研究課題/領域番号 |
21K15505
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分50010:腫瘍生物学関連
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
西田 充香子 岡山大学, 医歯薬学域, 助教 (60844644)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | メトホルミン / 腫瘍微小環境 / 代謝 / IFNγ / 腫瘍浸潤CD8T細胞 / 腫瘍免疫 |
研究開始時の研究の概要 |
近年、腫瘍微小環境に存在する免疫細胞と腫瘍細胞の代謝状況が腫瘍の運命を決めるという概念が浸透してきている。これは低栄養といった過酷な腫瘍微小環境下で生存するためにはエネルギーを得ることが肝要であり、腫瘍細胞の代謝を低下させ、その一方でエフェクター細胞の代謝を上昇させることが腫瘍退縮には重要である。 IFNγは抗腫瘍効果の発揮に重要な役割を担っているサイトカインであるが、腫瘍免疫においてIFNγと代謝を関連付ける報告は少なく、IFNγは腫瘍微小環境に存在する細胞群の代謝にどのような影響を与えているのか、その分子機構は如何なるものかを本研究において解明する。
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研究実績の概要 |
これまでに我々はメトホルミンによる免疫治療によって腫瘍浸潤CD8 TILs (CD8 TILs)の代謝は上昇し、腫瘍細胞の代謝は低下するという現象を見出した。さらに治療によりCD8 TILs のIFNγ産生が増加しており、代謝変化を誘導している因子は活性化されたCD8 TILsから分泌されるIFNγではないかと考え検討を行ってきた。事実、in vitro で腫瘍細胞にIFNγを処置した際の代謝能を評価したところ、解糖能ならびにミトコンドリア代謝が低下していた。また、in vitro においてIFNγ処置時の代謝関連分子のタンパク発現をウエスタンブロッティングで確認したところ、WT腫瘍とIFNγR1シグナル欠損腫瘍では解糖系ならびにミトコンドリア機能に関わる分子のタンパク発現に大きな違いがあることも明らかとなってきた。さらにin vitro で見られた現象はin vivo におけるメタボライト解析からも同様の知見が得られた。それらのすべての結果からIFNγによる腫瘍細胞の代謝制御に関与している可能性のある候補分子をいくつかリストアップし、さらにそこから腫瘍細胞におけるIFNγの機能を制御している重要な分子を特定し、特定した分子のsiRNA ならびにsh RNA を用いてノックダウン腫瘍細胞(KD 細胞)を樹立し、in vitro ならびにin vivo 実験系によってIFNγによる腫瘍細胞の代謝並びに機能を確認したところ、興味深いことにIFNγによる代謝低下だけでなく、IFNγによって引き起こされる事象(細胞周期停止や細胞死誘導など)も消失したことから、特定した分子はIFNγの機能を制御する重要な因子であることが、本研究で新たに解明できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度ではIFNγによる腫瘍細胞の代謝制御を担っている可能性のある多くの分子群からマスターレギュレーターとなる分子を遺伝子発現解析ならびにウエスタンブロット法を用いて同定出来た。さらに特定した分子のsiRNA ならびにsh RNA を用いてノックダウン腫瘍細胞(KD 細胞)を樹立し、in vitro ならびにin vivo 実験系によってIFNγによる腫瘍細胞の代謝並びに機能を確認したところ、IFNγによる代謝低下だけでなく、IFNγによって引き起こされる事象(細胞周期停止や細胞死誘導など)も消失したことから、特定した分子はIFNγの機能を制御する重要な因子であるという知見を得たことは大きな進捗であった。また、追加検討として腫瘍細胞のIFNγRシグナルが代謝制御に関わっていることをより詳細に証明するためにメタボライト解析も実施できたことも大きな成果であった。しかし、同定した分子がどのようなメカニズムによってIFNγの機能を制御しているのか、さらに免疫細胞にどのような影響を与えているのかに関してはまだ、不明な点も残されているため、次年度の課題としたい。
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今後の研究の推進方策 |
当該年度で特定した因子が腫瘍細胞のIFNγの機能を制御する重要な因子ということが分かってきたため、その詳細な制御メカニズムの解明にあたる。そのためにもシングルセルやエピジェネティクス解析も最後まで進めていきたい。エピジェネティクス解析に関してはATAC-seq が有用だが、技術的にまだ難しい点もあるため、ウエスタンブロット法を用いた検出手法も同時に取り入れて解析を進める。さらにIFNγはCD8 T細胞に対してはその代謝をむしろ上昇させるため、このIFNγによる免疫細胞と腫瘍細胞における逆方向性の代謝制御メカニズムの解明は本研究の重要な目的であり、腫瘍細胞で行った解析に準じてCD8T細胞でも同様の実験を遂行し、腫瘍細胞で同定した因子の関与の有無を含めて今後の研究で最終的に解明する。
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