研究課題/領域番号 |
21K15572
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分50020:腫瘍診断および治療学関連
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
上木 望 長崎大学, 病院(医学系), 助教 (80890201)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 乳癌 / 53BP1 / 乳腺 / 外科手術 / ゲノム不安定性 / 蛍光染色 |
研究開始時の研究の概要 |
乳癌は女性で最も多い癌であるが、組織生検で診断に苦慮することが多く、客観的な補助診断法が求められている。乳癌の発生、治療反応性、予後にはDNA損傷応答異常・ゲノム不安定性が大きく関わっている。我々はこれまで、皮膚、子宮、甲状腺、食道癌においてDNA損傷応答分子53BP1の蛍光免疫染色による発現パターンが、ゲノム不安定・多段階発癌の段階と相関していることを提唱してきた。そこで本研究では、53BP1の染色パターンによって乳癌やその周囲正常組織におけるゲノム不安定性を検出することにより、乳癌の補助診断、治療反応性や予後推測などの臨床応用を可能とし、さらに乳癌の発生機序、リスク因子の解明も目指す。
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研究実績の概要 |
①乳癌の悪性度や治療戦略の指標となる内因性DNA鎖切断や他のGIN指標となるDDR異常をin situで同定し定量可能か? ②乳癌周囲乳腺組織に“前癌状態”としての特異的分子異常が存在し、分子病理学的観点から客観的に評価可能か? 上記2点の問いに答えるため、現在までに悪性症例37例(浸潤性乳管癌31例、粘液癌2例、小葉癌2例、非浸潤性乳管癌2例)の腫瘍径、リンパ節転移の有無、脈管侵襲の有無、ER発現率、PgR発現率、HER2発現率、Ki-67発現率、p53発現率、Histological grade、年齢、閉経の有無、妊娠出産回数、授乳歴、家族歴、既往歴、再発の有無に関するデータの収集、および良性症例19例(乳腺線維腫12例、乳管内乳頭腫7例)の腫瘍径、年齢、閉経の有無、妊娠出産回数、授乳歴、家族歴、既往歴、再発の有無に関するデータの収集が完了し、53BP1とKi67の蛍光二重免疫染色による蛍光顕微鏡を用いた観察も終了している。解析を行っていないため定かではないが、乳癌手術症例、非乳癌手術症例の正常背景乳腺のいずれも小葉近傍の乳管において53BP1の過剰発現を認めている。小葉から離れた大きな乳管では53BP1の発現が低下しており小葉近傍の乳管では何らかのゲノム不安定性が起こっている可能性が示唆される。また、興味深いことに乳癌の腫瘍部においては53BP1発現低下が見られる症例が多かった。食道の53BP1解析(Ueki et al, Pathol Res Pract 2019)にて浸潤癌先進部では53BP1発現が有意に低下しておりゲノム不安定性のさらなる増加に伴ってDNA損傷応答の機能自体が低下していることが示唆された。乳癌の研究においても同様のことが起こっているかもしれない。今後は統計学者の協力を仰ぎながら解析、およびさらなる症例の追加検討を行っていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
Pilot studyでは保存病理乳腺針生検FFPEを用い53BP1とKi-67蛍光二重染色を行った。しかし、生検検体は微小であり十分な組織量、背景組織を確保できなかった。そのため保存病理乳腺手術検体FFPEにおいて53BP1とKi-67蛍光二重染色を行うこととした。当初予定し、症例をすでに集積していた保存病理乳腺針生検FFPEではなく、保存病理乳腺手術検体FFPE検体の収集を新たに開始したため研究が遅れてしまった。現在、乳腺手術症例悪性例37例、乳腺手術症例良性例19例にて53BP1とKi-67の蛍光二重染色は完了している。
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今後の研究の推進方策 |
現在、乳腺手術症例悪性例37例、乳腺手術症例良性例19例にて53BP1とKi-67の蛍光二重染色、および観察、臨床的データの収集は完了している。この1年でこれらの解析、および足りない症例の補足や追加実験を行う。
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