研究課題/領域番号 |
21K15372
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分49010:病態医化学関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
吉永 正憲 京都大学, 医学研究科, 助教 (70878347)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | RNA修飾 / 赤芽球分化 |
研究開始時の研究の概要 |
近年RNA上に付加された修飾が転写後調節に重要な役割を果たすことが認識されるようになってきたが、赤芽球分化における役割には不明な点が多い。本研究では、申請者が独自に実施したCRISPRスクリーニングにより同定されたRNA修飾酵素の遺伝子改変マウスを解析することにより、赤芽球分化におけるRNA修飾の役割の解明を目指す。
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研究実績の概要 |
本研究は新規N6-methyladenosine(m6A)RNA修飾機構が赤芽球分化において果たす役割の解明を目的としている。昨年度の解析により、METTL16欠損赤芽球においてDNA損傷のマーカーである微小核が高頻度に観察され、DNA修復に関与する遺伝子の発現が著明に低下していることを見出した。そこで本年度は、DNA損傷の寄与についてより詳細に検討することにした。まずMETTL16欠損赤芽球においてDNA損傷を定量的に評価できるコメットアッセイを行い、これらの細胞においてDNA損傷が有意に増加していることを確認した。次に、METTL16欠損赤芽球においてRNA-seqを行ったところ、インターフェロン誘導性遺伝子(ISGs)の発現が増加していることを見出した。そこで次に、DNA損傷を認識しIFNの産生を誘導する自然免疫経路であるcGAS-STING経路の関与を検討するため、STINGおよびI型IFN受容体の欠損マウスと赤芽球特異的METTL16欠損マウスを交配させ、これらの二重欠損により赤芽球分化障害が改善するか検討した。この結果、STINGもしくはI型IFN受容体を欠損させてもMETTL16欠損赤芽球の分化異常は改善しないことが明らかになった。他方、METTL16欠損細胞ではcaspase-3の活性化や、caspaseにより分解を受けるGATA1の発現低下がみとめられたことから、METTL16欠損下でのDNA損傷はcaspaseの活性化を誘導することで赤芽球分化を阻害していることが示唆された。以上のことから、METTL16はDNA修復に関する遺伝子の発現を正に調節することで、ゲノム安定性を維持し赤芽球分化を可能にする因子であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
赤芽球特異的METTL16欠損マウスを解析し、METTL16を欠損した赤芽球におけるDNA損傷が赤芽球分化を阻害するメカニズムを詳細に明らかにすることができた。またこれまでの研究成果をまとめ、赤芽球におけるMETTL16の機能について英文学術誌に報告した(Yoshinaga et al., Nat Commun. 2022)。このように、本研究はおおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は生体でのMETTL16欠損により引き起こされる機能異常について、DNA損傷や分化障害の観点からより多角的に解析を進める予定である。
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