研究課題/領域番号 |
21K15349
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分48030:薬理学関連
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
稲垣 良 東北大学, 薬学研究科, 特任助教 (40887072)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | パーキンソン病 / KATPチャネル / アマンタジン / 脳・神経 / 薬理学 / CaMKII |
研究開始時の研究の概要 |
近年のパーキンソン病(PD)に対する産学の関心の高まりにもかかわらず、その根本的な治療法は未だ存在しない。本研究では、PDの病態発症・進行機序の要因としてKATPチャネルの機能低下の仮説のもと、KATPチャネル抑制作用を持つ治療薬amantadine、memantineならびにKATPチャネル欠損マウスを用いて、KATPチャネル制御機構に立脚したPDの脳糖尿病仮説の実証を目指す。
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研究実績の概要 |
本研究では、1) amantadineによるKir6.2チャネル閉口作用のメカニズム解明、2) パーキンソン病(PD)モデルマウスに対するamantadineを用いた行動薬理学的解析を行った。 1) 申請者は、既存のPD治療薬であるamantadineの新規作用機序として、KATP (Kir6.1/Kir6.2) チャネルの閉口を介した細胞内Ca2+濃度上昇による神経細胞の興奮性亢進作用を見出した。この結果を踏まえ、amantadineによるKir6.2チャネル閉口作用を介したCaM kinase IIの活性上昇のEC50が100uM前後であることを同定した。加えて、マウス線条体では、リン酸化CaM kinase IIαとドパミントランスポーターが相互作用していることを明らかとした。 2) 野生型ならびにKir6.2欠損マウスに対してドパミン神経の細胞死を誘導する神経毒 MPTPを投与し、運動機能に関する行動薬理解析 (Rotarod task、Beam walk task)を行った。この解析により、野生型マウスではMPTPによって惹起された運動機能障害が確認されたが、Kir6.2欠損マウスでは異常は認められなかった。併せて、MPTP処置した野生型マウスで確認された運動機能障害は、amantadineの投与によって改善することを確認した。in vivo microdialysis法では、線条体のシナプス間隙におけるドパミン基礎遊離量がMPTP処置した野生型マウスでは有意に低下していたが、amantadineの投与によって改善することを明らかとした。今後は、amantadineによるドパミン神経伝達の増強効果にKATPチャネル閉口作用が関与しているかを検証する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究では、amantadineによるKir6.2チャネル閉口を介したリン酸化CaM kinase II上昇作用を見出した。加えて、申請者はリン酸化CaM kinase IIαとドパミントランスポーターが相互作用していることを明らかとした。これらのことは、Kir6.2チャネル閉口作用による細胞内Ca2+濃度上昇によってドパミン神経伝達が制御されていることを示唆しており、今後amantadineによるパーキンソン病治療の薬効機序解明に繋がることが期待される。
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今後の研究の推進方策 |
上述の通り、申請者はamantadineによるKir6.2閉口作用がドパミン神経伝達に関与している可能性を見出した。今後は、amantadineによる細胞内Ca2+シグナル賦活化機構が寄与するドパミントランスポーターの制御機構について明らかにする。1. マイクロダイアリシス法を用いて、Kir6.2欠損マウスの線条体のシナプス間隙におけるドパミン量について測定する。2. Kir6.2過剰発現細胞を用いたamantadine添加時のドパミントランスポーターを介したドパミン取り込み作用について検討する。3. 免疫組織化学染色法を用いて、線条体ならびに黒質緻密部におけるKir6.2の局在について検討する。
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