研究課題/領域番号 |
21K15352
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分48030:薬理学関連
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研究機関 | 埼玉医科大学 |
研究代表者 |
山本 梓司 埼玉医科大学, 保健医療学部, 講師 (70823318)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2023年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 多発性硬化症 / クプリゾン / 脱髄 / 2ccPA |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、2ccPAの薬理学作用点を明らかとすることを目的とする。2ccPAは神経炎症抑制効果、自己免疫性脱髄の抑制効果、抗炎症性物質の減少を改善する効果を持つ安全性の高い物質である。2ccPAのもつこれらの効果は、多角的に神経炎症を抑制可能であることを示している。本研究で2ccPAの薬物作用点が明らかとなれば、MSをはじめとする多くの神経炎症性疾患への応用も可能になると考えている。将来的には、安全性試験、臨床試験をクリアし、根本的MS治療薬を開発することを最終目標として研究を遂行している。
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研究実績の概要 |
本研究は、多発性硬化症(MS)の治療薬開発を目指し、脱髄抑制効果やミエリン再生効果を持つ天然試料を探索、その有効成分から詳細なメカニズムを明らかとし、新規MS治療薬として応用することを目的としている。 MSは中枢神経系の神経軸索を取り巻くミエリンが破壊される「脱髄」を特徴とした指定難病である。本国の患者数は急激な増加傾向にあり、MS 治療法の開発は我が国の重要課題のひとつである。MS病態は通常、再発寛解型MSとして再発、寛解を繰り返し病態が進行するが、いずれ神経障害が改善することなく悪化し続ける進行型MSに移行し、生涯にわたって歩行障害や認知機能の低下が生じ、ベッド生活を余儀なくされる。現在承認されている疾患修飾薬は再発寛解型MSにおいて再発率を下げるが、進行性MSには効果が認めらない。そのため、脱髄の進行を抑制し、ミエリンを再生する根本的な治療薬が求められている。 クプリゾン(CPZ: cuprizone)誘導脱髄モデルマウスは、0.2%CPZ含有飼料でマウスを飼育することでオリゴデンドロサイト特異的細胞死による脱髄を誘導し、炎症性グリア細胞の増殖、運動機能障害を評価できるMSモデルとして広く用いられている。CPZ投与5週間後に最も脱髄が進行し6週間に自発的再ミエリン化、その後脱髄が進行するため。進行型MSおよび再発寛解型MSの両病態を反映したMSモデルである。 我々はCPZマウスに経口可能な天然試料を投与し、ロータロッドを用いた運動試験により運動機能障害の程度を評価、脳梁の病理切片を作成しミエリン染色によりミエリン量を評価、炎症性グリア細胞マーカーの蛋白質および遺伝子発現実験により神経炎症を評価し、天然試料のCPZに対する治療効果を検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
CPZ誘導脱髄モデルマウスを作製し、数種の天然試料をそれぞれ食餌に混ぜ経口により投与すると、ある甲殻類に脱髄進行抑制効果および運動障害改善効果が明らかとなった。特許申請のため甲殻類Aとする。他の甲殻類サンプルは甲殻類Aの近縁種であるがこれらの効果を示さなかった。つまり脱髄進行抑制効果は甲殻類Aに特異的な効果であった。また、質量分析計によるメタボローム解析により甲殻類に含まれる2442種類の代謝物の定量解析を行ったところ、甲殻類Aはある特徴的な数種類の極長鎖不飽和脂肪酸(ULC-PUFAs: ultra-long chain polyunsaturated fatty acids)が他種に比べ数十倍も豊富に含まれることが明らかとなった。ULC-PUFAsは炭素数30を超える脂肪酸で、生体成分としては微量であるが脳に多く存在し、ミエリンや神経などの生体膜の安定化に寄与している。甲殻類Aに含まれるULC-PUFAsをCPZモデルに単体投与したところ、1種のULC-PUFAsに顕著な脱髄抑制効果が見られた。我々が検出したこのULC-PUFAsが、脱髄抑制の要となる活性成分である可能性が高い。また、オリゴデンドロサイト細胞を用いたULC-PUFAs投与実験により、ミエリン量を増加させることを明らかとしている。従って、ULC-PUFAsは脱髄の進行を抑制するだけでなく、ミエリン再生効果を持つため、進行型および再発寛解型の全MS患者を対象とした治療が可能となる可能性が高い。 現在、ULC-PUFAsの再実験および代謝による影響について検討中である。
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今後の研究の推進方策 |
脱髄抑制効果が認められたULC-PUFAsは、ビタミン誘導体であることがわかっているが、研究者はビタミン単独投与において脱髄抑制活性が見られないことを明らかとしており、ULC-PUFAの薬理活性はビタミンに非依存的である。ULC-PUFAに代謝産物が脱髄にどのように影響するかを実験中である。 また、CPZモデルはCPZ餌の除去により再ミエリン化が生じるため、再ミエリン化の評価モデルとしても広く用いられている。CPZ5週間後にCPZ餌を除去し、ULC-PUFAsを1週間投与したマウスを作製し、行動試験、病理学的解析、生化学的解析を用いて再ミエリン化の評価を行う。マウス脳のリピドミクス解析を行い、ミエリン再生時の脂質の変動についても検討する。
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