研究課題/領域番号 |
21K16012
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分53010:消化器内科学関連
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研究機関 | 公益財団法人朝日生命成人病研究所 |
研究代表者 |
藤原 弘明 公益財団法人朝日生命成人病研究所, その他部局等, 教授(移行) (00814500)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 胆管癌 / 代謝 / エピゲノム |
研究開始時の研究の概要 |
胆管癌の約20%に存在するイソクエン酸デヒドロゲナーゼ(IDH)変異が、胆管癌発生において果たす生物学的役割は不明である。変異型IDH特異的代謝産物である2-ヒドロキシグルタル酸は、野生型IDHの産生するαーケトグルタル酸依存性のヒストン及びDNA脱メチル化酵素を阻害することで、細胞内の代謝のみならずエピゲノムにも影響する。本課題では代謝とエピゲノムの両面から、正常胆管細胞からの発癌メカニズムを明らかにし、IDH変異陽性肝内胆管癌における新規標的分子を同定し、治療に結び付けることを目的とする。
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研究実績の概要 |
肝内胆管癌(Intrahepatic cholangiocarcinoma: ICC)の約20%に同定されるIDH1/2遺伝子変異は、その特有の酵素活性を介して細胞の代謝及びエピゲノム制御に影響する。代表者藤原は先行研究として、IDH1変異が正常肝内胆管細胞へ解糖系亢進を誘導する(SciRep. 2019 Dec 11;9(1):18859.)ことを見出し報告した。解糖系亢進は癌の重要な代謝特性であり、この知見はIDH1変異の有するドライバー変異としての機能の一端を表していると考えられたが、単独では腫瘍形成能の獲得に至らず、最終的な発癌に至るまでの分子機構は未だ明らかでない。そこで本研究では、先行研究で確立したマウス肝内胆管上皮細胞の培養系に、IDH変異の他、ヒトICCで報告のある遺伝子異常を段階的に導入して、その影響をin vitro/in vivo両面から解析し、その生物学的意義について検討する。前年度の検討で樹立したヌードマウス皮下へのオルガノイド移植モデルにおいて、変異IDH1陽性ICCで報告のある複数の遺伝子異常を組み合わせて導入した肝内胆管オルガノイドは、70%以上の高い形成率で皮下腫瘍を形成し、正常胆管上皮から異型上皮組織、更には胆管癌に至るまでの過程をin vivo で再現した。変異IDH1を導入した株(M)由来の皮下腫瘍は、野生型IDH1を導入した株(W)由来の皮下腫瘍と比較してその組織学的悪性度が高く、かつ変異IDH1阻害剤の投与によりその悪性度の亢進は解除された。in vitroにおいては、M株はW株と比較して増殖や生存上のadvantageは無いため、両者由来の皮下腫瘍の組織像の違いは、上皮間質相互作用にあるのではないかと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
M株由来の皮下腫瘍モデルにおける変異IDH1阻害実験が順調に進行し、かつ阻害実験で仮説通りの結果が得られたため、in vivoにおける解析から、W株とM株の有する生物学的差異を解明する手がかりとして間質の差異に着目するに至り、上皮間質相互作用に着目したin vitro実験へとスムーズに移行することが出来たため。
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今後の研究の推進方策 |
オルガノイドと間質細胞との相互作用を解析するin vitro培養実験系を確立し、検討を継続している。W株とM株が間質細胞にもたらす影響を解析することで、変異型IDH1下流の標的遺伝子の同定へと研究を進めていく方針である。
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