研究課題/領域番号 |
21K15745
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分52030:精神神経科学関連
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研究機関 | 滋賀医科大学 |
研究代表者 |
角 幸頼 滋賀医科大学, 医学部, 助教 (10772923)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 睡眠障害 / レム睡眠行動障害 / 軽症幻覚 / パーキンソン病 / レビー小体型認知症 / 脳波 / 神経生理 / 自律神経 / 悪夢 / 自律神経障害 |
研究開始時の研究の概要 |
不快な夢見体験と神経生理指標の関連について、①横断的調査を行い、不快な夢見体験の発生に関連する神経生理指標を明らかにする。次に、②RBD患者を縦断的に観察し、経時的な夢見体験の減少や夢関連行動の減少と、神経生理指標との関連を調査することで、夢見体験や夢関連行動が経時的に減少する背景を明らかにする。①②で評価する項目としては、脳波の夢内容に関連する指標や、自律神経活動、夢関連行動を含む。
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研究実績の概要 |
本研究課題の目的は、レム睡眠行動障害患者の体験する不快な夢体験と関連する神経生理指標を明らかにすることである。特発性/孤発性レム睡眠行動障害(idiopathic/isolated REM sleep behavior disorder: iRBD) は、パーキンソン病やレビー小体型認知症の前駆状態と考えられている。iRBD からこれらの神経変性疾患に進展するまでの期間は、数年から十数年と幅広い。夢の行動化は、RBDで見られる特異的な現象である。夢を見てそれを演じる過程の関して、病態はよくわかっていない。夢内容行動化のプロセスを明らかにすることで、RBD 自体の病態の理解が深まるだけでなく、パーキンソン病やレビー小体型認知症への進展について新たな知見が得られる可能性がある。 2022年度は、iRBD 患者の睡眠ポリグラフ検査の脳波データを収集・解析した。睡眠ポリグラフにおける特定のコネクティビティが、夢内容行動化と関連する可能性があることを認めた。解析結果は論文として投稿予定である。また、iRBD の精神症状の理解を深めるために、iRBD における抑うつ状態の有病率を、系統的レビューを実施することで調査した。その結果、約3割の iRBD 患者において抑うつ状態を合併することが明らかになった。 また、iRBD 患者における精神症状の合併についてのシンポジウムを国際学会で実施した。神経変性疾患における精神症状の合併は、世界的に高齢化が進む中での重要な課題であり、精神症状の理解や対応方法の洗練が必要である。 今後、iRBD 患者の睡眠ポリグラフの脳波や心拍変動を解析し、夢関連行動と関連する指標の探索を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
蓄積された検査結果を検索し、解析に必要なデータの抽出を行うことができた。iRBD 患者を対象とした解析では、夢関連行動と特定のコネクティビティの増強との関連を発見した。夢内容行動化の行動の複雑さと、神経生理指標との関連について今後検討予定である。また、症例数を増やし、解析手法の修正と臨床指標との関連を検討し報告予定である。また iRBD 患者コホートは現在もフォローを継続しており、臨床所見やパーキンソン病やレビー小体型認知症への進展については随時情報を得ている。 また iRBD 患者において精神症状の合併率は高いが、系統的な調査は行われていなかった。2022年度に報告した論文では、iRBD 患者における抑うつ状態の合併率を明らかにした。iRBD 患者で高い頻度で見られる精神症状の問題にアプローチできていると考える。 以上から、本研究は概ね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
夢関連行動に関連する生理指標を明らかにするとともに、それらの指標を用いた夢関連行動の予測モデル作成を試みる。予測モデル作成に当たっては、ランダムフォレストなど機械学習の手法の使用を想定している。脳波データは個人差が大きく、個人差の是正方法が課題である。 夢関連行動の予測が可能となれば、患者やベッドパートナーが夢関連行動により怪我をすることを予防できる可能性がある。また、抽出した生理指標と臨床症状との関連、予後との関連を検討する。 また、引き続き iRBD 患者のリクルートを行い、iRBD 患者コホートの経過観察を続ける。 特に、以前報告した心拍変動の減弱については、iRBD 患者の trait マーカーである可能性があり、早期の神経変性疾患への進展との関連を含め、臨床的意義を明らかにしていく。
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