研究課題
若手研究
小径線維ニューロパチー(SFN)は、神経障害性疼痛を主症状とし、その約半数は原因不明(特発性)で、しばしば難治である。近年、欧米諸国からは特発性SFNにおける自己抗体の存在が報告されており、感覚神経を標的とした自己抗体が特発性SFNの主要な原因である可能性が示唆されている。本研究では、特発性SFNにおいて自己抗体を測定し、陽性例の臨床的特徴を明らかにし、自己抗体を用いたSFNモデル動物の作成を行い、薬剤による感覚ニューロン活性化阻害の鎮痛効果を評価する。これにより、特発性SFNにおける自己抗体の関与を明らかにし、既存の免疫療法に加えて、分子標的治療薬を用いた新規治療法の開発につなげる。
本研究では、特発性小径線維ニューロパチー患者を対象として、抗Plexin D1抗体を測定したところ、15.8%で抗体陽性者を認め、灼熱痛や刺痛といった小径線維障害を反映する症状の割合が高いことを明らかにした。さらに新たな神経障害性疼痛関連自己抗体として、Annexin A2に対する自己抗体に注目し、測定系としてELISAを確立し、神経障害性疼痛患者と疼痛を有しない患者を対象として抗Annexin A2抗体を測定したところ、神経障害性疼痛患者で有意に保有率が高いという結果が得られた。研究期間全体を通して、自己抗体が介在した小径線維ニューロパチーならびに神経障害性疼痛患者の臨床像の解明ができた。
小径線維ニューロパチーの原因の約半数は不明とされてきたが、本研究により抗Plexin D1抗体や抗Annexin A2抗体が小径線維ニューロパチーの新たな原因である可能性を示すことができた。原因不明の小径線維ニューロパチーにおいて、小径線維に結合する自己抗体を測定することにより原因を特定できる可能性がある。さらに、今後、自己抗体介在性ニューロパチーにおける免疫治療に対する効果が明らかとなった際には、これら自己抗体が免疫治療選択バイオマーカーとなる可能性がある。
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