研究課題/領域番号 |
21K16031
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分53020:循環器内科学関連
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
中野 知哉 奈良県立医科大学, 医学部, 研究員 (60822343)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2021年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 非虚血性拡張型心筋症 / 心筋組織検体 / β-アドレナリン受容体シグナル / 免疫組織学的評価 / 心筋組織 / 免疫組織学 / RNAシーケンス |
研究開始時の研究の概要 |
超高齢社会を迎える我が国では“心不全パンデミック”と呼ばれる事態が進行しており、心不全患者の病態評価や薬物治療に対する反応性予測に有用な指標を探索することが喫緊の課題となっている。本研究では、心不全患者の心筋組織検体を用いてβ-アドレナリン受容体(β-AR)シグナル動態を詳細に評価し、β-AR遮断薬に対する治療反応性を予測する有用な指標を探索することで、病態に応じた“個別化医療”を実現する第一歩となる研究を目指す。
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研究実績の概要 |
本年度は、研究2年目として、非虚血性拡張型心筋症(NIDCM)患者の心筋組織検体を用いたβ-アドレナリン受容体(AR)シグナル動態評価のうち、(1)免疫組織学的解析と(2)パラフィン包埋心筋組織検体からRNAを抽出する実験を行った。 (1)に関しては、臨床および組織学的にNIDCMと診断され新規にβ-AR遮断薬を導入された患者のパラフィン包埋心筋組織検体を用いて、心筋細胞におけるGタンパク質依存的β-ARシグナル動態評価を行った。本研究では、同シグナル伝達経路の下流因子であるGタンパク質共役受容体キナーゼ2、β-arrestin2とcAMP応答配列結合タンパク質のリン酸化に対する抗体を用いて免疫染色を行い、心筋細胞におけるこれら因子の発現だけでなく局在を免疫組織学的に評価した。まず、NIDCM患者の心筋細胞におけるβ-ARシグナル動態評価のため、NIDCM患者と正常心機能患者におけるGタンパク質依存的β-ARシグナル動態の差異について検討を進めた。次に、NIDCM患者のβ-AR遮断薬に対する反応性を予測する有用な指標を探索するため、β-AR遮断薬導入後の左室逆リモデリングの有無でNIDCM患者を層別化し、両群間の臨床所見を比較検討するだけでなく、心筋細胞におけるGタンパク質依存的β-ARシグナル動態の差異を免疫組織学的にも検討した。 (2)に関しては、心筋細胞におけるβ-arrestins依存的β-ARシグナル動態をRNAシーケンス解析で評価するため、パラフィン包埋心筋組織検体からRNAを抽出する実験を行った。昨年度内にパラフィン包埋剖検心筋組織検体からRNAを抽出する予備実験を行いRNA抽出に成功したため、本年度は正常心機能患者とNIDCM患者を数例ずつ選択し、約3mmと非常に小さいパラフィン包埋組織からRNAを抽出する実験を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、(1)NIDCM患者の情報収集と心筋検体の収集、(2)NIDCM患者のパラフィン包埋心筋組織検体を用いた心筋細胞におけるβ-ARシグナル動態評価、(3)β-AR遮断薬に対する治療反応性予測指標の探索、(4)新規NIDCM患者を対象とした前向き検討と実用性の評価、を行う計画である。 (1)NIDCM患者の臨床情報とパラフィン包埋心筋組織検体の収集は昨年度内に順調に進展した。 (2)NIDCM患者の心筋組織検体を用いた心筋細胞におけるβ-ARシグナル動態評価も順調に進展している。NIDCM患者と正常心機能患者の心筋細胞におけるGタンパク質依存的β-ARシグナル伝達経路下流因子の発現等を免疫組織学的に解析することで、NIDCM患者の心筋細胞におけるGタンパク質依存的β-ARシグナル動態評価を行っている。次に、パラフィン包埋心筋組織検体からRNAを抽出する実験に関しては、本研究で用いる心筋組織検体と同サイズのわずかな心筋組織検体からRNAを抽出する新たな予備実験にも成功している。そのため、NIDCM患者と正常心機能患者のパラフィン包埋心筋組織検体からRNA抽出を行う実験に着手している。 (3)β-AR遮断薬に対する治療反応性予測指標の探索に関しては、β-AR遮断薬導入後の左室逆リモデリングの有無でNIDCM患者を層別化し、両群間におけるGタンパク質依存的β-ARシグナル動態の差異を免疫組織学的に解析しており、順調に進展している。 (4)新規NIDCM患者を対象とした実用性評価に関しては、(3)から得られた解析結果をもとに検討していく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
研究3年目(2023年度)には、下記(1)と(2)を行う。 (1)NIDCM患者と正常心機能患者のパラフィン包埋心筋組織検体からRNAを抽出し、このRNA検体を用いたRNAシーケンス解析を外部業者に委託し、トランスクリプトーム情報を収集する。本研究ではβ-arrestins依存的β-ARシグナル伝達経路に関連する因子に注目する予定である。 (2)NIDCM患者のパラフィン包埋心筋組織検体からを得られた心筋細胞におけるGタンパク質依存的β-ARシグナル動態とβ-arrestins依存的β-ARシグナル動態を総合的に検討することにより、β-AR遮断薬に対する反応性を予測する指標になりえる有用な因子が存在しないかを探索する。そして、これらβ-AR遮断薬に対する治療反応性を予測する指標の実用性評価のため、新たに臨床および組織学的にNIDCMと診断された患者のパラフィン包埋心筋組織検体を用いて検討する。
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