配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2022年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2021年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
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研究実績の概要 |
CARD9欠損症は、CARD9遺伝子の機能喪失型変異により発症する原発性免疫不全症である。本症は早期診断、治療がのぞまれるが、特徴的な生化学所見がないため、臨床所見と遺伝子検査が現在の診断手段である。診断には現在次世代シークエンスなどが使用されているが、遺伝子解析で検出される変化の病的意義の評価が必要となる。本研究では、CARD9変異の病的意義を正確に判断するためのin vitro評価系を開発している。本研究では、本邦初のCARD9新規変異患者を遺伝子解析において同定した。患者細胞においてCARD9のmRNA、タンパク発現は正常に認めた。患者細胞のCD14+単球を用いて、カンジダまたは黒色真菌で刺激したところ、TNF-α, IL-6, IL-8の産生が低下していた。追加実験として、無症状で同胞のCD14+細胞をおこなったところ同様にTNF-α, IL-6, IL-8の低下が示された。一方で、LPSの刺激ではTNF-α, IL-6, IL-8は正常反応を示した。つぎに、HEK293T細胞に変異型CARD9を強制発現させCARD9変異タンパクの検討、NF-kB転写活性を評価したが、野生型との有意差を認めなかった。HEK293T細胞に変異型CARD9を発現させることで誘導される下流の分子群(IL1B, IL6, IL8, CXCL1など)の評価を行なった。野生型または変異型CARD9導入することで誘導されるIL1B, IL6, IL8, CXCL1のmRNAを定量PCRで測定したところ、IL8の低下が認められた。次に、CRISPR/Cas9を用いたCARD9-null THP-1細胞の作製を行なった。この細胞に野生型または変異型CARD9を強制発現させ、真菌刺激によるするIL1B, IL6, IL8, CXCL1のmRNAを定量PCRで測定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
侵襲性真菌感染症を発症した患者で本邦初のCARD9新規変異を同定した。患者末梢血を使用し、カンジダまたは黒色真菌の構成成分との共培養を行い、TNF-α, IL-6, IL-8の産生を検討したところ、患者においてこれらの産生が低下していることが示せた。HEK293T細胞を用いた強制発現実験によるCARD9変異タンパク発現の検討、および HEK293T細胞を用いたレポーターアッセイによるNF-kB転写活性の検討を行なったが、変異細胞とにおいてCARD9変異タンパク発現やNF-kB転写活性の有意差は見られなかった。現在、THP-1細胞をもちいCRISPR/Cas9によるゲノム編集を用いてCARD9をノックアウトした細胞を利用し実験系を樹立を試みているが、有意差を認める誘導遺伝子を絞り込むことに難渋している。
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今後の研究の推進方策 |
HEK293T細胞の利点は、遺伝子導入が容易であり、内在性のCARD9を持たないことである。しかし、CARD9のシグナル伝達に必要な他の分子群(DECTIN-1, SYK, BCL10)も発現しておらず、それらの分子群の共導入が必要となる。これまでのHEK293T細胞による実験系では手法を確立することができなかった。今後は、単球系細胞であるTHP-1細胞を使用することを考案し、実験系樹立を目指している。THP-1細胞は、CARD9シグナル伝達に必要な全てのコンポーネントを持つが、HEK293T細胞と比較して遺伝子導入効率が低いこと、内在性のCARD9を有するという課題がある。今後の推進方法としては、CRISPR/Cas9によるゲノム編集を用いてCARD9遺伝子をノックアウトしたTHP-1細胞を作成している。このCARD9-null THP-1細胞に、野生型または変異型CARD9を一過性強制発現させた。このTHP-1細胞を用い、Luciferase aassay を用いてNF-kB活性を検討する。CARD9-null THP-1細胞における、NF-kB活性化で誘導される遺伝子(IL1B, IL6, IL8, CXCL1など)の発現を定量PCRで測定する。これら一連の検討で、野生型・変異型CARD9の機能解析に適した細胞株の選択と、解析対象遺伝子を抽出することで、機能解析の正確かつ簡便な手法を確立することを考案している。
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