研究課題/領域番号 |
21K15375
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分49010:病態医化学関連
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
牧野 舞 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (10736870)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | リアノジン受容体 / 選択的スプライシング / カルシウムシグナル / 心筋 / 膵β細胞 |
研究開始時の研究の概要 |
主に心筋細胞で発現する2型リアノジン受容体(RyR2)にはexon 75領域の有無という組織特異的スプライシングバリアントが存在する。Exon 75欠失型(膵β細胞型)RyR2を発現する膵β細胞においてゲノム編集技術によりexon 75含有型(心筋型)RyR2を発現させるとインスリン生合成機構が著しく低下することをこれまでに見出した。本研究では,同様の手法を用いてexon 75欠失型(膵β細胞型)RyR2を発現する心筋細胞及びマウスを作製し,RyR2の発現型の変化が心筋機能にどのような影響を及ぼすか検証し,RyR2の組織特異的選択的スプライシングバリアントの存在意義を明らかにする。
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研究実績の概要 |
リアノジン受容体(RyR)は小胞体内腔から細胞質へのCa2+の放出を担うCa2+チャネルであり,主に心筋細胞で発現する2型RyR(RyR2)にはexon 75領域を含む「心筋型」とexon 75領域を欠く「膵β細胞型」という組織特異的選択的スプライシングバリアントが存在する。これはRyR2遺伝子のintron 75のスプライシング開始配列(スプライスドナー配列)が通常の「gt」ではなく「gg」であることに起因すると考えられた。これまでの研究(2019~2020年度若手研究)で,膵β細胞型RyR2を発現する膵β細胞においてCRISPR/Cas9ゲノム編集技術によりスプライスドナー配列を「gt」へ変異させ心筋型RyR2を発現させるとインスリン生合成機能の顕著な低下がみられることを見出した。本研究では,RyR2のスプライス型(発現型)の変化が心機能へどのような影響を及ぼすのかを調べ,RyR2の組織特異的スプライシングバリアントの存在意義の解明を目指す。 CRISPR/Cas9を用いRyR2 intron 75のスプライスドナー配列を「gt」に変異させたホモ改変マウスでは,野生型マウスと比較し生育状態や心臓の組織像に顕著な差はみられなかったが,単離膵島に対するグルコース刺激実験ではホモ改変マウス由来膵島で高グルコース添加によるインスリン分泌量の増加が見られない結果となった。次に,両遺伝子型マウスに対し腹腔内グルコース負荷試験を行い,血糖値及び血清インスリン量を測定した結果,血糖値の経時変化に差はなかったが,負荷後60分以降の血清インスリン量がホモ改変マウスでわずかに高値を示した。これらの結果より,ホモ改変マウスの膵島ではRyR2を介し小胞体から動員されるCa2+が関与するグルコース応答性やインスリンの分泌機能に異常が生じている可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
野生型及びホモ改変マウスの確保のための繁殖が進まず,in vivoでのグルコース負荷試験などの機能評価実験で必要な雄マウスの個体数が確保できないため,全体の実験の行程に遅延が生じている。この影響で,学術論文として発表するための実験データの収集に時間を要している。
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今後の研究の推進方策 |
前年度までの結果で野生型マウスとゲノム改変マウスとでは生育状態や心臓の組織像に顕著な差は認められなかったため,スプライス型の変化の影響をより広く検証するためにRyR2を介したCa2+シグナルにより惹起される機能のうちインスリン分泌能について,単離膵島を用いたグルコース刺激実験や腹腔内グルコース負荷試験などを実施し検証を進めてきた。今後は統計学的解析を行うために必要な個体数を確保しさらにin vivoの実験を実施し,得られた成果をまとめ,学術論文として発表することを予定している。
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