研究課題/領域番号 |
21K15473
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分49070:免疫学関連
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
大谷木 正貴 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 特任助教 (70882497)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
完了 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2021年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 神経免疫 / 認知症疾患 / 神経変性疾患 / 細胞免疫 |
研究開始時の研究の概要 |
アルツハイマー病(AD)患者の脳では、アミロイドβやリン酸化tauの脳内凝集が特徴的な病理変化であり、病変部位には活性化したグリア細胞に加え、種々のT細胞の浸潤が認められる。従来の脳内炎症研究の多くは、活性化グリア細胞を中心に進められており、免疫応答において抗原特異的に働く脳内T細胞の関与については未だ明らかでない。本研究では、脳内のアミロイド病理において浸潤T細胞が担う役割を明確にし、その分子病態と制御機構を解析することで、脳浸潤T細胞と神経細胞やグリア細胞との関係性を解明する。さらに脳浸潤T細胞の自己抗原の同定など新たな知見の創出や革新的な治療戦略への導出を目指す。
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研究実績の概要 |
アルツハイマー病(AD)患者脳ではアミロイドβ(Aβ)やリン酸化tauの脳内凝集が特徴的な病理変化であるが、病変部位には活性化したグリア細胞に加えて種々のT細胞の浸潤が認められる。近年、AD患者脳脊髄液中に抗原特異的なCD8陽性T細胞がオリゴクローナルに増殖していることが報告されたが、AD病態においてCD8陽性T細胞が担う病的意義については明らかとなっていない。本研究では、脳内Aβ凝集モデルであるAPPノックイン(APP-KI)マウスを用い、Aβ蓄積とともに脳内CD8陽性T細胞が増加すること、T細胞を特異的に欠くAPP/CD3eKOマウスや、APP-KIマウスで抗体または薬剤誘発性にCD8陽性T細胞を減少させると脳内Aβ凝集が変化し、特に早期病態においてはAβ凝集が減少することを確認した。脳内免疫細胞のシングルセルRNA-seqでは、CD8陽性T細胞は主にケモカイン経路を介して疾患特異的ミクログリアとの細胞間相互作用を発揮し、T細胞欠損により疾患特異的ミクログリアに特徴的な遺伝子発現が亢進することから、CD8陽性T細胞は疾患特異的ミクログリアの活性化を修飾し、脳内炎症やAβ凝集に関与していると考えられた。さらにT細胞受容体レパトワ解析では、APP-KIマウス脳において抗原特異的CD8陽性T細胞のオリゴクローナルな増殖を認め、ウイルスベクターを用いてAPP-KIマウス脳に特徴的なT細胞受容体を導入したCD8陽性T細胞を移入すると脳内Aβ凝集が増加した。脳内CD8陽性T細胞は抗原特異的な活性化により、疾患特異的ミクログリアとの相互連関を介して脳内Aβ病理に関与することが示唆された。今後、疾患特異的CD8陽性T細胞の修飾が早期AD治療の選択肢となることが期待できる。
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