研究課題/領域番号 |
21K15588
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分50020:腫瘍診断および治療学関連
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
齋藤 裕人 金沢大学, 附属病院, 助教 (60846624)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | abscopal効果 / 大腸癌肝転移 / ICD / 免疫原性細胞死 / がん免疫療法 / 免疫チェックポイント阻害薬 / ICI / 放射線治療 / abscopal 効果 / cetuximab |
研究開始時の研究の概要 |
大腸癌肝転移症例の生存率は依然として不良であり、有効な治療法の開発が重要な課題である。放射線治療において、がんの局所制御だけでなく全身の腫瘍免疫増強により,照射野外 の離れた病巣に腫瘍縮小効果が認められる abscopal 効果が注目されている。近年、ある種の抗がん剤や分子標的薬は免疫原性細胞死 (Immunogenic cell death: ICD)を誘導することで 免疫応答を活性化し、抗がん効果を誘導することが注目されている。申請者らは、ICD 誘導性抗がん剤/分子標的薬と放射線治療の併用によりabscopal 効果が増強されると考え、その機序を免疫微小環境の観点から解明する。
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研究実績の概要 |
放射線治療法は大腸癌肝転移を含む多発転移に対する治療法の一つであるが、その局所制御 作用を期待されて治療が行われている。放射線照射によって、がん の局所制御だけでなく、 生体の免疫応答を増幅し全身的な治療効果を惹起させる事象は abscopal 効果と呼ばれ、非常 に稀な現象として報告されていた。近 年、放射線照射された腫瘍細胞において免疫表現型の 変化が生じ,腫瘍免疫が増強することが明らかとなりつつある。大腸癌肝転移に対する標準的治療薬であ る oxaliplatin、FTD/DPI は免疫原性細胞死 (Immunogenic cell death: ICD)を誘導することが知られている。abscopal 効果は、免疫チェックポイント阻害薬 との併用によりその効果を高める可能性が期待されている一方、併用による影響は限定的とする報告も多い。我々は、ICDを効果的に誘導し腫瘍免疫を増強する ことで abscopal 効果増強に関して、免疫微小環境の観点 から解明することを研究課題とした。 ICD を誘導する Cetuximab を放射線治療と組み合わせることによって abscopal 効果が増強され、免疫チェックポイント阻害薬とのより高い併用効果を得られ ると期待できる。これらの併用療法が腫瘍免疫におよぼす病態や抗腫瘍効果を検討し、微小環境の解析により abscopal 効果増強に関する新たな知見を提示する 事ができる点に本研究計画の独自性がある。 本研究では、放射線治療と EGFR 抗体を併用することで、大腸癌肝転移における abscopal 効果増強の有無を評価する。さらに、免疫正常マウス大腸癌肝転移モ デルを用い、放射線療 法と抗 EGFR 抗体による免疫微小環境の改変が、abscopal 効果や免疫チェックポイント阻害 薬(抗 PD-1 抗体)の治療効果に及ぼす影響 を明らかにする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
マウスで大腸癌肝転移の微小環境を検討するため、マウス大腸癌肝転移モデルを作成した。肝転移巣の免疫環境を検討するためBALB/C マウスを用い、マウス大 腸癌細胞株(colon-26)を脾臓より強制注入して肝転移を作成した。肝転移は全例に確認できたが、脾臓への腫瘍の生着や腹膜播種を多数認め、大腸癌肝転移のみの評価は困難であった。腹膜播種や脾臓の悪性腫瘍生着を認めない肝転移モデルの作成が必要と考え、マウス皮下腫瘍をマウス肝外側区域に直接移植する方法へ変更する方針とした。この方法で作成した肝転移モデルでは、エコーを用いて腫瘍の経時的な変化を確認することが可能となる。評価可能な肝転移モデルの作成に時間がかかっているため予定よりやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
マウスで大腸癌肝転移の微小環境を検討するため、免疫評価可能なマウス大腸癌肝転移モデル作成に難渋したが、マウスの肝臓へマウスの皮下腫瘍を直接移植する方法であれば、腹部エコーで経時的な腫瘍の変化を観察できabscopal効果の評価には最適なモデルであると考えれらる。in vitroでの大腸癌細胞(colon-26)と大腸癌化学療法のキードラッグであるオキサリプラチンや放射線照射によって引き起こされるICDとその機序に関してはデータが出ているので、マウス肝転移モデルを安定して作成できその免疫環境を評価することができれば、大腸癌肝転移の免疫微小環境の解明につながると考えられる。
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