研究課題
若手研究
睡眠の質に関連する脳の器質的変化についての研究は少なく、不眠症やうつ病、睡眠時無呼吸症などの疾患をもつ患者を対象としたものが散見される。しかし実際には一般生活者の中にも睡眠障害を有する場合も多くあると考えられる。本研究では、大規模被験者データを対象に、革新的な磁気共鳴画像(MRI)解析法を用いて睡眠の質と脳の器質的変化の関連を明らかにし、睡眠の質の客観的なバイオマーカーを探索するとともに、睡眠障害やそれが引き起こす精神疾患や生活習慣病の予防やより有効な早期介入法の開発を目指す。
R5年度は、R4年度に学会発表した内容を論文化し発表するとともに、引き続き脳の睡眠障害に関連するMRI指標としてdiffusion tensor image analysis along the perivascular space (DTI-ALPS) indexを用い、コホート研究である文京ヘルススタディーの大規模データを対象として脳の変化と睡眠障害の関連について検討した。脳脊髄液機能に関与すると考えられる脈絡叢体積に注目し、ALPS-index、脈絡叢体積と睡眠障害の関連を調べた。睡眠の質の評価として Pittsburgh sleep quality index(PSQI)を用い、 PSQI6 点未満を健常群(N=52)、PSQI6 点以上を睡眠障害群(N=52)として群間比較を行い、睡眠障害群では健常群に比してALPS-indexの有意な低下(p = 0.04, Cohen’s d = -0.28)、脈絡叢体積の増加(p = 0.10, Cohen’s d = 0.24)を認めた。また、睡眠障害群においてALPS-indexと脈絡叢体積 には有意な負相関が見られた(r = -0.35, false discovery rate [FDR]-corrected p = 0.03)。これらの結果は地域在住高齢者における睡眠の質の低下に伴うglymphatic systemの障害を反映している可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
ALPS-indexによる解析を行い、睡眠の質と glymphatic system機能との関連を示し、論文化し発表した。コホート研究である文京ヘルススタディーの大規模データを対象に、ALPS-index、脈絡叢体積と睡眠障害の関連について検討し、学会発表を行った。
ALPS-index以外の指標も用いて脳の微細構造変化と睡眠障害の関連の検討を進める。結果は随時学会や論文にて発表を行う。また、研究期間後半に向けて縦断解析の準備を行う。
すべて 2023
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (3件)
Japanese Journal of Radiology
巻: 41 号: 12 ページ: 1335-1343
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130008127687