研究課題/領域番号 |
21K15390
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分49020:人体病理学関連
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
上野 彰久 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 助教 (80348755)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 肝細胞癌 / 脈管侵襲 / 腫瘍栓 |
研究開始時の研究の概要 |
肝細胞癌における腫瘍栓形成性脈管侵襲のメカニズムの解明するため,同じく腫瘍栓形成性脈管侵襲を示す腎細胞癌との類似性や,血管内皮細胞の分子マーカー発現との関連を検討するため,以下の検討を行う. ①公開データベースを用いた網羅的mRNA発現解析,および肝細胞癌切除検体の凍結保存検体を用いたmRNA発現の網羅的解析.②蛍光多重免疫染色,in situ hybridizationなどを用いた局在発現解析.③肝細胞癌細胞株と類洞内皮細胞共培養による機能解析.④背景肝疾患や腫瘍マーカー,画像所見,術後再発・生存などの臨床情報との相関解析.
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研究実績の概要 |
肝細胞癌が腫瘍栓形成性の脈管侵襲を来す機序を解明するため,前年までに,TCGA databaseを用いて,腫瘍栓形成性の脈管侵襲と関連が深いと考えられる,macrovascular invasionを有する肝細胞癌における遺伝子異常,分子異常に関して検討を行い,これらにおいて,TP53, CTNNB1といった,多くの肝細胞癌において認められる遺伝子異常の頻度が低いという事とともに,分子発現においては,EPOなどの発現が有意に高く, GLYAT, GLYATL1, HAO2などの発現が有意に低いことを見いだした.また,当院における手術検体の病理組織標本において,脈管侵襲を肉眼的に同定可能なものと,組織学的にのみ同定可能なものとに分けて検討を行ったところ,腫瘍栓形成性脈管侵襲とより関連が深いと考えられる前者において予後が悪い事も見いだした. また,これまでに,当院における2001年から2020年までの原発性肝細胞癌345症例388結節について,背景肝疾患との関連や臨床病理学的因子,予後との関連について検討を行って,非ウイルス性肝疾患由来の発癌や,非硬変肝由来の発癌が経時的に増加していること,硬化型や脂肪性肝炎型といった肝細胞癌の組織亜型が増加傾向にある事,脈管侵襲と関連する組織亜型であるmacrotrabecular massive HCCが予後不良である事,などを見いだし,学会発表を行い(Tsuzaki J, Ueno A, et al. 第82回 日本医学放射線学会総会 2023年),現在論文投稿中である. さらに,肝細胞癌における脈管侵襲と強い関連を示す組織像である,vessels encapsulating tumor clusters(VETC) patternと,Gd-EOB-DTPA造影MRI(EOB-MRI)との関連についての検討も行い,VETC patternを有する肝細胞癌がEOB-MRI画像において,不均一性な信号を示す事を見いだし,こちらについても2024年度に学会発表を行うとともに,現在論文を投稿中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度までの研究により,公開データベースを用いた検討や,臨床・画像・病理組織データなどについての解析を行う事はできたが,今年度も臨床業務に割く時間が多くなってしまったため,予定していたmRNAを用いたRT-PCRでの検討が遅れてしまっている.
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今後の研究の推進方策 |
現在までに,公開データベースでの解析や,臨床病理学的な因子の抽出,EPOなどの一部の免疫染色標本作製は完了しているため,当院検体でのmRNAを用いたRT-PCRのデータ抽出や,血管内皮細胞の分子発現などの追加免疫染色などを行って,これらのデータを併せて解析を行って,学会発表や論文作成を目指す予定である. また,現在投稿中の論文についても,並行して随時進める予定である.
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