研究課題/領域番号 |
21K15940
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分53010:消化器内科学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
深川 一史 東京大学, 医学部附属病院, 届出研究員 (80882175)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
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キーワード | 胃底腺型胃癌 / 遺伝子発現解析 |
研究開始時の研究の概要 |
Helicobacter pylori(HP)の慢性感染による胃粘膜の萎縮と腸上皮化生が胃癌の発生母地となることが知られている。近年、世界的にHP感染率が低下しており、今後、HPと関連の低い胃癌が増加することが確実視されている。その1つとして胃底腺型胃癌がある。その発癌機序は殆ど解明されておらず、Wnt/βカテニン系の活性化やGNAS遺伝子変異などが指摘されているが、網羅的な遺伝子発現プロファイルを含めた研究は遅れている。本研究の目的は、胃底腺型胃癌の遺伝子発現解析から特異的な遺伝子発現プロファイルを報告し、更に分子生物学的解析を通して胃底腺型胃癌の発癌と発育進展の機序を解明することである。
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研究実績の概要 |
胃底腺型胃癌をESDする直前に腫瘍部から1点、正常部から1点生検を行い検体を採取して、それをRNAlaterに浸したのちに、凍結保存した。そこから品質チェックを行って、RNAを抽出した。計3症例についてマイクロアレイ解析を行った。 腫瘍部と正常部を比較して発現上位30遺伝子転写物を抽出した。それらに対してネットワーク解析を行い、その後、遺伝子発現解析結果を確認するために免疫組織化学染色を行った。 上位30遺伝子の中には肺・甲状腺分化のマスターレギュレーターである転写因子NKX2-1/TTF-1と、その下流遺伝子であるSFTPB、SFTPC、SCGB3A2をコードする遺伝子も含まれていた。次にAGSおよびNUGC4細胞にNKX2-1/TTF-1をコードする遺伝子を導入し、その標的遺伝子における転写変化を評価した。NKX2-1/TTF-1をAGSおよびNUGC4細胞に導入すると、SFTPB、SFTPC、SCGB3A2およびMYBPHの高発現が誘導され、NKX2-1/TTF-1は胃細胞で正常に機能することが示された。16個の胃底腺型胃癌検体の免疫組織化学的解析では、隣接する正常粘膜と比較して、NKX2-1/TTF-1およびSFTPBが有意に発現している(P < 0.05)一方で、SCGB3A2レベルに差はなかった(P = 0.71)。 以上のことから、免疫組織化学および細胞生物学的に、NKX2-1/TTF-1の異所性発現と正常な転写促進能力が示され、胃底腺型胃癌の発生に不可欠な役割を担っていることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
症例集積が予想以上に遅れている
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今後の研究の推進方策 |
症例集積しこれまでの結果に厚みを持たせる。 可能であればNKX2-1/TTF-1が胃上皮由来細胞株に引き起こす生物学的効果の検証 ① 増殖能(増殖曲線、成長因子非依存性)、② 軟寒天培地・3次元培養のコロニー形成能、③ 浸潤・遊走・転移能、 などの癌形質アッセイを行い、NKX2-1/TTF-1の胃上皮由来細胞における役割を検証する。
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