研究課題/領域番号 |
21K15965
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分53010:消化器内科学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
畑 昌宏 東京大学, 医学部附属病院, 特任臨床医 (90892505)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | 胃癌 / スキルス胃癌 / 腫瘍免疫微小環境 / 腫瘍周囲微小環境 |
研究開始時の研究の概要 |
ヒトのスキルス胃癌を模倣する独自のマウスモデルを樹立し、網羅的遺伝子発現解析により血管新生誘導因子であるLRG1・CD38を特定した。腫瘍組織ではLRG1・CD38と結合するCD105・CD31陽性血管内皮細胞の異常高発現を認め、腫瘍細胞と腫瘍内内皮細胞との相互作用の存在が示唆された。スキルス胃癌マウスモデルにおいてこれらの因子を特異的中和抗体により阻害すると、血管新生・線維芽細胞浸潤を抑制し、さらに腫瘍細胞の粘膜下浸潤も抑制した。即ち、LRG1・CD38を治療標的とすることで、浸潤性胃癌組織全体のスキルス性が抑制され、生命予後の延長につながると考え、本研究計画を立案した。
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研究実績の概要 |
本研究はヒトの印環細胞型胃癌、いわゆるスキルス胃癌を模倣する独自のマウスモデル(Tff1-Cre; LSL-p53 R172H; Tgfbr2 F/F; Cdh1 F/F、T1-PTCマウス)を用いて、浸潤性胃癌組織全体のスキルス性獲得メカニズムを解析し、それを抑制することで生命予後延長に繋げることを目標としている。 本年度は、CD38特異的中和抗体・CD105特異的抗体(TRC-105)による治療後腫瘍の各細胞分画の遺伝子解析を試みた。しかし、治療マウスのFACSによる各細胞の回収に難渋し、CD38抗体治療後腫瘍のCAFのみ解析が可能となったためその結果を示す(元々線維化が強い組織であることや治療後の変化による細胞数減少などが原因と推測している)。T1-PTCマウス、T1-PCマウス、CD38抗体治療マウスの3群で主成分解析を施行すると、腫瘍細胞におけるTgfbr2 KOが腫瘍内CAFにもたらす遺伝子的変化をCD38抗体が部分的にキャンセルしていると考えられた。そこでT1-PCのCAFに比しT1-PTCのCAFで発現が上昇し、かつCD38抗体治療によって発現が低下した遺伝子を抽出し解析を行ったところ、CAFにおけるサイトカインやインターフェロンγに対する反応、線維芽細胞増殖因子への応答に関する遺伝子群が特定され、すなわち線維芽細胞増殖(線維化)がCD38抗体治療によって軽減していることが示唆された。具体的な遺伝子としては、Ccl12・Flrt3・FGF9・Trpm2・Vav2が含まれており、これらがスキルス胃癌におけるTgfbr2 KOとCD38発現に関連し、線維化に寄与している可能性があると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
T1-PTCマウスの繁殖の不安定さを前年度も報告しており、現在も十分量のマウスを確保できていないものの、実験自体は進行している。FACSによる細胞回収についても線維化が極めて強固で単細胞化が困難であることが手技の難度を高度化しており、実際計画の一部の解析に留めている(CAFのみとし内皮細胞や血球細胞は他の実験系を検討)。 リン酸化プロテオーム解析によって新規治療薬候補となったPAK阻害剤によるin vivoでの評価は上記理由から保留していたが、腫瘍オルガノイドの2次元化に挑戦しており、細胞培養可能となった際にはXenograft modelでの治療を検討する。
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今後の研究の推進方策 |
マウスの供給体制の安定化を継続する。 リン酸化プロテオーム解析により新規治療薬候補となったPAK阻害剤による治療効果評価法を検討する。
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