研究課題/領域番号 |
21K15515
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分50010:腫瘍生物学関連
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研究機関 | 東京慈恵会医科大学 |
研究代表者 |
恩田 真二 東京慈恵会医科大学, 医学部, 講師 (10459620)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | オートファジー / マイトファジー / ライソゾーム / 酸性βグルコシダーゼ / ミトコンドリア代謝 / ライソゾーム酵素 / 肝細胞癌 / スフィンゴ脂質代謝 |
研究開始時の研究の概要 |
肝細胞癌は乏しい栄養血管による低酸素低栄養環境にも関わらず、腫瘍の発育・浸潤転移がみられるが、そのメカニズムに関しては、近年のゲノム解析や免疫学的解析の進歩にも関わらず十分に解明されていない。我々は、細胞内オルガネラのリサイクル機構であるオートファジーの最終段階であるミトコンドリア代謝の特にライソゾーム代謝に注目し、肝細胞癌の発育・進展におけるミトコンドリア代謝の分子メカニズムを明らかにし、肝細胞癌に対する新たな治療戦略の確立を目指す。
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研究実績の概要 |
肝細胞癌は、ウイルス性肝炎、アルコール性肝炎、脂肪肝炎などの肝臓の炎症を基盤として発症することが特徴であり、それぞれに固有なまたは共通した発癌や進展のメカニズムが存在する。慢性炎症に伴うランダムな遺伝子変異の蓄積が肝細胞癌の多様性につながっていると考えられており、肝細胞癌の発生および進展における分子生物学的機構の解明が必要である。進行・低分化肝細胞癌においては、乏しい栄養血管にも関わらず腫瘍の発育・浸潤転移がみられ、何らかの自己エネルギー供給機構を有している可能性が示唆されている。我々は、そのエネルギー供給のメカニズムとして、細胞内オルガネラのリサイクル機構であるオートファジーのうち、ミトコンドリア選択的オートファジーであるマイトファジーに注目した。癌細胞はオートファジーによって異常な高分子を分解することによって細胞内環境を維持し、細胞死から逃れている。そのためオートファジーを阻害することで抗がん剤耐性の改善が見込める可能性がある。オートファジーの最終段階はライソゾームに依存した分解系であり、特定のライソゾーム酵素を選択的に阻害することにより、オートファジーの分解不全を誘導し、抗がん剤の効果を高める方法を着想した。本研究では酸性βグルコシダーゼ(GBA)による糖脂質代謝ネットワークを解析し、肝細胞癌におけるキードラックであるレンバチニブ耐性の原因を明らかにするとともに、肝細胞癌治療における基礎的知見を提供する。また、いまだに解明されていない分子標的薬投与下のライソゾーム酵素の機能を解明する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
膵癌細胞株を用いた予備実験では、ライソゾーム酵素の一つであるGBA酵素活性とタンパク質発現量の評価を行った。膵癌細胞株と正常膵管細胞株においてGBA酵素活性を測定し、細胞株間での酵素活性の相違がGBA蛋白発現量の相違と相関を示した。またsiRNA法を用いてGBAをノックダウンしたところ、GBA酵素活性と蛋白発現量が有意に減少し、GBAをノックダウンしたことにより、もとのGBA酵素活性の大きさにかかわらず、細胞増殖抑制効果を認め、同時にアポトーシス細胞の増加、アポトーシスシグナルであるCleaved Caspase-8の増強を認めた。神経細胞においてはGBAの遺伝子変異によりミトコンドリア障害を認めることが報告されている。膵癌細胞株においてGBAノックダウンにより、各細胞株で膨化したミトコンドリアの蓄積が確認され、蛍光顕微鏡下でのミトコンドリアの蓄積とライソゾーム活性の低下も確認された。続いて、蓄積したミトコンドリア機能評価のために、細胞内の活性酸素種(ROS)を評価し、フローサイトメトリーでの細胞内ROSの蓄積が確認された。ミトコンドリア内においてもROSの蓄積が確認され、ミトコンドリアの機能不全を示唆する結果であった。実際のミトコンドリア機能障害を評価する目的でミトコンドリア膜電位をフローサイトメトリーによる間接的測定でミトコンドリア膜電位の低下を認め、GBAノックダウンで細胞内に蓄積したミトコンドリアは、膜電位が低下した不良ミトコンドリアであることが示された。 肝細胞癌細胞株(Huh-7、Hep3B)を用いて主要なライソゾーム酵素のうち、酸性βグルコシダーゼをノックダウンすることで、肝細胞癌細胞株の増殖抑制効果を確認した。さらに上記肝細胞癌2細胞株でレンバチニブ耐性株を作成し、耐性前後でRNAシークエンスで、オートファジー・マイトファジー関連遺伝子群の発現が上昇していた。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの膵癌細胞株による実験で、膵癌細胞株においてGBAノックダウンにより不良ミトコンドリアが蓄積されることが明らかとなっており、肝細胞癌株においても各種ライソゾーム酵素のノックダウンで同様の結果が得られることを実験で確認する。さらに不良ミトコンドリア蓄積の原因検索のために、ミトコンドリア選択的オートファジーであるマイトファジーフラックスを検索する。方法は、蛍光顕微鏡により蛍光色素を用いてマイトファジーを評価し、その蛍光をフローサイトメトリーで定量化し、ライソゾーム酵素ノックダウンにおけるマイトファジーの評価を行う。また、オートファジー関連タンパク質であるLC3とp62、ミトコンドリア代謝関連タンパク質であるParkinとPINK-1の発現量をウエスタンブロッティング法で評価する。次にマイトファジーのアポトーシス誘導との関わりを検討する。ライソゾーム酵素ノックダウンによるアポトーシス誘導はマイトファジーが必要であるかを検討するために、マイトファジー阻害剤(Mdivi-1)を用いることにより、阻害剤単独で用いた際と比較して、ライソゾーム酵素ノックダウンとの組み合わせが、アポトーシス細胞を誘導するのかを検討する。さらにマイトファジーの阻害が、ライソゾーム酵素ノックダウン後の不良ミトコンドリアのクリアランスをブロックするかを検出する。その検出が可能であれば、ライソゾーム酵素と薬剤耐性の関与に関して、肝細胞癌に対する分子標的治療薬であるレンバチニブの投与下で、薬剤の濃度依存的にライソゾーム酵素活性を測定する。最終的に、ライソゾーム酵素をノックダウンしたレンバチニブ耐性肝細胞癌細胞株において、レンバチニブの耐性を克服することを確認する。
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