研究課題/領域番号 |
21K15604
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分50020:腫瘍診断および治療学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人国立がん研究センター |
研究代表者 |
佐々木 麻里子 国立研究開発法人国立がん研究センター, 研究所, 研究員 (60816073)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2021年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 悪性末梢神経鞘腫瘍 / 希少がん / AYA世代がん / 難治性がん / 分子標的治療 / ヒストンメチル化 / 合成致死性 / 転写 / 分子標的薬 / PRC2 / ヒストンメチル化酵素 / がんゲノム医療 / 若年性がん / PRC2複合体 |
研究開始時の研究の概要 |
悪性末梢神経鞘腫瘍(MPNST)は悪性度が高く難治性の若年性がんであり、有効な治療法は確立されていない。MPNSTの75%では転写の抑制に関与するPRC2複合体因子が欠損している。そこで本研究では、PRC2複合体欠損がんであるMPNSTに有望な治療標的を同定し、機能的メカニズムを解明することでMPNSTの本態を解明する。
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研究実績の概要 |
悪性末梢神経鞘腫瘍(MPNST)は子育て世代に多く発症し、転移を伴う悪性度の高い難治性希少がんである。MPNSTの70%では転写抑制に関与するヒストンメチル化酵素複合体(PRC2複合体)因子であるSUZ12あるいはEEDの欠損型異常が認められる。しかし、MPNSTのがん治療法は確立されていない。そこで本研究は、MPNSTにおけるPRC2欠損型の遺伝子異常に基づいた治療標的を同定することで、有望ながん治療法を開発することを目指す。2021年度では、12種のMPNST由来細胞株から成る細胞株パネルを構築した。それらの細胞株の中でPRC2アイソジェニック細胞株モデルとして、PRC2損型細胞株に対してPRC2レスキュー細胞株を樹立した。さらに、PRC2アイソジェニック細胞株モデルを用いて、PRC2欠損型細胞に高い感受性を示す阻害薬として、複数の候補阻害薬を同定した。 そこで、2022年度は、以下の検討を行った。まず、PRC2アイソジェニック細胞株モデルとして、PRC2ノックアウト細胞株の樹立を検討したが、PRC2遺伝子の両アレルがノックアウトされた細胞株を得ることができなかった。そこで、PRC2レスキュー細胞株モデルを用いて、本研究を遂行することにした。一方で、PRC2欠損型アイソジェニック細胞株モデルを用いた検討によって見出した候補阻害剤について、MPNST細胞株パネルでのPRC2欠損型細胞への選択性を検討した。その結果、PRC2正常型細胞株群に比べて、PRC2欠損型細胞株群への高い感受性を示す複数の阻害剤を同定した。また、それらの阻害剤の標的遺伝子を抑制したときの致死性についてPRC2欠損型アイソジェニック細胞株モデルで検討した結果、PRC2正常型では生存し、PRC2欠損型では致死となる、すなわち合成致死性を示す遺伝子を同定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究で構築したMPNST細胞株モデルをPRC2欠損型細胞に選択的な阻害剤を同定するとともに、それらの阻害剤の標的遺伝子をノックダウンしたときの合成致死性を検討することで、標的候補を同定している状況にあるため。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は、PRC2欠損がんに有望な阻害剤と標的遺伝子の候補について、MPNST細胞株パネルを用いた薬剤感受性試験と増殖抑制効果を検討することで、PRC2欠損がんに有望な合成致死性標的を同定する。有望な標的が同定できた場合に、PRC2欠損型細胞のマウス移植腫瘍モデルを用いて、阻害剤投与あるいは腫瘍内での標的抑制による抗腫瘍効果を検討する。また、PRC2欠損型がん細胞における標的因子との機能的関係を明らかにするために、網羅的発現解析などを検討することで、転写抑制因子であるPRC複合体と転写促進因子である標的因子との転写の拮抗関係に基づいた合成致死性のメカニズムを解明に向けた検討を行う。
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