研究課題/領域番号 |
21K15582
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分50020:腫瘍診断および治療学関連
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研究機関 | 久留米大学 |
研究代表者 |
藤吉 健司 久留米大学, 医学部, 助教 (70762798)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2023年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2021年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | 大腸癌 / 腸内細菌叢 / 癌微小環境 / 腫瘍免疫 / 発癌メカニズム / colorectal cancer / microbiome / tumor immunity / 硫黄代謝細菌 / 腸内細菌 |
研究開始時の研究の概要 |
大腸癌の最適な治療選択には、癌の分子病理学的特徴だけでなく、宿主(癌患者)の腸内細菌叢や抗腫瘍免疫も考慮することが重要である。硫黄代謝細菌群(SMB)は大腸癌のリスク因子の一つである赤身肉/加工肉を代謝し有毒な硫化水素を発生させる。近年、大腸癌患者の糞便にSMBが多く存在すると報告され、SMBと大腸癌の関連が示唆されている。しかし、SMBがどのように腫瘍増殖を引き起こしているのか、抗腫瘍免疫を抑制しているのかは不明である。本研究は、抗腫瘍免疫の側面からSMBが関わる腫瘍増殖メカニズムを解明する。本研究の新知見は、大腸癌患者へ最適な治療選択や正確な予後予測の実現が期待できる。
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研究実績の概要 |
本研究の3年目(令和5度)は、大腸癌組織中の硫黄代謝細菌群(SMB)の定量化を試み、2種のプライマー設計を行った。しかし、実際にPCRが可能となったのは1種(Nプライマー)のみであった。そして、定量化を試みたが、定量化PCRの増幅効率が悪く、定性による大腸癌組織内のSMB存在の有無を評価した。大腸癌原発巣切除を施行した64例の腫瘍部と正常粘膜部の各組織から抽出したDNAを用いた。SMB陽性群は、正常部と比較し腫瘍部に多かった(腫瘍部で37例[58%] vs 正常粘膜部で15例[23%]、 P<0.01)。腫瘍部におけるSMB陽性群 vs 陰性群で年齢・性別・腫瘍部位・進行度・腫瘍マーカーに有意差は認めなかった。KRAS変異型がSMB陽性群において多かった(陽性群7例[35%] vs 陰性群2例[7%]、 P=0.01)が、BRAF遺伝子変異・腫瘍免疫リンパ球(CD3/CD8陽性リンパ球)浸潤に有意差は認めなかった。本検討で糞便でなく組織を用いてSMBと大腸癌の関連を検討した。 SMBは腫瘍部に多く存在し、SMBの存在と大腸癌は関連している可能性が示唆された。SMB陽性群はKRAS変異型と関連しており、SMBの腫瘍促進性炎症経路とKRASを介した腫瘍増殖経路が関連している可能性が示唆された。SMBが存在する大腸癌はKRAS経路と関連する可能性があることが明らかとなった。今後は大腸癌の微小環境におけるSMBと腫瘍増殖メカニズムの解明に向けた腫瘍由来RNAを用いた発現量解析を予定する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
大腸癌組織におけるSMBの定量化をPCR法から次世代シークエンサーを用いて16S解析を用いた定量化を検討している。正常組織・腫瘍組織のペアのDNAを用いた16S解析を実施中であり、本年は当データの解析を予定している。そして、16S解析を用いてそれぞれの細菌叢からSMBの割合を定量化が可能となる。さらに、腫瘍RNAも用いて発現量解析を予定し、KRAS経路などのPathwayとSMBの割合の関連を検討する。加えて、腫瘍免疫の評価として、組織中の腫瘍浸潤リンパ球の定量化も先立って開始しているため、腫瘍免疫との関連も評価する。
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今後の研究の推進方策 |
現在、大腸癌64例の正常組織・腫瘍組織のペアのDNAを用いた16S解析を実施中であり、来年度は当データの解析を予定している。そして、16S解析を用いてそれぞれの細菌叢からSMBの割合を定量化が可能となる。さらに、SMBの有無と16S解析をよるSMBの割合から、64例のサンプルのうちSMBが豊富に存在する腫瘍vsSMBが存在しない腫瘍に層別化することができる。それぞれの腫瘍RNAを用いて、次世代シークエンサーによるwhole-exome解析を実施する。当実験をすることで、SMBが豊富な腫瘍における腫瘍の増殖・進展にかかわるような発現量解析(Pathway)を明らかにすることができる。さらに、腫瘍免疫の評価として、組織中の腫瘍浸潤リンパ球の定量化も先立って開始しているため、腫瘍免疫との関連も評価する。
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