研究課題/領域番号 |
21K15970
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分53010:消化器内科学関連
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
山本 健太 名古屋大学, 医学部附属病院, 病院助教 (80852582)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 腸内細菌 / 肝臓 / 繊維化 / ネットワーク解析 / 肝硬変 / マウス / ヒト / 肝癌 / 肝疾患 / 筋肉 / サルコペニア / アミノ酸 / 機能遺伝子 / 慢性肝疾患 |
研究開始時の研究の概要 |
肝硬変患者における腸内細菌叢が作るアミノ酸と筋肉量の関連性を明確にし、有用もしくは有害な細菌を同定することでサルコペニアや肝性脳症のリスク評価を可能とするバイオマーカーの発見と治療・予防薬の開発を目指す。肝硬変患者ではアンモニア産生菌や分岐鎖アミノ酸以外のアミノ酸合成菌が多く、アミノ酸を生成する際に窒素をとりあう「細菌による競合」が生じている可能性がある。この解明には単一の細菌を検出する目的ではなく肝硬変による腸内細菌叢の乱れ、競合する細菌など複数の有用な細菌や競合する細菌のネットワークを明らかにすることで新たな視点により人体に与える影響を解明する。
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研究実績の概要 |
動物実験では細菌叢が構成する種類によりその特性が異なることを前年度までに示しており、これに介入するため胆汁酸の殺菌効果に注目しelobixibatを用いた。以前より線維化・腫瘍・腸内細菌のネットワーク形成に注目しており、本研究では肝臓腫瘍における胆汁酸レベルの影響を調査し、腸内での胆汁酸吸収を抑制するelobixibatが、血清および肝臓内の胆汁酸レベルを減少させ、肝腫瘍の成長を抑制することを明らかにした。腫瘍の減少がelobixibatが吸収抑制した胆汁酸により大腸内に大量に流入することでグラム陽性細菌の割合が大幅に低下したことで生じた可能性がある。肝内及び血清の胆汁酸低下と二次胆汁酸の変化が腫瘍形成抑制と関連することを報告した。(Hepatol Int. 17:1378-1392.2023)またヒト検体を用いた細菌叢と血液検査を含む臨床検体との関連性についてネットワークを構築し、影響を受ける細菌群を同定して報告した。(日本消化器病学会総会・肝臓学会総会・JDDW)その中でもHBV群とHCV群における細菌叢のネットワークを各自で作成して共通する細菌を同定し、そのネットワークが臨床的数値にあたえる影響を明確にしUEG weeks2023で報告した。臨床に応用するため細菌が患者予後と関連するかを検討し、VeillonellaとRuminococcaceaeの一部の細菌の過多が予後と関連することを報告した(Microorganisms. ;12:610.2023)。これらの細菌ネットワークが臨床に影響を与えるメカニズムを解明するために、ネットワークの可視化に取り組んでおり水中電子顕微鏡を用いて大腸粘膜表面の細菌群の撮像に成功し報告した(Liquid Phase Electron Microscopy Gordon Research Conferences 2024)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒト及びマウスにおいても細菌叢がどのようなネットワークを形成しているのかは明確化できている。特に臨床的指標に与える影響が明瞭貸してきており、予後や線維化、血液検査などの臨床的指標など様々な因子と関連する細菌及びその細菌に盈虚を与える細菌やその細菌群が構成するネットワークなどはわかってきている。しかし数理学的な手法による論証のみでは不十分であり、可視化もしくはvalidationにより再現性を証明するなどの課題は残っており、正確な報告のためにはさらなる検討が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
動物実験に関してはおおむね順調に経過している一方でヒト検体はさらなる検討が必要である。再現性や他の手法による証明が必要でありさらなる検討を重ねる必要がある。慢性肝炎という共通項を考え、C型肝炎・B型肝炎に群分けしても再現されるネットワークを確立する必要がある。またネットワークの構成要素のみに注目されていたが、ネットワークに影響を与える影響度が細菌により異なることが明瞭貸してきておりより影響力が強い細菌の同定を試みる。すでに検体数は十分確保されているため現在までに得た結果をもとに再計算を行いネットワーク構築を進めていく。一方で推測されたネットワークが実際に存在するのか、腸管壁のどの部位でどのような役割を担うかに関しては水中電子顕微鏡や胆汁酸などの代謝産物の計測結果と合わせて推測できるように試みる。
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