発現神経細胞を選択的に活性化した際のMC4R局在細胞内構造の変容に及ぼす影響を調べる。 さらに、発達・加齢に応じたMC4R局在細胞内構造の変容に関わる遺伝子を探索するため、MC4R遺伝子プロモーター下でCreを発現する遺伝子改変動物とGFPレポーター動物を交配させてMC4R発現神経細胞をGFP標識し、GFP発現細胞からRNAを抽出してRNAシーケンシングにより網羅的な遺伝子発現解析を行う。様々な発達・加齢段階のサンプルを集め、MC4R局在細胞内構造と遺伝子発現プロファイルとを併せて多群間比較することで、MC4R局在細胞内構造の変容に関連する可能性の高い遺伝子を絞り込む。そして、候補遺伝子のノックダウンを行って代謝機能を解析することにより、MC4R局在細胞内構造の変容の分子メカニズムを明らかにする。
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