研究課題
若手研究
肝がんは治療後においても再発、転移が高率であり、再発予測と制御が重要な課題である。がん組織より血中に遊離する循環腫瘍細胞(CTC;circulating tumor cell) は新たな診断・予後予測のバイオマーカー候補である。本研究ではCTCの遺伝子発現解析による肝がんの進展・転移リスク予測評価法の構築を目的とする。CTC遺伝子発現群による新規肝がんリスク診断法を開発する。CTC解析による再発、転移リスク評価法開発は、再発、転移制御を目的とした個別化医療への応用、展開が期待される。
本研究では肝細胞がん患者における薬物療法前後でのCTCの定量性、及びがん進展関連遺伝子の発現を網羅的に解析し、肝細胞がんの進展・薬物療法による早期治療効果の判定に関わる新規バイオマーカーの同定や評価法開発を目的とした。Atezolizumab-Bevacizumab併用療法肝がん症例の治療前,3週後,効果判定時に末梢血よりRosetteSep(STEMCELL Technologies)でCTCを濃縮,BD FACS Aria IIを用いて細胞表面マーカー(CD45,CD90,CD133,PanCK,EpCAM,Vimentin)を解析,CD45陰性かつPanCK陽性細胞をCTCと定義した.CTCからRNAを抽出しがん進展に関連する373遺伝子の発現変化を次世代シーケンサー(NGS)で解析,GSEA(Gene Set Enrichment Analysis)でパスウェイ解析を行った.PR・SD群のCTC数は治療経過で減少し(p<0.05),効果判定時はPD群と比較し有意に低値であった(p<0.01).細胞サブセット解析でPD群は治療前Vimentin陽性CTC数が多かった.NGS解析では治療経過において上皮間葉転換(SERPINE1,E2F1)、幹細胞性(SALL4,CD9)、増殖能(FFG2,TGF-β1)などがん進展に関連する99遺伝子発現が変動し、階層的クラスタリング解析によりPR・SD群とPD群で2つのクラスタにに層別化された。パスウエイ解析ではPR・SD群のCTCはアポトーシス経路関連遺伝子(FAS,CASP)の発現が,PD群ではTGF-β経路関連遺伝子(TGF-β1,SMAD2)の発現が有意に上昇していた(p<0.05).肝がん複合免疫療法において治療効果に応じてCTC数の変動を認めた.さらにCTC発現解析により細胞内アポトーシス経路やTGF-β経路に関連する遺伝子発現が治療効果と相関することが示された.以上の結果より肝がん複合免疫療法中における循環腫瘍細胞はがん進展・治療耐性を予見する有用なバイオマーカーとなる可能性が示唆された.
すべて 2023 2022
すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 1件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 4件)
Clinical Journal of Gastroenterology
巻: 16 号: 2 ページ: 270-278
10.1007/s12328-023-01755-4
Biomed Pharmacother.
巻: 162 ページ: 114592-114592
10.1016/j.biopha.2023.114592
巻: 15 号: 3 ページ: 611-616
10.1007/s12328-022-01620-w
Clin J Gastroenterol.
巻: 15(5) 号: 5 ページ: 913-919
10.1007/s12328-022-01676-8
巻: 5(5) 号: 5 ページ: 876-880
10.1007/s12328-022-01680-y
Medicine (Baltimore)
巻: 101(39) 号: 39 ページ: e30769-e30769
10.1097/md.0000000000030769