研究課題/領域番号 |
21K15402
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分49020:人体病理学関連
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
黒濱 大和 長崎大学, 原爆後障害医療研究所, 助教 (20648109)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2023年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2022年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2021年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 甲状腺 / 結節内結節 / 早期癌 / 網羅的遺伝子解析 / 53BP1 / 濾胞性腫瘍 / 被膜 |
研究開始時の研究の概要 |
被膜のない甲状腺濾胞性病変の腫瘍性性格は明らかでないが、これには理論的に早期の濾胞癌や低分化癌が含まれうる。研究代表者らはDNA損傷応答分子である53BP1が各種臓器で普遍的な腫瘍の性質であるゲノム不安定性のマーカーとして機能することを報告してきた。本研究では濾胞性病変の内部に被膜を欠いた「結節内結節」を有する病変に着目し、内外の結節の53BP1発現を含めた分子病理学的特徴を比較解析するという方法を用い、被膜のない濾胞性病変の病理学的意義を明らかにする。本研究は腺腫内癌など現在の甲状腺病理診断基準では想定されない新たな概念の確立や、濾胞性病変の発生機構、悪性化の解明につながることが期待される。
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研究実績の概要 |
低分化型の結節内結節を有する被膜のない甲状腺濾胞性結節(Thyroid follicular-patterned tumor with nodule in nodule appearance; TFT-NN)(16例)を収集した。比較対照として濾胞腺腫(30例)、結節性甲状腺腫(31例)、微少浸潤型濾胞癌(15例)、広範浸潤型濾胞癌(11例)を収集した。 蛍光抗体法による53BP1およびKi-67の発現検討:TFT-NNの低分化結節成分での異常型53BP1発現およびKi-67の発現頻度は、濾胞腺腫や結節性甲状腺腫よりも有意に高く、濾胞癌と同程度であった。またTFT-NNの低分化結節成分では、53BP1異常発現とKi-67の共発現率はそれ以外の領域に比較して有意に高かった。 RAS変異解析、TERTプロモーター変異解析:TFT-NNの低分化結節成分では、高頻度にNRASエクソン3変異が認められた。またTERT-p変異の発生率は濾胞癌と同程度であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
症例の集積数および53BP1, Ki-67による免疫染色による解析を予定通り施行し、TFT-NNにみられる低分化結節成分が生物学的に悪性ポテンシャルを有していることを示すことができた。次世代シーケンサーによる遺伝子変異解析計画をターゲットシーケンス(RAS, TERT-p)による解析に変更したが、TFT-NNにみられる低分化結節成分におけるこれらの遺伝子変異頻度は濾胞癌と同程度であることを示すことが可能であった。
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今後の研究の推進方策 |
本研究でTFT-NNの内部結節は濾胞癌と同程度の生物学的悪性ポテンシャルを有していることが判明した。次の段階として、TFT-NNの内部結節はde novoに出現するのか、外部結節を母地とし遺伝学的連続性を有しているのかが学術的疑問としてあがる。後者とすれば外部結節(TFT)はprecancerousな段階にある病変と位置付けられることになる。今後上記課題を解決するため、次世代シーケンサーによりTFT-NNの内部結節、外部結節の遺伝学的連続性を解析予定である(令和6-8年度科研費若手研究24K18402:甲状腺前がん病変ならびに早期低分化癌・未分化癌を定義するための分子病理学的研究)。
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