研究課題/領域番号 |
21K15748
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分52030:精神神経科学関連
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
太田 航 横浜市立大学, 医学部, 助教 (80866541)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 双極性障害 / AMPA 受容体 / PET トレーサー / 小脳 / 深部小脳核 (DCN) / 腹側被蓋野 (VTA) / マウス / リバーストランスレーショナル研究 / 躁状態 / 行動テスト / 動物行動生理学 / 精神神経科学 |
研究開始時の研究の概要 |
双極性障害は、躁状態とうつ状態を繰り返す気分障害であるが、その生物学的な基盤は明らかでない。所属研究室では、AMPA 受容体(主要な興奮性シナプス機能分子)を特異的に標識する PET(ポジトロン断層法)プローブを開発しており、双極性障害の患者脳では、特定の部位で AMPA 受容体レベルが変化していることを見出している。本研究ではマウスの脳内局所 AMPA 受容体発現量を人為的に操作することにより、躁状態・うつ状態を誘起できるかどうかを検討し、双極性障害における AMPA 受容体の役割と関連する神経基盤の解明を目指す。これにより、基礎研究による論理的根拠に基づいた治療法開発への貢献が期待される。
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研究実績の概要 |
躁状態と抑うつ状態を不定期に繰り返す双極性障害(双極症)は、生活の質の重大な低下をもたらし生命をも脅かす気分障害である。しかし、双極性障害の生物学的基盤(患者脳内において分子レベル・神経回路レベルでどのような変化が起きているか)に関する理解は立ち後れているのが現状である。 研究代表者の所属研究室では、興奮性シナプス入力を中核的に担う AMPA 受容体をヒト生体脳で可視化・定量化する世界独自の技術となる PET(ポジトロン断層法)トレーサーの開発に成功している(Miyazaki et al., Nature Medicine, 2020)。また、このトレーサーを用いて双極性障害患者の脳内 AMPA 受容体分布を画像化した結果、躁状態の臨床スコア(重症度)が高いほど、小脳における AMPA 受容体量が減少している(負の相関がある)ことが明らかになっている(未発表)。 上記の臨床データに着想を得て、過去 2 ヶ年度では小脳の AMPA 受容体を RNA 干渉法によりノックダウンしたマウスが躁様行動を示すこと、および小脳からの主要な出力元である深部小脳核から中脳腹側被蓋野への経路を特異的に活性化することにより、有意な躁様行動が誘起されることを見出してきた。 令和 5 年度は、これらの研究過程で確立した新規双極性障害(躁状態)モデルマウスについて、予測妥当性(ヒトにおける双極性障害の主要な治療薬であるリチウム投与の効果の有無)を検討した。結果、リチウム投与により本モデルの躁様行動が野生型のレベルにまで改善された。すなわち、本モデルはヒトにおける躁状態と生物学的な基盤を共有している可能性が示唆された。 これらの成果は、双極性障害の生物学的基盤を明らかにする上で貴重な知見であり、基礎研究による論理的根拠に基づいた新規診断・治療法の開発への貢献も期待されるものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
申請時の計画(目標)通り、マウス小脳の AMPA 受容体量の低下によって躁様行動が引き起こされる可能性を示唆する結果を得ることができている。評価系(行動タスク)の工夫により、作製した新規双極性障害(躁状態)モデルについて、申請段階で想定していた以上の多岐に渡る観点から躁様の表現型を確認できたことは、大きな進展である。このモデルでは、精神疾患モデル動物に求められている 3 つの妥当性(表面妥当性、構成妥当性、予測妥当性)を満たすことができた点も高く評価できる。 双極性障害(躁状態)の発症を司る小脳関連回路の探索も順調に進展し、深部小脳核-中脳腹側被蓋野経路の関与を強く示唆する結果を得られている点も特筆に値する。
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今後の研究の推進方策 |
AMPA 受容体標識 PET トレーサーで得られたヒト臨床情報に基づいて作出した新規モデルマウスを用いることにより、双極性障害の躁状態については責任脳領域・神経回路や AMPA 受容体密度変化との因果関係をある程度示すことができた。 疾患重症度と脳内局所 AMPA 受容体密度との相関については、双極性障害のうつ状態においても別の形で示唆的な臨床データを得ていることから、今後は同様のリバーストランスレーショナルアプローチにより、双極性のうつ状態を制御するメカニズムについての検討を進めていく。
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