研究課題/領域番号 |
21K15544
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分50020:腫瘍診断および治療学関連
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
廣嶋 優子 秋田大学, 医学部附属病院, 助教 (30770044)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2023年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | AIを用いた膠腫の術中迅速病理組織診断 / 脳腫瘍病理 / 迅速免疫組織化学染色 / 脳腫瘍 / AI病理診断 / 分子病理診断 / R-IHC / 術中迅速診断 / 迅速自動染色装置 |
研究開始時の研究の概要 |
悪性脳腫瘍の外科治療における、適切な手術に不可欠な術中迅速病理診断の精度向上を目的に、電界撹拌法による迅速免疫染色(R-IHC)にAI技術を導入し、精度の高い分子病理学的診断手法の開発を目指す。診断に必須となるタンパクの発現をR-IHCで検出し、AIを用いて高精度かつ短時間に結果を判定するシステムを開発する。本法により術中分子病理学的診断の精度向上、患者の生命予後や術後QOLの改善に寄与したい。
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研究実績の概要 |
迅速診断時に施行した術中迅速免疫組織化学染色と、永久標本のFFPE切片上で施行した通常の免疫組織化学染色の標本から、Whole slide image(WSI)を作成し、深層学習を行わせ、免疫染色結果を予測させるAIモデルを作製し、その有用性・妥当性を検討する。今年度は、膠腫と診断した症例50例の、迅速診断および永久標本でのHE染色(参考データ)およびATRX, IDH1, p53, Olig2, GFAP, Ki-67の免疫組織化学染色のWSIを作成し、各イメージから、倍率200倍でJPEG画像を1症例から数枚ずつ切り出した。Convolutional Neural Network による病変組織の分類モデルを構築し、まず始めに、p53, ATRX, Olig2の染色結果を判定する組織診断モデルの学習を行った。p53に関して、陽性例から21枚の画像データを作成し、19枚を学習用に、2枚をテスト用として振り分けた。陰性例からも画像データを6枚作成し、半分ずつを学習・テスト用に使用した。Olig2は陽性例から50枚の画像データを作成し、45枚を学習用に、5枚をテスト用とした。ATRXは、陽性例から53枚の画像データを作成し、51枚を学習用に、2枚をテスト用とした。陰性例からも2枚画像を作成し、検討に用いた。結果、p53の判定モデルに関して、陰性例に対する診断精度は、感度は66%, 特異度は100%で、陽性例に対する精度は、感度100%, 特異度66%であった。ATRXとOlig2に関しては、陰性症例の画像データが不足していたため、比較可能なモデルの作成に今年度は至らなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Olig2, p53, ATRXの免疫組織化学染色は、R-IHCにおいても陽性の場合は比較的染色性が強く鮮明であり、通常法のIHCと比較しても遜色なく、JPEG画像を作成するにあたっても順調に作業が進んだ。Olig2, ATRXの学習モデルの作成に関しては、もとより陰性を示す膠腫症例が少ないこともあり、陰性画像データ不足が主な原因で結果が出なかった。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、より症例を増やして、陽性、陰性ともに多くのJPEG画像を用いた学習を行わせ、p53以外の抗体の判定モデルも作成、検証したいと考えている。Olig2, ATRXなど、もとより陰性を示す膠腫症例が少ない抗体に関しては、拡張の技法を使用するなどして問題を克服したい。尚、Olig2, ATRXはp53と同様に核内抗原をダーゲットとしているため、十分な教師画像を供与してモデルをすれば少なくともp53と同等の成果が得られると考えている。また、IDH1やKi-67等の判定モデルの作成とともに並行して取り組みたい。目視での判定に日常困難を感じているIDH1に関しては、恐らくAI診断モデルの作製にも困難が予想されるが、幅広い症例から学習させることで、より正確な判定モデルの作成を目指したいと考えている。また、Ki-67に関しては、陽性か陰性かの判定に加えて、陽性率まで回答できるモデルの作成に取り組みたい。迅速免疫研究会を含めた種々の学会で研究成果を発表し、最終的には論文化したいと考えている。
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