細胞表面タンパク質の網羅的解析を基盤とした卵巣がん新規診断・治療標的の同定

• 研究課題/領域番号: 21K15386
• 研究種目: 若手研究
• 配分区分: 基金
• 審査区分: 小区分49020:人体病理学関連
• 研究機関: 福島県立医科大学
• 研究代表者: 小林 信 福島県立医科大学, 医学部, 助教 (60761947)
• 研究期間 (年度): 2021-04-01 – 2023-03-31
• 研究課題ステータス: 完了 (2022年度)
• 配分額: 4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円); 2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円); 2021年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
• キーワード: 卵巣癌 / 予後マーカー / 細胞表面タンパク質 / プロテオミクス / バイオマーカー / 卵巣がん

研究開始時の研究の概要

卵巣がん特異的に発現する表面タンパク質をプロテオミクスにより網羅的に同定する。その中から正常組織における発現が殆どなく、かつ詳細未解明のタンパク質に着目し、細胞外ドメインや翻訳後修飾を特異的に認識する抗体を開発する。続いて、卵巣がん患者の手術検体を用いて候補分子の診断・予後マーカーとしての有用性を検証する。最後に培養卵巣がん細胞株と卵巣がんオルガノイドにおける貪食能を評価し、抗体薬物複合体を用いた新規治療標的としての可能性を検討する。以上のように、表面タンパク質の網羅的同定を出発点として、その組織診断や治療標的としての有用性を明らかにすることにより、卵巣がんの革新的な診断・治療戦略を推進する。

研究成果の概要

卵巣漿液性癌の細胞表面に発現するタンパク質を約9000個同定した。その中から卵巣癌の細胞表面タンパク質シグニチャーを構成する31個の分子群を絞り込み、卵巣がんに突出して高発現するSpondin-1 (SPON1)に着目した研究を展開した。まず特異抗体を作製し、卵巣がん外科切除標本を免疫染色したところ、SPON1の発現は様々な臨床病理学的因子と正に相関し、卵巣癌の独立した予後因子であることを明らかにした。さらに卵巣癌細胞株の培養上清や腹水における分泌も確認し、SPON1は卵巣がんの予後マーカーのみならず血清診断マーカーとしても有用であることを明らかにした。

研究成果の学術的意義や社会的意義

細胞表面タンパク質は、がんの診断・治療標的候補として有望な分子群が濃縮されていると考えられる。しかしながら、実際に卵巣癌細胞の表面に発現するタンパク質を詳細に解析した報告は少ない。本研究で着目したSPON1は、自身が組織診断・予後マーカー、血清診断マーカー、治療標的としての可能性を持つ。従って本研究で確立した細胞表面タンパク質の網羅的同定法は、卵巣癌の新規バイオマーカーの獲得法として有用である。また我々が絞り込んだ他の分子群についても同様に卵巣癌の新規バイオマーカーや治療標的としての有用性が示唆され、卵巣癌の予後延長に寄与できることが期待される。

研究成果

• [雑誌論文] A Comprehensive Search of Non-Canonical Proteins in Non-Small Cell Lung Cancer and Their Impact on the Immune Response (2022)
  • 著者名/発表者名: rajizad E, Fahrmann JF, Long JP, Vykoukal J, Kobayashi M, Capello M, Yu CY, Cai Y, Hsiao FC, Patel N, Park S, Peng Q, Dennison JB, Kato T, Tai MC, Taguchi A, Kadara H, Wistuba II, Katayama H, Do KA, Hanash SM, Ostrin EJ.
  • 雑誌名: International Journal of Molecular Sciences 巻: 23 号: 16 ページ: 8933-8933
  • DOI: 10.3390/ijms23168933
  • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
• [雑誌論文] Novel UHRF1-MYC Axis in Acute Lymphoblastic Leukemia (2022)
  • 著者名/発表者名: Park S, Sater AHA, Fahrmann JF, Irajizad E, Cai Y, Katayama H, Vykoukal J, Kobayashi M, Dennison JB, Garcia-Manero G, Mullighan CG, Gu Z, Konopleva M, Hanash S
  • 雑誌名: Cancers 巻: 14 号: 17 ページ: 4262-4262
  • DOI: 10.3390/cancers14174262
  • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
• [雑誌論文] Claudin-9 is a novel prognostic biomarker for endometrial cancer (2022)
  • 著者名/発表者名: Endo Yuta、Sugimoto Kotaro、Kobayashi Makoto、Kobayashi Yasuyuki、Kojima Manabu、Furukawa Shigenori、Soeda Shu、Watanabe Takafumi、Higashi Atsuko、Higashi Tomohito、Hashimoto Yuko、Fujimori Keiya、Chiba Hideki
  • 雑誌名: International Journal of Oncology 巻: 61 号: 5 ページ: 135-135
  • DOI: 10.3892/ijo.2022.5425
  • 査読あり / オープンアクセス
• [雑誌論文] がん自己抗体研究の軌跡 (2022)
  • 著者名/発表者名: 小林 信、杉本 幸太郎、千葉 英樹
  • 雑誌名: 電気泳動 巻: 66
  • 査読あり
• [雑誌論文] YAP1 mediates gastric adenocarcinoma peritoneal metastases that are attenuated by YAP1 inhibition (2021)
  • 著者名/発表者名: Ajani JA, Xu Y, Huo L, Wang R, Li Y, Wang Y, Pizzi MP, Scott A, Harada K, Ma L, Yao X, Jin J, Zhao W, Dong X, Badgwell BD, Shanbhag N, Tatlonghari G, Estrella JS, Roy-Chowdhuri S, Kobayashi M, Vykoukal JV, Hanash SM, Calin GA, Peng G, Lee JS, Johnson RL, Wang Z, Wang L, Song S
  • 雑誌名: Gut 巻: 70 号: 1 ページ: 55-66
  • DOI: 10.1136/gutjnl-2019-319748
  • 査読あり / 国際共著
• [雑誌論文] A MYC-driven plasma polyamine signature for early detection 2 of ovarian cancer (2021)
  • 著者名/発表者名: Fahrmann JF, Irajizad E, Kobayashi M, Vykoukal JV, Dennison JB, Murage E, Wu R, Long JP, Do K-A, Celestino J, Lu KH, Lu Z, Bast RC, Hanash SM
  • 雑誌名: Cancers 巻: 13 号: 4 ページ: 913-913
  • DOI: 10.3390/cancers13040913
  • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
• [雑誌論文] Aberrant Claudin-6?Adhesion Signaling Promotes Endometrial Cancer Progression via Estrogen Receptor α (2021)
  • 著者名/発表者名: Kojima Manabu、Sugimoto Kotaro、Kobayashi Makoto、Ichikawa-Tomikawa Naoki、Kashiwagi Korehito、Watanabe Takafumi、Soeda Shu、Fujimori Keiya、Chiba Hideki
  • 雑誌名: Molecular Cancer Research 巻: 19 号: 7 ページ: 1208-1220
  • DOI: 10.1158/1541-7786.mcr-20-0835
  • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
• [雑誌論文] Reduced Claudin-12 Expression Predicts Poor Prognosis in Cervical Cancer (2021)
  • 著者名/発表者名: Rahman Abidur、Kobayashi Makoto、Sugimoto Kotaro、Endo Yuta、Kojima Manabu、Furukawa Shigenori、Watanabe Takafumi、Soeda Shu、Hashimoto Yuko、Fujimori Keiya、Chiba Hideki
  • 雑誌名: International Journal of Molecular Sciences 巻: 22 号: 7 ページ: 3774-3774
  • DOI: 10.3390/ijms22073774
  • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
• [雑誌論文] Protein citrullination as a source of cancer neoantigens (2021)
  • 著者名/発表者名: Katayama H, Kobayashi M, Irajizad E, Patel N, Mao X, Rusling L, Vykoukal J, Cai Y, Hsiao F, Yu CY, Long J, Liu J, Esteva F, Fahrmann J, Hanash S
  • 雑誌名: Journal for ImmunoTherapy of Cancer 巻: 9 号: 6 ページ: e002549-e002549
  • DOI: 10.1136/jitc-2021-002549
  • 査読あり / 国際共著
• [学会発表] 卵巣癌に起因する細胞表面タンパク質シグネチャーの同定 (2022)
  • 著者名/発表者名: 小林 信, 杉本 幸太郎, 遠藤 雄大, 宮川 諒也, 瓜生 開, 田口 歩, 千葉 英樹
  • 学会等名: 第111回日本病理学会総会
• [学会発表] 卵巣癌新規診断マーカーとしてのClaudin-12 (2022)
  • 著者名/発表者名: 瓜生 開, 杉本 幸太郎, 遠藤 雄大, 小林 信, 千葉 英樹
  • 学会等名: 第111回日本病理学会総会
• [学会発表] Spondin-1は新規卵巣癌予後マーカーとして有用である (2022)
  • 著者名/発表者名: 宮川諒也、小林信、杉本幸太郎、千葉英樹
  • 学会等名: 第111回日本病理学会総会
• [学会発表] 腎細胞癌におけるClaudin-10の臨床病理学的・分子病理学的解析 (2022)
  • 著者名/発表者名: 小名木彰史、杉本 幸太郎、小林信、小島祥敬、千葉英樹
  • 学会等名: 第111回日本病理学会総会
• [学会発表] Surfaceome解析を基盤とした卵巣癌細胞表面タンパク質シグネチャーの同定 (2022)
  • 著者名/発表者名: 小林 信、杉本 幸太郎、宮川 諒也、瓜生 開、遠藤 雄大、小林 靖幸、田口 歩、千葉 英樹
  • 学会等名: 日本プロテオーム学会2022年大会
• [学会発表] 卵巣癌患者腹水中に含まれる新規自己抗体群の同定 (2022)
  • 著者名/発表者名: 瓜生 開、小林 信、杉本 幸太郎、遠藤 雄大、千葉 英樹
  • 学会等名: 日本プロテオーム学会2022年大会
• [学会発表] 卵巣癌の新規バイオマーカーとしてのSpondin-1 (2022)
  • 著者名/発表者名: 小林 信、杉本 幸太郎、宮川 諒也、瓜生 開、遠藤 雄大、小林 靖幸、田口 歩、千葉 英樹
  • 学会等名: 第68回日本病理学会秋季特別総会
• [学会発表] 免疫グロブリンサブタイプに着目した卵巣癌患者腹水中自己抗体の網羅的同定 (2022)
  • 著者名/発表者名: 瓜生 開、小林 信、杉本 幸太郎、遠藤 雄大、千葉 英樹
  • 学会等名: 第68回日本病理学会秋季特別総会
• [学会発表] 細胞間接着分子クローディン-16の新規卵巣癌診断マーカーとしての可能性 (2022)
  • 著者名/発表者名: 茂村 碧、小林 信、杉本 幸太郎、瓜生 開、遠藤 雄大、千葉 英樹
  • 学会等名: 第68回日本病理学会秋季特別総会
• [学会発表] 細胞表面タンパク質解析を基盤とした卵巣癌の新規診断・治療標的の網羅的同定 (2021)
  • 著者名/発表者名: 小林 信, 杉本 幸太郎, 千葉 英樹
  • 学会等名: 第110回日本病理学会総会
• [学会発表] Spondin-1の新規卵巣癌診断マーカーとしての有用性 (2021)
  • 著者名/発表者名: 宮川 諒也，小林 信，杉本 幸太郎，千葉 英樹
  • 学会等名: 第110回日本病理学会総会
• [学会発表] Claudin-12, a new biomarker for cervical cancer (2021)
  • 著者名/発表者名: Abidur Rahman, 杉本 幸太郎, 小林 信, 遠藤 雄大, 小島 学, 千葉 英樹
  • 学会等名: 第110回日本病理学会総会
• [学会発表] Surfaceome解析と自己抗体解析を駆使した卵巣がん新規診断マーカーの獲得 (2021)
  • 著者名/発表者名: 小林 信
  • 学会等名: 第18回北里疾患プロテオーム研究会
• [学会発表] Reduced Claudin-12 Expression Predicts Poor Prognosis in Cervical Cancer (2021)
  • 著者名/発表者名: Abidur Rahman, 小林 信, 杉本 幸太郎, 遠藤 雄大, 小島 学, 古川 茂, 渡辺 尚文, 添田 周, 藤森 敬也、千葉 英樹
  • 学会等名: 令和3年度福島県立医科大学サマーポスター
• [学会発表] がん創薬を目指した核内受容体新規リン酸化部位に対する単クローン性抗体の樹立 (2021)
  • 著者名/発表者名: 西間木 淳，杉本 幸太郎，小林 信，小船戸 康英，月田 茂之，渡邊 淳一郎，佐藤 直哉，石亀 輝英，岡田 良，木村 隆，見城 明 ，千葉 英樹，丸橋 繁
  • 学会等名: 令和3年度福島県立医科大学サマーポスター
• [学会発表] Auto-immunomicsを基盤としたがん患者血清中自己抗体の網羅的探索 (2021)
  • 著者名/発表者名: 小林 信、片山 博之、杉本 幸太郎、千葉 英樹
  • 学会等名: 第72 回日本電気泳動学会総会
• [学会発表] Claudin-9は子宮体がんの新規予後マーカーである (2021)
  • 著者名/発表者名: 遠藤 雄大，杉本 幸太郎，Abidur Rahman ，小林 信 ，千葉 英樹
  • 学会等名: 第72 回日本電気泳動学会総会
• [学会発表] 卵巣がんにおけるSpondin-1タンパク質の発現解析 (2021)
  • 著者名/発表者名: 宮川 諒也，小林 信，杉本 幸太郎，千葉 英樹
  • 学会等名: 第72 回日本電気泳動学会総会
• [学会発表] Surfaceome profiling of ovarian cancer ascites tumor cells for personalized immunotherapy (2021)
  • 著者名/発表者名: 小林 信, Hiroyuki Katayama, Johannes F. Fahrmann, Ehsan Iradizad, Xiangying Mao, Jody V. Vykoukal, Chuan-Yih Yu, Yining Cai, 杉本 幸太郎, 千葉 英樹, Joseph Celestino, Jinsong Liu, Karen H. Lu, Samir M. Hanash
  • 学会等名: 日本プロテオーム学会2021年大会
• [学会発表] Surfaceome profiling of ovarian cancer ascites tumor cells for personalized immunotherapy (2021)
  • 著者名/発表者名: 小林 信, Hiroyuki Katayama, Johannes F. Fahrmann, Ehsan Iradizad, Xiangying Mao, Jody V. Vykoukal, Chuan-Yih Yu, Yining Cai, Joseph Celestino, Jinsong Liu, Karen H. Lu, Samir M. Hanash
  • 学会等名: 10th Asia Oceania Human Proteome Organization Conference
  • 国際学会
• [学会発表] Claudin-9は子宮体がんの新規予後マーカーである (2021)
  • 著者名/発表者名: 遠藤 雄大、小林 信、杉本 幸太郎、添田 周、渡辺 尚文、藤森 敬也、千葉 英樹
  • 学会等名: 令和3年度福島県立医科大学ウインターポスター