研究課題/領域番号 |
21K15467
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分49070:免疫学関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
城 憲秀 京都大学, 医学研究科, 特定助教 (50849552)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | T細胞 / 恒常性増殖 / 生体外トランスポーター / MDR1 / 胸腺退縮 / 生体外物質トランスポーター |
研究開始時の研究の概要 |
胸腺退縮に伴って新たなT細胞産生は低下するが、末梢T細胞は「恒常性増殖」という機構により緩徐に細胞分裂することで生涯にわたり絶対数を維持する。この機構は、長期間にわたるT細胞の維持という点において有利である一方で、加齢変化を蓄積させてT細胞老化を引き起こすという相反する問題を抱える。申請者は、胸腺摘出によって恒常性増殖を促進させた若齢マウスのナイーブCD4陽性T細胞が、生体外物質トランスポーターであるMDR1を高発現し、有害物質を細胞外に排出することを見出した。本研究では、①恒常性増殖においてMDR1が果たす役割、及び②その破綻がT細胞老化や加齢関連疾患に与える影響を解明することを目的とする。
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研究実績の概要 |
申請者は、胸腺摘出マウス(ATx)のT細胞において輸送膜タンパクであるMDR1が高発現し、機能的にも生体外物質を細胞外に排出しているという予備的実験結果をもとに、「MDR1が有害物質を細胞外に排出することで、胸腺退縮後の末梢性T細胞の生存延長・恒常性増殖促進に寄与している」という仮説を立てた。しかし、T細胞の恒常性増殖に作用するIL-7やIL-15を添加したin vitro培養や生体マウスの胸腺摘出後において、MDR1 KOマウス由来T細胞の生存率低下は認められなかった。MDR1阻害剤のベラパミルをATxマウスに投与する実験も行ったが、全身性副作用のために投与群で著しい体重減少をきたし、正確な評価はできなかった。以上の結果は、胸腺退縮後の末梢性T細胞の生理的な状況におけるMDR1の役割を示唆するものではなかった。元来MDR1は、生体外物質や脂質などを排出することが主な機能であるため、薬剤投与時や脂質異常症などの状況及び非リンパ臓器内のT細胞生存が低下している可能性は残された。これを検証するために、MDR1 KO及び野生型マウスを胸腺摘出したあとに高脂肪食を4週間摂取させ、T細胞の生存率を解析した。しかし、2次リンパ組織である脾臓に加えて肺・肝臓・脂肪組織においても、MDR1 KOマウス由来T細胞の有意な生存率低下を示唆するデータは得られなかった。現在は、サイトカイン無添加の条件で生存率が有意に低下するメカニズム、抗がん剤等の薬剤を投与した場合のT細胞生存におけるMDR1の役割など、残された課題点について検証を行っている。令和2年以降、申請者の所属する研究室では新型コロナウイルスに対するT細胞応答における加齢の影響を解析する橋渡し研究が開始され、申請者も参加した。その検体を用いてヒトT細胞におけるMDR1の役割を探索することも試みている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の仮説通りの結果が得られておらず、作業仮説や実験計画の追加・変更を行いながら研究を進めている。T細胞の恒常性増殖に作用するIL-7やIL-15を添加したin vitro培養や生体マウスの胸腺摘出後において、MDR1 KOマウス由来T細胞の生存率低下は認められなかった。MDR1阻害剤のベラパミルをATxマウスに投与する実験も行ったが、全身性副作用のために投与群で著しい体重減少をきたし、正確な評価はできなかった。MDR1 KO及び野生型マウスを胸腺摘出したあとに高脂肪食を4週間摂取させ、T細胞の生存率を解析した。しかし、2次リンパ組織である脾臓に加えて肺・肝臓・脂肪組織においても、MDR1 KOマウス由来T細胞の有意な生存率低下を示唆するデータは得られなかった。
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今後の研究の推進方策 |
IL-7やIL-15を添加したin vitro培養、生体マウスの胸腺摘出後、高脂肪食負荷において、MDR1 KOマウス由来T細胞の生存率低下は認められなかったことから、生理的物質を排出することにおけるMDR1役割は限定的な可能性がある。MDR1に関連する過去の研究も主に薬剤排出の報告が主であることから、現在は抗がん剤投与モデルを検討し、実験準備を進めている。また、MDR1 KOマウス由来のT細胞がサイトカイン無添加の条件で生存率が有意に低下するメカニズムを解明することは新たな課題である。MDR1 KOにより特定の物質が細胞内に蓄積して毒性を示していると推察される。プロテオーム・メタボローム解析などの生化学的な手法による原因物質の探索やIL-7/15シグナル伝達による代償機構を手掛かりとすることで、機序を明らかにしたい。 また、令和2年以降、申請者の所属する研究室では新型コロナウイルスに対するT細胞応答における加齢の影響を解析する橋渡し研究が開始され、申請者も参加した。その検体を用いてヒトT細胞におけるMDR1の役割を探索することも試みている。Ex vivoにおいて一次抗体や基質添加によりMDR1の発現レベルを測定したが、加齢による有意な変化は現時点では認められていない。恒常性増殖を模倣したin vitro培養によっても、明らかなMDR1の役割を示唆するデータは得られなかった。より検体数を増やし、T細胞サブセットや別の免疫細胞に着目するなど、記述的な解析から再検討する予定である。
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