研究課題
若手研究
ラミン変異患者由来iPS心筋細胞にはDNA損傷が高度に蓄積していることが判明しているため、この細胞を用いて心筋細胞のDNA損傷蓄積を軽減する化合物のスクリーニングを実施する。化合物ライブラリーをiPS由来心筋細胞に投与し、投薬後細胞を固定してγH2AXの陽性箇所を計測することでDNA損傷の程度を定量化する。溶媒コントロールに対してDNA損傷を有意に軽減させる化合物を抽出する。ヒット化合物が得られた場合、心不全モデルマウスに薬剤を投与することで、機能的な改善効果が確認されるか検証する。
LMNA変異拡張型心筋症(DCM)は進行性の経過を示し、予後が悪いことが知られている。我々はLMNA p.Q353R変異DCM患者から樹立したiPS細胞由来心筋細胞を用い、DCM心筋細胞に蓄積するDNA損傷を軽減する化合物を探索することによって新規治療薬候補化合物を同定することを目指した。その結果、vitamin D2(VD)に変異心筋細胞のDNA損傷を軽減する効果があることが判明した。遺伝子発現解析の結果、VDは心筋細胞のDNA修復酵素の発現を上昇させることが判明した。またLMNA Q353R変異タンパクはVDの受容体であるVDRと結合することにより、その転写活性を抑制することが判明した。
本研究によって難病である特発性拡張型心筋症の新たな治療薬候補を提示することができた。同定されたvitamin Dは安全性が確立されている既存薬であり、drug repositionを目指した臨床試験のシーズとなる可能性がある。また本研究の手法は心筋症のヒト変異iPS細胞由来心筋細胞を用いたスクリーニングの成功例として他変異の心筋症や疾患に応用できる可能性があり、個別化医療およびiPS創薬の1成功例として資するものである。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件) 備考 (2件)
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